日刊鹿島アントラーズニュース

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2023年8月22日火曜日

◆鹿島が見せる夏場の力強さ 岩政監督のタクトで磨かれるタイトな守備と鋭いカウンター攻撃【コラム】(FOOTBALLZONE)

    

樋口雄太


【カメラメンの目】スコア以上に光る鹿島の試合巧者


 J1リーグ第24節・鹿島アントラーズ対サガン鳥栖の一戦。後半、鳥栖のキックオフで始まると、鹿島FW垣田裕暉が猛然とボールを奪いに敵陣へと走る。それは厳しい気象条件をモノともせず、タフに戦い勝利したこの試合の鹿島を象徴している選手たちの姿勢だった。

 試合は結果的に2-1の僅差で、しかも鹿島の決勝点が記録されたのは後半35分とスコアだけを見ると接戦の展開だった。だが、内容はスコア以上に鳥栖に自由にサッカーをさせなかった鹿島の試合巧者ぶりが光った試合となった。

 鹿島はキックオフから驚くほどのハイペースで試合に入っていった。前線からFW鈴木優磨と垣田が果敢にボールを持った相手選手へとプレッシャーをかけていく。中盤では樋口雄太や佐野海舟、ディエゴ・ピトゥカが鳥栖の選手を激しく追い込んでいった。その守備はホームの地では相手に攻撃の糸口さえ作らせないという、強い意志が感じられるほどのタイトなプレーだった。

 押し込まれる展開となった鳥栖は、ロングボールから一気の攻撃でゴールを目指すが、プレッシャーを受けるなかでのパスは正確性を欠きビッグチャンスを作れない。

 同じく鹿島も前半は後方からのロングパスで相手ゴールへと迫る。かつての鹿島は守備から攻撃に転じると、ボールを奪取した選手が前線へとドリブルで進出。グラウンダーを主としたスルーパスを繰り出し、その動きに周囲の仲間が呼応してゴールへと迫るスタイルを得意としていた。

 岩政大樹監督がタクトを振るうスタイルは同じカウンターでも、中盤を省略した後方からのロングパスが多用されているが、その攻撃もここにきてリーグ序盤と比較するとチームにフィットしてきているように見えた。

 何よりこのカウンター攻撃が相手にとって脅威となっていたのは、鹿島の選手たちのコンディションの良さによるものだ。一見、力任せの荒っぽい攻撃スタイルだが、鹿島の各選手は夏場の消耗が激しい状況でもコンディションが良好のようで、多少のパスのズレやミスは運動量でカバーしてしまい、攻撃の大きな武器となり試合の主導権を握った。

 対するアウェーの地で劣勢の展開を強いられた鳥栖も黙ってはいなかった。GK朴一圭は鹿島の攻撃を防ぎボールを手にすると、前掛かりとなった相手陣形のスキを突くように素早く味方へと繋いで突破口を開こうとする。

 だが、こうした場面でも鹿島の方が一枚上手で、激しくマークにつき攻撃を許さない。特に樋口は先制点を挙げたことが注目されるところだが、ボールを持った鳥栖の選手に食らいつき、自由にプレーをさせなかった守備面でのチーム貢献は秀逸だった。

 試合開始からフルスロットルで臨んだ鹿島の選手たちは、後半に入っても運動量を落とすことはなかった。それどころかプレーは激しさを増していく。

 劣勢の展開に心を折ることなくチャンスを作った鳥栖に、一時は同点ゴールを奪われたが、後半は前半以上に鹿島のペースで進んでいく。攻撃もロングボール主体のカウンターに加え、相手を運動量で上回り分厚い波状攻撃を展開。ダイナミックなプレーを随所で見せた鹿島のサッカーには敵を圧倒する迫力が漲っていた。

 率直に言って鹿島のチーム戦術としての完成度はそれほど高くない。だが、チーム戦術の劣勢を補う選手たちが見せた荒ぶる魂のこもったプレーに、サポーターたちはさぞかし心を熱く刺激されたのではないだろうか。

(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)


◆“外”と“中”の使い分け。一皮むけた感がある鹿島のスピードスター藤井智也は、ますます危険な存在に(サッカーダイジェスト)



藤井智也


指揮官との対話で新たな気づき


 左サイドの広大なスペースで縦パスを受けた鹿島の藤井智也は、相手ゴールに向かってボールを運びつつ、これから選択すべきプレーのイメージを膨らませていた。

 縦に抜けてクロスを上げようか、もしくはカットインしてシュートを打とうか。

 対峙する相手との間合いを徐々に詰めながら、一瞬だけ縦に行くと見せかけ、右足アウトサイドでボールに触れ、中に切れ込んだ。

 すると、寄せてきた相手選手に足を引っかけられ、もんどり打つ。間近でそれを目にした主審は、すぐさまペナルティマークを指さした。

 8月19日、第24節の鹿島対鳥栖戦。1-1で迎えた77分のことだった。「してやったりではないか」と思いきや、藤井の本音は少しだけ違うところにあった。

「PKを取ったといっても、自分にアシストがつくわけではないですし(苦笑)、正直、中に切れ込んでシュートを決めたかったです。そのつもりで仕掛けていたので、わざとこけたわけではないですし、PKをもらおうと思わないほうがかえってPKをもらえるんだなと、改めて感じましたね」

 勝負がかかった大事なPKを知念慶が落ち着いて決め、反撃体制を強める鳥栖を突き放した鹿島が、そのまま試合を締めくくり、勝点3を積み上げた。決勝点をお膳立てした藤井は紛れもなく陰の功労者だろう。

 とはいえ、「まったく満足していません。得点やアシストなど、チームの勝利に直接つながる結果を出せるよう、日々、取り組んでいきたい」と、勝気な一面をのぞかせた。

 2020年、立命館大学4年生の時に特別指定選手としてJ1の広島でプロ公式戦デビューを果たした藤井は、今季、広島から鹿島への移籍を決意。新たな環境のもと、自身の持ち味であるスピードに磨きをかけ、さらなる成長を期した。

「プロになった時、自分のスピードがどこまで通用するか、とことん勝負してみようと思っていました。そこに一切の迷いはありません」

 今季の開幕から7試合連続スタメン出場。第3節の横浜FC戦では移籍初ゴールを決めるなど、新天地で確固たる地位を築きつつあった。ところが、ゴールデンウィークを過ぎたころから、鹿島伝統の4-4-2システムに移行すると、徐々に出場機会が減っていき、自身の居場所を見つけられず、もがいた。

「サイドでボールを受けて、ウイングのように仕掛けるのが自分らしさ。スタメンで出ている(樋口)雄太君や(仲間)隼斗君のようなプレーを求められても違うんじゃないかと、そこに変な頑固さというか、プライドがありました。

 でも、ここ2か月くらいですかね、監督の(岩政)大樹さんとお互いに考えていることを話し合って、いろいろと気づかされました」

 その“気づき”とは一体何だろうか。

「外に張っているだけじゃなく、中に入ることで、外が空く。自分の特長であるスピードをより活かすためにも、中で待つことの大切さを大樹さんは言いたかったんだと分かりました。

(4-4-2のサイドハーフとして)中でボールを受けることを要求されて、正直、うるさいなと感じた時期もありました(苦笑)。でも今は頭の中が整理されましたし、自分なりに“外”と“中”の使い分けができるようになって怖さが出てきたんじゃないかと、すごく成長を感じています」

 サイドアタッカーとして一皮むけた感がある藤井の表情は非常に明るい。Jリーグ屈指のスピードスターは、対戦戦相手にとって今後ますます危険な存在となり得るだろう。

取材・文●小室功(オフィス・プリマベーラ)





◆“外”と“中”の使い分け。一皮むけた感がある鹿島のスピードスター藤井智也は、ますます危険な存在に(サッカーダイジェスト)





◆【採点寸評|鹿島】攻守両面で輝きを放った先制弾の樋口がMOM。鈴木は“違い”を見せつけたが...[J1第24節 鹿島 2-1 鳥栖](サッカーダイジェスト)






今後の希望とエネルギーとなり得る勝点3


[J1第24節]鹿島 2-1 鳥栖/8月19日/県立カシマサッカースタジアム

 Jリーグは8月19日、J1第24節の6試合を各地で開催。県立カシマサッカースタジアムでは鹿島アントラーズ対サガン鳥栖が行なわれ、2-1で鹿島が勝利した。

 先制したのは鹿島。26分、ディエゴ・ピトゥカのパスを受けた樋口雄太が左足を振る。コントロールされたグラウンダーのシュートをゴール右下に流し込んだ。

 1点ビハインドの鳥栖は66分に追いつく。右サイドからカットインした長沼洋一が楢原慶輝に預ける。19歳のルーキーが狙いすましたシュートでネットを揺らした。

 一進一退の攻防が続くなか、77分に鹿島がPKを獲得。キッカーの知念慶がこれを確実に沈めて、2-1とする。

 鹿島はこのリードを最後まで守り抜き、2試合ぶりの勝利。敗れた鳥栖は4試合未勝利とトンネルから抜け出せなかった。

▼鹿島のチーム採点「7」

 J1における対戦成績が、ここ3試合はすべて引き分けと、一進一退のゲームを繰り広げてきた鳥栖をホームに迎えた。鹿島の岩政大樹監督は「鳥栖の展開力と自分たちのスタイルを貫くマインド」に対して警戒心を怠らなかった。

 勝負を分けたのは、1-1の状況で訪れた80分のPKだ。交代出場の藤井智也が左サイドからドリブルで仕掛け、ペナルティエリア内で進路変更すると、相手のファウルを受け、PKをゲット。これを同じく交代出場の知念が落ち着いてゴール右隅に蹴り込んだ。

 その後、再びドローに持ち込まれそうなピンチもあったが、鹿島が逃げ切りに成功した。

「交代選手の活躍で勝つとか、負けていた状況を引き分けにするとか、そういう試合がほとんど、ないという話を、今週の準備のなかでしました。それを選手たちが結果で示してくれて、非常に嬉しく思います」(岩政監督)

 シーズンの大詰めに向けて、上位勢を追いかける鹿島としては、前節の名古屋戦に続く連敗だけは避けたかった。J1の優勝戦線に生き残っていくうえで、今後の希望とエネルギーとなり得る勝点3を積み上げた。

 MOMは先制弾の樋口。攻守両面で効果的なプレーが光った。勝ち越し弾に絡んだ藤井、知念も高く評価。鈴木は“違い”を見せつけた一方でボールロストが少なくなく、苛立ちも感じられて絡めの採点に。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

※MAN OF THE MATCH=取材記者が選定するこの試合の最優秀選手。
※採点は10点満点で「6」を及第点とし、「0.5」刻みで評価。
※出場時間が15分未満の選手は原則採点なし。




GK:早川友基|採点6.5/オウンゴールになりそうな近距離クリアを、とっさの反応で弾いた。チームを勝利に導く終了間際のビッグプレーだった。

DF:安西幸輝|採点6/前節に続き、本職の右ではなく、左でのスタメン出場。鈴木とのパス交換から中に入り込み、シュートを試みるなど、新たな攻撃テイストをもたらした。

DF:植田直通|採点6.5/落ち着き払った守備対応の一つひとつが、まさに熟練のなせる技。攻撃面では、右のオープンスペースに流れる味方へ正確なロングフィードを再三、送った。

DF:関川郁万(90+4分OUT)|採点6/詰め寄った相手に巧みにかわされ、たまらずファウルで止め、警告を受ける。やや軽率だったが、一方、CK時のピンチを冷静なクリアでしのぎ、マイナスポイントを帳消しにした。

DF:溝口修平(81分OUT)|採点6/両手を大きく振って、ボールを要求する姿が見られた。ミスを恐れず、チャレンジ精神にあふれるプレーを重ねた。

MF:佐野海舟|採点6.5/果たすべき役割や求められるプレーの質がどんどん高くなっている。選手交代に伴い、試合終盤は左SBを務めた。90分間、獅子奮迅の働きぶりだった。

MF:ディエゴ・ピトゥカ|採点6.5/テクニカルなボール扱いから一瞬の“間”を作り、対峙する相手の動きを制し、樋口の先制ゴールをお膳立てした。

MF:仲間隼斗(57分OUT)|採点6/チームの結果に直結しないかもしれないが、攻守にわたって持てる力を出し切る姿勢はいつもと変わらなかった。

MF:樋口雄太(90+4分OUT)|採点7/丁寧にコントロールされた先制ミドル弾を左足でゲット。アカデミー時代から世話になった古巣へのリスペクトもあって喜びは控えめだった。得点以外の面でも攻守両面で効果的なプレーが光った。MOM。

FW:垣田裕暉(57分OUT)|採点6/昨季、1年間だけ在籍した“古巣”との対戦に燃えた。前半終了間際、鈴木からのクロスをヘッドで狙ったが、相手GKに惜しくも防がれた。

FW:鈴木優磨|採点5.5/ピッチ上で“違い”を見せつけるものの、かたやボールロストの多さも気になるところ。そんな苛立ちからか、味方にも相手にもやや言葉が過ぎるシーンが目にあまった。プラス面を台無しにしていただけに、あえて辛めの採点に。

MF:藤井智也(57分IN)|採点6.5/水を得た魚のように持ち前の快足を飛ばし、危険な存在となった。そのうちのひとつが相手のファウルを誘い、PKゲット。

FW:知念慶(57分IN)|採点6.5/怪我から完全に復調したと見ていいだろう。跳躍力のある空中戦がその証のひとつ。勝負を左右する大事なPKを託され、確実に決めきった。

MF:松村優太(81分IN)|採点なし/味方からのヘディングによる落としを受け、相手に囲まれながらも間を抜け出し、シュートを試みた。

DF:昌子源(90+4分IN)|採点なし/足をけいれんさせた関川に代わって、急きょピッチに送り出された。終了間際のGK早川のビッグセーブを称え、ともに吠えた! 

MF:舩橋佑(90+4分IN)|採点なし/先制点をマークした樋口に代わって出場。相手のクロスに足を伸ばすも、あわやオウンゴールかと肝を冷やした。

監督:岩政大樹|採点6.5/リーグ戦で引き分け続きだった鳥栖に対し、試合を活性化すべき交代出場の選手たちが絡んで勝利した点を、ことのほか喜んだ。


◆【採点寸評|鹿島】攻守両面で輝きを放った先制弾の樋口がMOM。鈴木は“違い”を見せつけたが...[J1第24節 鹿島 2-1 鳥栖](サッカーダイジェスト)

【PHOTO】鹿島の出場16選手&監督の採点・寸評。古巣戦に燃えた垣田は惜しいヘッド。佐野は獅子奮迅の働きぶり





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