日刊鹿島アントラーズニュース

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2018年2月19日月曜日

◆次なる一手はお風呂!? Jリーグの“常勝軍団”鹿島が仕掛ける「スタジアムビジネス」(FOOTBALL ZONE)





ホームタウンに寄り添う鹿島、2006年からスタジアム事業に着手

 地域に寄り添うスタジアム――。鹿島アントラーズの本拠地カシマスタジアムは、そう表現するのがぴったりくる。

 2006年、鹿島はJクラブで初めて公共施設等の管理を民間の企業・団体が代行する「指定管理者制度」に参入。茨城県からの委託を受けて、カシマスタジアムの運営をクラブ単独で担うようになった。

 スタジアム敷地内には鹿島のチームドクターも診療にあたる「アントラーズスポーツクリニック」や、ボルダリングルームやマシンジム、フィットネススタジオのある「カシマウェルネスプラザ」といった施設が充実。次々に新しい事業を始めた。

 さらにビアガーデンやフリーマーケットも開催されるなど、試合開催日以外にもお客さんがスタジアムへ足を運ぶ工夫がなされている。スタジアムの存在がより日常に溶け込むようにと努力が重ねられており、多様化したスタジアムビジネスへの取り組みはJリーグで最先端と言えるものだ。

 鹿島の取締役事業部長を務める鈴木秀樹氏に話を聞くと、「地域と密接に関わるクラブなので、スタジアムを自分たちのプロモーションの場に変えないといけない。そこはプロスポーツが地域に存在するためには絶対に避けられない」と、スタジアムビジネスの重要性を強調する。

「本業を正しくやっているだけでは食っていけないんだよ。それだけじゃクラブを支えていけない。スタジアム事業も偉そうにやっている訳じゃなくて、もがいているんです。

 守りに入っちゃいけない。ウチみたいな小さなクラブは、守っていたらすぐになくなっちゃうからさ」

地域の声を拾い“温浴事業”に乗り出す


 サッカーの公式戦が行われるのは年間で30日程度。スタジアムから30キロ圏内の人口が約70万人という小さなマーケットの中で戦う鹿島にとって、1年の残り330日間にビジネスとしてどれだけの収益を上げられるのかという問題は、クラブの存続に大きく関係する。

 いつ、どこで、何を、どんなふうに、誰に向けてアプローチすればいいのか。Jリーグ史上最多19個のタイトル獲得を誇る名門でさえ、試行錯誤の日々は続く。

 17年3月、鹿島はニューヨークに海外拠点を構えた。その後も急成長中のフリマアプリ「メルカリ」を運営する株式会社メルカリとのスポンサーシップ締結を発表するなど、話題を振りまいている。

 そんな先進的な一手を打ち続ける鹿島が、新たに乗り出しているビジネスが“温浴事業”だ。同年10月、株式会社LeFuro(以下、ルフロ)とオフィシャルサプライヤー契約を結んだことが、その第一歩だった。

 鈴木氏によれば、「地域の声を拾っていくなかで求める声が根強くあった」のが「温浴」だったという。

ルフロ側が抱く“スポーツ湯治”への期待


 ルフロは日本伝統の温泉療養である「湯治」を、現代にイノベーションした形で提供している。約70種類ものミネラルを含んだ「温泉シェール層」という、地層から独自の技術で抽出したという高濃度の「ルフロックス原液」を用いたお風呂で、従来の温泉では吸収できない豊富なミネラルを体に取り込むことができる。

 湯治場として東京・西麻布と神奈川・鎌倉に2店舗を構えているほか、家庭向けにバスサプリの販売も行う。サプライヤー契約を結んだ鹿島の選手には、このバスサプリが提供される。

「デトックス」という言葉が巷で聞かれるようになって久しい。ルフロでは体から老廃物を排出するのと同時に良質なミネラルを吸収して、より体の機能を高めることができる。

 このミネラルデトックスは、湯治本来の目的である「療養」を求めるお年寄りから、「リラクゼーション」や「美容」の効果を期待する若者まで幅広い層から支持を受ける。今では「介護」の業界からも注目を浴びており、鹿島との提携によって「スポーツ」という分野にまで広がった。

 “スポーツ湯治”で「選手のバスタイムを『洗う』時間から『整える』時間へとイノベーション」する――。プロスポーツ選手のコンディショニングに、より活用されると期待が高まっている。

鹿島とルフロの出会いのきっかけは…

 ルフロと鹿島の出会いを生んだのは、Jリーグのアドバイザーも務める実業家の堀江貴文氏だった。鈴木氏とクラブ・リレーションズ・オフィサー(CRO)の中田浩二氏が、堀江氏のYouTube番組に出演した際に紹介を受けた。

「ホリエモン(堀江氏)がいいって言ってる意味がよく分かったよ」。鈴木氏はそう言って笑顔を浮かべた。事業部長自らルフロを体験し、周囲の反応も見た上で、わずか半年ほどで契約を結ぶに至った。

「すぐに選手の寮のお風呂の中に入れてみようという話になったんだよ。最初は選手に知らせずに(お風呂に)入れて使い始めた。しばらくしてから『お風呂、最近変わったと思わない?』って聞いても、『分からない』って言う選手と『変わりましたね』って言う選手がいたんだけど、一番最初に気がついたのは寮の管理人だったんだよ。『すごいですね、このお風呂』って。

 やっぱり、分かる人には分かる。選手が実感できるようになってきた後は、選手の奥さんたちにも使ってもらったんだけど、やっぱり『これはいい!』って声が多かった」

 17年11月26日、昨季優勝争いの真っ只中に行われたホームでの柏レイソル戦では、日付の語呂合わせで「イイフロ(1126)」イベントを開催。来場者の中から抽選でルフロのバスサプリが当たるプレゼント企画も行うなど、認知を着実に広げている。

スタジアム内にルフロ施設を建設へ

 迎えた18年、「鹿島×ルフロ」の歩みはさらに加速していく。カシマスタジアム内にはルフロを体験できる温浴施設の建設計画が、すでに進行しているという。

 20年東京オリンピックの会場にも指定されているこのスタジアムに、「個室のラウンジがついたVIPや選手が使うスペースと、一般のお客さん向けの二つを設けていきたい」と語るのは、ルフロの代表取締役である三田直樹氏だ。夢は大きく膨らむ。

 三田氏は「アントラーズさんとともに“スポーツ湯治”のブランドを確立し、スタジアム運営やスポーツコンディショニングの成功事例として他のチームや競技へも普及させていきたい」と、今後のビジョンを語っている。「僕らはアントラーズさんのおかげで陽の目を当てていただいたという思いがあるので、しっかりと貢献していきたいです」と、全力のサポートも誓った。

 さらに、ルフロの“アスリートブランド”展開にも着手している。選手のリハビリやコンディショニングに使う用途で、一般向けのものよりも温泉成分の濃度が高いバスサプリを提供する。

 これを“アントラーズブランド”とあえて限定しないのも、鹿島だからこその意味がある。鹿島はユニフォームのメインスポンサーでる「LIXIL(リクシル)」をはじめ、多くの企業と長期に渡る良好な関係を続けている。

 鈴木氏は提携する企業には単なるスポンサーという関係で終わらず、“パートナー”として横のつながりを持ってほしいと話す。新たにアントラーズファミリーの一員となったルフロが、小さな枠組みに収まるのではなく、「B to B(Business to Business)」のつながりで裾野を大きく広げていけるような関係を築いていくための考えだ。

 事実として、三田氏は「ゴルフやプロ野球といったところからの問い合わせもくるようになりました」と、他競技からの関心が高まったとその影響力を明かしている。

多くの企業にとって「ここがラボになれば…」

 Jリーグにオリジナル10(1992年のリーグ発足時に加盟した10クラブ)として参入した当初から付き合いがあるパートナー企業だけでなく、ルフロのように全く新しいものとも手と手を取り合い、一緒になって歩を進める鹿島アントラーズ。スタジアムを中心としたチーム作りが、方方に変化をもたらしていく。

 鈴木氏は取材の最後に、こんな言葉を残してくれた。

「スポーツの力で地域を変えられるかもしれない。もし変えられないとしても、変えようと努力した結果、アントラーズというのがこの地域に認知されて、いろいろな分野と接点を持てているわけだから。

 スタジアムの管理権を取った時にいろいろな目的を掲げた。ここがラボになれればいいねって。スポンサーやサプライヤーになってもらっているいろいろな企業が、ウチのスタジアムを社会実験の場として使って、それがビジネスにつながって発展していけばいいのかなって」

 地域に寄り添うスタジアムがそこにある。この場所が、明るい未来の出発点となることを願わずにはいられない。

【了】

石川 遼●文 text by Ryo Ishikawa

ゲッティイメージズ、フットボールゾーンウェブ編集部●写真 photo by Getty Images, Football ZONE web


次なる一手はお風呂!? Jリーグの“常勝軍団”鹿島が仕掛ける「スタジアムビジネス」



◆FW豊川雄太が新天地で初出場も…オイペンは2点リードから逆転負け(サッカーキング)





 ジュピラー・プロ・リーグ(ベルギー1部)第27節が17日に行われ、FW豊川雄太の所属するオイペンはアウェイでズルテ・ワレヘムと対戦した。この試合で、豊川は移籍後初出場を飾っている。

 オイペンは13分、ドリブルでPA内に侵入したママドゥ・コネがゴールを挙げ、先制に成功する。39分には右サイドからのクロスが相手選手のオウンゴールを誘発し、オイペンがリードを2点に広げた。2点ビハインドとなったズルテ・ワレヘムも41分にハムディ・ハルバウィがヘディングでゴールを挙げて1点を返すと、44分には再びハルバウィが豪快に決めて試合を振り出しに戻す。

 後半も、オイペンは勢いを取り戻すことができない。64分、ズルテ・ワレヘムは遠目からの直接FKをブライアン・ハマライネンがオイペンゴールに突き刺し、ついに逆転に成功した。流れを変えたいオイペンは70分、豊川を投入。豊川はこれが新天地でのデビューとなった。しかし、オイペンに得点をもたらすことはできず。3-2で、ズルテ・ワレヘムがオイペンを下している。

 最下位を抜け出せなかったオイペン。次節は、23日にホームでロケレンと対戦する。

【スコア】
ズルテ・ワレヘム 2-3 オイペン

【得点者】
0-1 13分 ママドゥ・コネ(オイペン)
0-2 39分 オウンゴール(オイペン)
1-2 41分 ハムディ・ハルバウィ(ズルテ・ワレヘム)
2-2 44分 ハムディ・ハルバウィ(ズルテ・ワレヘム)
3-2 64分 ブライアン・ハマライネン(ズルテ・ワレヘム)

FW豊川雄太が新天地で初出場も…オイペンは2点リードから逆転負け


◆【動画】鮮烈ゴールも、大迫勇也の評価は及第点止まり「リーダーシップを発揮したが…」(GOAL)





今季ブンデスリーガ2点目を挙げた日本代表FWだが、地元紙の評価は及第点止まりとなっている。

ブンデスリーガ第23節で、ケルンはハノーファー相手に1-1と引き分けた。この試合でゴールを決めた大迫勇也だったが、地元メディアの評価は及第点止まりとなった。

過去最悪とも呼べる前半戦を過ごし、年明けは病気にも苦しまされていた大迫勇也。しかし、この試合で先発復帰を果たすと、30分に先制ゴールを挙げる。セットプレーのこぼれ球を拾うと、ワントラップからニアサイドを破った。

しかし、チームはその7分後に失点。大迫は起点となって攻撃を牽引したが、追加点を奪うことはできず。チームはドローで試合を終えている。

地元メディア『ケルン・シュタット・アンツィンガー』は、今季2ゴール目を挙げた大迫に「3」と及第点を与えた。「クラブの失敗の中を、技術を伴ってリーダーシップを発揮。しかし、少し休みすぎた」と評し、GKティモ・ホルンやDFヨナス・ヘクターらと同じチーム2位タイの評価を与えている。

最高点はMFマルセル・リーセの「2.5」。最低点は、MFミロシュ・ヨイッチの「5.5」となっている。

この引き分けで、4試合未勝利となったケルン。勝ち点14で、残留圏内の15位ブレーメンや、入れ替え戦の16位マインツとは9ポイント差と、残留へ向け厳しい状況が続いている。

(※ドイツメディアの採点は1が最高、6が最低)

【動画】鮮烈ゴールも、大迫勇也の評価は及第点止まり「リーダーシップを発揮したが…」


◆MF井上裕大が町田の新主将に就任! 副主将は20歳MF平戸ら3選手(ゲキサカ)





 FC町田ゼルビアは17日、2018年シーズンのキャプテンと副キャプテンが決定したことを発表した。

 キャプテンには移籍3年目のMF井上裕大(28)が新たに就任。クラブ公式サイトを通じて「チームが一丸となって戦えるように、そして、クラブが掲げている6位以内という目標の達成に向けて頑張りたいと思います。サポーターの皆さん、今年も熱い応援をよろしくお願い致します」と挨拶した。

 また、副キャプテンはDF深津康太(33)、MF平戸太貴(20)、DF大谷尚輝(22)の3選手が務める。


MF井上裕大が町田の新主将に就任! 副主将は20歳MF平戸ら3選手




◆【甲府】ジネイ、J1復帰に「使命感じる」 昨季J1最少23得点チームに救世主(報知)





 1月17日に加入が発表されたブラジル人FWジネイ(34)は昨季、J2優勝の湘南でチームトップの12得点を挙げ、1年でのJ1復帰に貢献した。決定力不足にあえぐヴァンフォーレ甲府にとって、大きな戦力になることは間違いない。そんな背番号9は「経験もあるから自信もある」「J1復帰に使命を感じている」などと、J1昇格を「完遂」することを誓った。チームは17日、静岡・アイスタでJ1清水と非公開の練習試合を行った。(取材・構成=三須 慶太)

 1月下旬からの合流となったため、実戦形式でチームの連係を試す機会は他の選手より少ないが、ここに来て着実にコンディションを上げてきている。

 「状態はすごくいい。開幕戦には絶対に間に合う。力になれると思うよ」

 昨季は湘南で、チームトップの12得点を挙げJ2優勝に貢献。今季もJ2での戦いになるが、新たなチャレンジと考えている。

 「湘南と交渉している中で、甲府にも興味を持ってもらった。新たな挑戦として甲府で頑張る気持ちも強くなったので決めた。このチームで(優勝の)タイトルを狙うのと、J1で戦うのは同じ気持ち。経験もあるから自信もある。J1復帰という目標に対して使命も感じている」

 ヴァンフォーレにも好印象を持っている。

 「すごく環境もいいし、選手も優しい。心からそう感じている。自分にとって最高の舞台。練習は集中しているし、みんなで成長しようという気持ちが伝わる。(吉田達磨)監督はすごくいい人。選手を見て色々な話をしているし、いい環境を作るためにそうしていると思う。チームを強くしようという思いを感じる」

 そんな背番号9に求められるのは、もちろんゴールだ。甲府は昨季、J1リーグ最少の23得点と決定力不足に泣いた。ジネイ自身も自らの双肩にかかる期待を感じている。

 「自分のアピールポイントはやはり空中戦だね。DFと体をぶつけても球際で負けない。あとはポストプレー。(前線で)ためを作って後ろの選手を使える。J1復帰という目標の中で得点やアシストなどFWとしての役割を果たしたい。もし去年(12得点)より取れれば十分。みんな期待していると思うしね」

 家庭では良き夫であり、2人の女の子のパパだ。富士山が見える山梨での生活を楽しみにしているという。

 「家族と出かけるのが好き。いろいろな観光地に行く。娘はディズニーランドが好きで、湘南のときはよく行っていた。奥さん(ジャナイナさん)が、富士山が見えるときは毎回写真を撮っていた。これからは毎日のように見られるね」

経験を伝える 最後に改めて今季に懸ける思いを語った。

 「チームを引っ張りながら経験を伝えて、自分のスタイル、プレーをできるだけ早く理解してもらえるようにしたい。優勝してJ1に戻りたい」

 ◆ジネイ(テルマリオ・デ・アラウージョ・サクラメント)1983年11月11日、ブラジル生まれ。34歳。ヴィトーリア(ブラジル)やセルタ、テネリフェ(以上スペイン)などを経て2015年に鹿島へ加入。16年6月に鹿島を退団し、同年8月に練習参加を経て湘南へ加入。今季より甲府へ完全移籍。J1通算20試合4得点、J2通算33試合12得点。186センチ、76キロ。利き足は右。既婚。


【甲府】ジネイ、J1復帰に「使命感じる」 昨季J1最少23得点チームに救世主




◆野沢拓也と田代有三、豪州でホットライン復活。二人三脚で上るAリーグへの階段(フットボールチャンネル)


オーストラリアの地で常勝・鹿島アントラーズを支えたコンビが再会した。昨年から田代有三がプレーしていた2部相当のウーロンゴン・ウルヴズに、ベガルタ仙台を退団してフリーになっていた野沢拓也の加入が決まった。将来のAリーグ参入を目論む古豪の命運は2人の日本人が握っている。(取材・文:植松久隆【オーストラリア】)

野沢拓也が豪州へ。36歳で決意の海外挑戦



 2月15日11時、快晴のウーロンゴン・ウルヴズ(NPLNSW1・NSW州1部/豪州2部相当)の本拠地WINスタジアムには、現地のメディアが集った。彼らのお目当ては、ウルヴズがこの日獲得を正式に発表する新外国人「タクヤ・ノザワ」である。

 1999年にデビュー以来、19年連続J1でプレーし、鹿島アントラーズの5度のJリーグ制覇に貢献したJ1通算384試合出場70得点を誇る至宝、野沢拓也、その人だ。公式戦では2001年から実に17年連続、J1リーグ戦に限っても14年連続で得点を決め続けたレジェンドの豪州上陸が、遂にオフィシャルになった。

 お披露目の場に臨んだ野沢には、適度な緊張と正式契約を交わしての安どがあいまった表情が浮かんでいた。その姿を、隣で目を細めて見守るのが、野沢の1学年下の後輩で鹿島、神戸を通じて7シーズンに渡ってチームメートとしてしのぎを削ってきたFW田代有三。盟友・野沢の加入で、神戸時代の12年以来となるホットラインが、豪州、しかもウーロンゴンの地で“再開通”することになるとは、当の本人たちをはじめ、いったい誰が予想しただろうか。

 3年半在籍した仙台を退団後、つい最近までその動向が知れていなかった野沢だが、昨季ウーロンゴンでプレーした後輩の強い勧めもあって海を渡ることを決めた。いくつかのオファーのどれかを選んでJリーグでさらなる金字塔を打ち立てる可能性も捨て置いて、36歳での海外挑戦となる決意の来豪だった。

 ここで、少し時計の針を戻そう。

 2月10日、ブリスベン。抜けるような青空とじめっとした湿気。典型的な亜熱帯気候の夏の日の昼過ぎ、野沢と田代はブリスベン空港に降り立った。開幕に向けてのトレーニングを進めるチームが、当地でキャンプを張る中国2部・武漢卓爾の練習試合の相手として招へいされ、昨季の主力の田代、契約前提で練習参加している野沢の2人が帯同してきたのだ。

 田代は昨年の経験から豪州の気候には慣れているだろうが、野沢は滞在わずか5日目。日本からやってきたばかりの身には、40度近くになる豪州の夏と日本の冬の気温差は知らず知らずのうちにボディブローとして効いていたに違いない。しかも、2人は共に実戦からかなり遠ざかっていたこともあり、そのコンディションは参考外とも言える状況だった。

「引退するかどうかまで含めて色々と考えた」(野沢)

 ウーロンゴン側に許可を貰い、関係者だけの閑散としたスタジアムで非公開の練習試合を取材することができた。主催の武漢側の公式な許可を取っていないので、試合の詳細は書かないが、元浦和レッズのラファエル・シルバ擁する武漢は歴戦の強者である2人が素直にその実力を認めるほどの完成度。

「はっきり言って、Aリーグに入っても充分にやれるレベル。全く穴が無い良いチーム」(田代)という相手に、ウーロンゴンはチームとして厳然たる実力の差を見せつけられた。2人がプレーした前半だけで4失点。コンディションが整っていない2人は、ともに決定的な仕事をできずに前半で交代。残念ながら、野沢の「豪州デビュー」は到底本人が納得するレベルのものとはならなかった。

 試合直後の野沢は、不満そうな表情を浮かべて、「いや、何もできなかった。ボールも出てこないし…」と何度も頭を捻った。オフ明け初戦、しかも合流直後の試合というシチュエーションでも、自分のパフォーマンスだけでなくチームとしての結果にも納得がいかないのは、長年常勝・鹿島の屋台骨を支えてきたプライドのなせる業だろうか。

「外国人枠の選手なのだから、こんな状況下でも違いを見せつけなきゃいけなかった」と反省しきりの先輩を「開幕前のこの段階で、これだけのレベルのチームとやれたことに意味があるし、これからうち(ウーロンゴン)も上がっていけば、すぐにタクさんにボールを集めなきゃいけないというのは、他の選手もすぐに分かりますよ」と後輩の田代がしっかりフォローする。

 一旦宿舎に戻った2人と日本人経営の地元の焼き肉店で合流して、さらに話を聞くことができた。

「本当の話、(仙台を退団した後)それこそ引退するかどうかまで含めて色々と考えた。Jリーグでは、今までのキャリアで『ある程度、やり遂げた』って気持ちもあったし、もしまだチャレンジするなら他(海外)でって気持ちもあった。そんな時に、今回の(田代)有三の誘いがあって、彼がそれだけいいって言うなら、思い切って挑戦してみようかなって気持ちになった」

 田代はそう語る野沢の横顔を眺めながら頷く。

「とにかく、このクラブが勝つためには、僕が取れるだけの点を取らなきゃいけない。そのためのパスの安定供給源が何としても必要だった。そう思った時に、僕の中ではタクさん(野沢)しか考えられなかった」

田代が直談判。クラブ首脳陣を動かした野沢への強い思い

田代有三

 そう思ってからの田代の行動は、かなり思い切ったものだった。

「会長とCEOに直談判です。タクさんがどれだけすごい選手かを必死に伝えて。最後には『ユウゾウが言うならば』とプレービデオなんかも確認しないで契約前提の練習参加を決めてくれた」

 実は、筆者は偶然にも「野沢、豪州2部相当に移籍か」との報道が流れる1週間ほど前、ウーロンゴン・ウルヴズを現地で取材していた。その時、一時帰国中の田代とは行き違ったのだが、取材に応じてくれた現場の総責任者であるクリス・パパコスマスは「ここで話した以外にも、すごい話が近いうちに聞こえてくるから楽しみにしておくといいよ」と今思えば、かなり思わせぶりな言葉を残していた。

 待ち合わせ場所からスタジアムまで向かう車中でもクリスからは「ユウゾウがいた頃の鹿島は強かったのか。どんなチームだった?」と質問攻め。その時は、ウルヴズでプレーする田代がどれだけすごい選手だったか知りたいのだろうくらいに思っていたが、それだけではなかった。

 彼は「野沢拓也」の存在の大きさを筆者に逆取材を試みていたのだ。「小笠原満男、本山雅志、柳沢敦、鈴木隆行」といった鹿島の名だたるレジェンドの名前と共に、筆者は確かに「野沢拓也」の名前も出した。残念ながら、その時にクリスがどんな表情をしたかは、ハンドルを握って進行方向を直視していたので見ることができなかったが。

 ブリスベンでの夜に話を戻そう。

「タクさんが、こうやってメディアの人と話しているのも、すごいことなんですよ」

 田代が言うには、野沢は日本のフットボールメディアでは「なかなか話さない選手」として有名だったらしい。豪州を根城にする筆者はそんなことも知らずに、ずけずけと聞きたいことを聞いた。確かに、この日を前にリサーチしようとインターネットで過去記事を漁っても、これだけの実績を持つ選手にしては意外なくらいにメディアでの露出が少ないという印象はあった。

 野沢は決して能弁ではないが、こちらが真摯に尋ねれば訥々と語ってくれる。鹿島ユース出身で鹿島と共にキャリアを高めてきた野沢は、古巣にもきちんと今回の挑戦に関しての報告をしてから海を渡ってきた。

「ここ(ウーロンゴン)に来ると決めてから、鹿島にも挨拶に行った。満さん(鈴木満強化部長)や(小笠原)満男さんも、快く送り出してくれた。やっぱりそういう人の期待に応えなきゃいけないし、この1年、精いっぱいやって結果を出して、何とかウーロンゴンの力になりたい」

 そんな古巣について語る野沢の口調には熱がこもっていた。それは、今も彼の心の底にある「鹿島愛」なのだろうか。

目標はAリーグ参入。2人の日本人が背負う重責

野沢拓也

 その鹿島は3月7日に行われるAFCチャンピオンズリーグのアウェイでのシドニーFC戦のため豪州へやってくる。

「いや、監督には開幕直前で練習だから(観戦に行くのは)ダメって言われてます。でもね、それまでに僕とタクさんがきっちり仕上げて違いを出せてれば、『いいよ、行ってきて』ってなるんじゃないかな(笑)」と田代は屈託なく笑う。

 遠征してくる鹿島の選手、スタッフ、サポーター達は遠征先のアウェイのスタジアムに2人のクラブの功労者の姿を見つけた時に何を思うのだろうか。見てみたい光景ではある。

 とはいえ、2人にとって勝負のシーズンだけに、クラブ最優先は当然のこと。かつての全国リーグ(NSL)を連覇するなど輝かしい実績を誇るウーロンゴンは、直近で2019/20シーズンにも実現するとされるAリーグの拡張に向け、新規参入の有力候補となっている。

 その立場をより強固にするには、今季のNPL(地域リーグ)で目に見えた結果を残すことが喫緊の課題。最短でのAリーグ入りを目指すロードマップを着実に進めるには、是が非でも結果が欲しい。そんな大事なシーズンの「外国人枠」を2つとも日本人選手に託したウーロンゴンと、託された2人の元Jリーガーは、言うまでもなく一蓮托生。ウーロンゴンの躍進には、“ジャパニーズ・コネクション”の大爆発は何にもまして必要なのだ。

 田代は冗談めかして言う。

「当然ながら、タクさんのアシストで僕が決めるってのはすごく多いんですけどね、逆に僕がアシストして、タクさん(が得点)ってパターンも結構あるんですよ(笑)」

 野沢も負けていない。

「有三は、セットプレーの時とか『ここに蹴って』って自分の頭の周りを指で指すこともあったけど、そんなのもう相手にバレバレ(笑)。それでもそこに蹴れば、なんとかしてくれるってことは多かった。確かに有三から僕ってパターンも結構あった」

 ピッチ外での掛け合い同様、2人合わせて71歳のベテラン2人の息の合ったコンビネーションがピッチ上で観られれば、NPLレベルではそうそう止められまい。攻撃陣には2人以外にもなかなか面白い選手を抱えるウーロンゴンだけに、DF陣の頑張り次第ではNPLの優勝争いに絡んできても驚かない。

 古巣鹿島にもつながる赤いユニフォームをまとう2人が、1回でも多く相手ゴールを陥れることができれば、ウーロンゴンの成績もおのずと上がっていくに違いない。

 野沢拓也と田代有三、ウーロンゴンが誇る2頭の“ニホンオオカミ”の大暴れを期待したい。半年後、彼らがどのように充実したシーズンを振り返るのか。そして、その視線の先に何を捉えるのだろうかーー興味は尽きない。

(取材・文:植松久隆【オーストラリア】)

【了】


野沢拓也と田代有三、豪州でホットライン復活。二人三脚で上るAリーグへの階段




◆【鹿島】内田が別メニュー調整 疲労回復優先、古傷の右膝は問題なし(報知)





 DF内田篤人が鹿嶋市内で行われた練習でグラウンドに姿を見せず、室内で別メニュー調整を行った。クラブ関係者は「疲労回復のため。あくまで大事をとって」と説明。古傷の右膝は問題なく、病院に行く予定もないという。

 内田はACL初戦・上海申花戦(14日、1△1)で5か月ぶりにフル出場を果たしていた。25日にJ開幕戦清水戦(アイスタ)を控えていることから、医療スタッフの判断次第ではACL第2節・水原三星戦(21日・水原)への出場を見送る可能性もある。

 この日ディフェンダー陣だけで行われたクロス対応の練習では、クロッサー役として右サイドバックにDF伊東幸敏とDF小田逸稀、左サイドバックにDF安西幸輝とDF山本脩斗が入った。


【鹿島】内田が別メニュー調整 疲労回復優先、古傷の右膝は問題なし




◆【鹿島】ACL水原三星戦に向け国内ラスト調整 土居「激しく厳しく来るチーム」(報知)





 鹿島は18日、鹿嶋市内のクラブハウスでACL1次リーグ第2節・水原三星戦(水原)に向けて実践形式の調整を行った。

 ミーティングで水原三星の映像を確認したというMF土居聖真は「激しく厳しく(守備に)来るチームという印象」と語り、「やってみないとわからない。思った以上に速いかもしれない」と警戒した。

 初戦の上海申花戦(14日、1△1)では後半24分から途中出場したものの、得点に絡めずチームはドロー。「去年から変わらないといけない。今年はシュートへの意識を持ちたいと思っている」と前年度の8得点から一転、3得点に終わった昨季からの巻き返しを誓った。

 DF昌子源は「あの人が攻撃の起点になる」と水原三星の元モンテネグロ代表で身長187センチのFWデヤン・ダミヤノビッチを警戒。DF植田直通も「前線の外国人に高さがある」と続いた。

 チームは19日に韓国入り。当地で2日間練習を行い、21日に行われる試合に備える。


【鹿島】ACL水原三星戦に向け国内ラスト調整 土居「激しく厳しく来るチーム」





◆鹿島 ACL水原三星戦は寒さも敵!金崎が今季初先発も(スポニチ)





 敵は相手選手だけではない。寒さも強敵だ。鹿島は21日、ACL1次リーグ第2戦・水原三星戦に挑む。試合開催地は韓国北西部の水原市。五輪が行われている平昌よりわずかに南方で、緯度は日本の福島や新潟と変わらない。午後7時キックオフの試合当日、夜間の予想気温はマイナス8度だ。

 今月13日には水原市よりさらに南方に位置する南西部の全州市で柏が全北現代と対戦しているが、大岩監督は、その全州市でさえ「グラウンドが凍っていた」と柏の下平監督から聞いていることを明かした。仮にピッチが凍れば、パス回しに大きな影響が出る。ミーティングでは、イレブンに「ピッチの状態や気温などいろいろな状況があるだろうけど、しっかり反応して自分たちで判断を変えていくことも含めて準備していこう」と注意喚起した。

 19日の韓国出発を前日に控え、グラウンドでは紅白戦を実施。韓国人GK権純泰(クォン・スンテ)(33)と、コンディション不足のため14日のACL1次リーグ上海申花戦で出番のなかったエースFW金崎夢生(29)が今季初先発する可能性が高まった。DF植田直通(23)は引き続き先発が濃厚。「長袖が嫌い」なため普段から真冬でも半袖でピッチに立つ23歳は、「そのままで行きます」と氷点下が予想されるピッチでも半袖スタイルを貫くことを宣言していた。


鹿島 ACL水原三星戦は寒さも敵!金崎が今季初先発も




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