日刊鹿島アントラーズニュース

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2016年4月5日火曜日

◆川崎Fと鹿島がⅤ候補であることを改めて証明した「天王山」(Sportiva)



http://sportiva.shueisha.co.jp/clm/jfootball/2016/04/04/post_1111/

浅田真樹●文 text by Asada Masaki 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 第4節終了時点で首位の川崎フロンターレと、3位の鹿島アントラーズが対戦したJ1ファーストステージ第5節。今季序盤の天王山はともに1点ずつを取り合い、1-1で引き分けた。

川崎フロンターレと鹿島アントラーズの試合は1-1の引き分けに終わった

 結果はドロー。だが、内容的に見て、より勝ち点3に近かったのは、鹿島のほうだろう。それは当事者の言葉にも表れている。

 試合後、石井正忠監督は「1失点はちょっとした守備の対応のミス。そこで川崎の特徴を出させてしまったのは悔しい」と語りつつも、「選手はいい意識で立ち上がりから90分間戦い、いいパフォーマンスを見せた」と納得の様子だった。

 シュート数は川崎の9に対し、鹿島は16。単純な総数でも上回っただけでなく、「あとは押し込むだけ」というような決定的なチャンスを数多く作っていたのも鹿島だった。

 川崎のように何本ものパスをつないで攻めるわけではないが、ゴールへ向かう速さがあ
り、確実にフィニッシュまで持ち込む。特に後半は、川崎が本来の落ち着いた攻撃ができず、行ったり来たりが激しい展開では、明らかに鹿島に分があった。石井監督が語る。

「川崎のボックス(ペナルティーエリア)内に入る形は、中村(憲剛)選手から背後へのスルーパスが多いが、うちはいろんな選手のさまざまなコンビネーションの形がある」

 確かに鹿島は、この試合に関して言えば、攻撃の多彩さでも川崎を上回っていたのは間違いない。MF遠藤康が、あるいはMF土居聖真が、数多くあった決定機のひとつを決めていれば、問題なく鹿島が勝っていた試合だろう。

 その意味では、鹿島にとっては勝ち点2を失った試合とも言える。しかも、鹿島は前節終了時点で失点は1でリーグ最少ながら、得点もわずかに4で、下から数えて2番目(他に4クラブが並ぶ)という少なさ。数字上は、得点力不足が足を引っ張っているようにも見える。

 だが、そんな見方を当の選手は否定する。この日、先制点を叩き出したMFカイオは、「どうしても決定力不足と言われてしまうが」と前置きをし、こう語る。

「内容的に押していたし、チャンスも作れた。チャンスが作れていないと厳しいが、チャンスは作れている。チーム内の雰囲気も悪くない。今やっていることを続けていれば結果はついてくると思う」

 さて、一方の川崎。「自分たちらしいリズム(でできた時間)はすごく短かった」という風間八宏監督の言葉にも表れているように、試合全体を通して見れば、川崎が劣勢だったのは確かだ。

 キャプテンのMF中村憲剛は、「後半は(主導権を)握れなかった。ポジショニングの問題だと思う」と険しい表情で語っていたが、前節終了時で総得点12とリーグ最多を誇る攻撃力は、ほとんどの時間で鳴りを潜めた。

 そこには、負傷者が相次ぐ中、ベストの布陣で戦えないという事情もあった。特にFW大久保嘉人、MF大島僚太を欠いたのは痛かった(大久保は後半途中から出場)。風間監督は語る。

「我々が同じくらいのテンポでサッカーをしてしまった。人が変わるとうまくいかない。今日もそれなりにはできているが、根本的にはいつものペースが出ない」

 中村もまた、「中盤の真ん中でタメができない。攻撃が単発で同じリズムになる。僚太のリズムは誰も出せない」と認める。

 だが、こうした事態は長いシーズンでは必ず起きること。つまり、それを乗り越えられないクラブは優勝の可能性を大きく下げてしまうということだ。

 風間監督はあくまでもポジティブに、同点ゴールが生まれた場面(DFラインの背後に飛び出したFW小林悠へ、MF田坂祐介がパスを送ったことが、最終的にMFエウシーニョのゴールにつながった)について、こう振り返った。

「誰が出ても同じようにプレーできるということが、少しずつ見えてきた1点だった。悠はああいうの(相手のマーク)を外すのがうまい。そこへ田坂が(パスを)出したりして、いろんな人が(周りの動きを)見えてきているんだなというワンプレーだった」

 確かに、この日の川崎には、いつもの“らしさ”が見られなかった。しかし、言い換えれば、それでも首位を争うライバルに先制されながら追いつき、引き分けに持ち込んだ。この勝ち点1の持つ意味は小さくない。加えて、こうした試合を重ねることが選手層を厚くし、誰が出ても一定のレベルを保つことにもつながっていく。

 そして、風間監督は最後にこう言った。

「(数人の主力を欠く中で)この選手たちはよくやってくれた」

 この試合は、単に1位と3位の直接対決だったというだけではない。川崎と鹿島は戦力的に見ても、間違いなくJ1トップクラス。しかも、開幕前に“3強”の呼び声高かったサンフレッチェ広島、ガンバ大阪、浦和レッズは、AFCチャンピオンズリーグを並行して戦わなければならないが、両クラブはともにJ1に絞って戦える有利さを持つ。

 互いに譲らず、勝ち点1ずつを分け合った痛み分けは、両クラブが今季の優勝候補であることを改めて示した試合だったのではないだろうか。

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