日刊鹿島アントラーズニュース

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2014年12月23日火曜日

◆名選手からの贈り物・中田浩引退セレモニー(東京新聞)


それは彼からの最後の贈り物だったとは言えないだろうか。今月6日にカシマスタジアムで行われたJリーグ鹿島・中田浩二選手(35)の引退セレモニーを見た。日本サッカー界の一時代を築いた男がこの日何を伝えたかったのか。しばし、考えてみた。

 2000年に3冠を達成するなど、鹿島の黄金時代を支えた。日本代表としても02年日韓など2度のワールドカップに出場。日本中を熱狂させた。そんな名DFは偉そうなそぶりを全く見せず、笑顔でユニフォームを脱いだ。「まだできる。でも、チームに貢献できていない。葛藤はあったが、自分がいつまでも居座るのはよくないと思った」。飾らない言葉が胸を打った。

 スタジアムには人気ロックバンド、MrChildrenの「GIFT」が流れていた。NHKの北京五輪テーマ曲としても有名なこの曲を聞きながら、中田はゆっくりとピッチを一周した。

 その歌詞にはこんな一節がある。「『白か黒で答えろ』という難題を突きつけられ」。勝つか負けるか、勝負の世界で17年間も生きてきた彼にふさわしい曲に、客席から温かな拍手が重なった。

 中田は「79年組」と呼ばれる黄金世代の一人。小野伸二、稲本潤一、高原直泰ら、1979年生まれの名選手たちと、ここまで日本のサッカーを支えてきた。「皆で素晴らしい時間を過ごせた。彼らと切磋琢磨(せっさたくま)してきたことが今につながっている」。言葉に力を込めたのが印象的だった。

 今年、Jリーグでは仙台の柳沢敦も引退した。一つの時代が終わろうとしている中、筆者には彼が「良い仲間をつくれよ。そして、もっともっと競い合えよ」と言い残したように思えてならない。

 この日、鹿島の選手たちは涙を浮かべて、中田を見送った。寂しくなる。心細くもある。だが、「贈り物」を後輩たちがしっかりと受け取ったのであれば、救われる。
(谷野哲郎)

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