日刊鹿島アントラーズニュース

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2017年6月8日木曜日

◆鹿島・大岩監督が求めた3つのこと。 新体制でも王者の哲学は変わらず(Sportiva)


 鹿島アントラーズの新たな指揮官となった大岩剛監督は、サンフレッチェ広島に3-1と勝利した初陣を振り返り、「ホッとしている、というのと、90分間長かったな、というのが正直な感想です」と言って、安堵の表情を浮かべた。


 昨季のJ1王者である鹿島が、AFCチャンピオンズリーグの敗退を受けて、石井正忠監督の解任を発表したのが5月31日。同時に大岩コーチが昇格し新監督に就任することが決まったが、6月4日に行なわれたJ1第14節の広島戦まで、準備期間はわずか4日しかなかった。

 大岩監督自身も試合後には「みなさんが思われているとおり、いろいろあった中での試合だったので、難しい部分もあった」と、少ない時間の中で臨まなければいけなかったことへの苦労を吐露した。それでも選手起用と采配からは、少なからず新監督の”色”を感じることができた。

 広島戦に向けた限られた時間の中で、大岩監督が特に選手たちに求めたのは、次の3つだったと言う。

「チーム自体のコンセプト、ベースとなる部分はまったく変わらないので、それをもう一度、まずは思い出すこと。あとは、自分たちがボールを保持しているときに、シンプルにボールを動かすこと。そして、チャンスがあれば、積極的にボールホルダーを追い越していくこと」

 先発メンバーについては、「ケガ人が多くいる中で、選手の選択肢というのは限られていた」(大岩監督)とはいえ、抜擢したMF中村充孝が先制点を挙げ、MFレアンドロが2得点を奪った結果は、そうした新指揮官の意図、選手への意識づけが結実していた証(あかし)と言える。

先制点が生まれたのは、前半14分だった。相手のロングフィードをセンターバックの植田直通がクリアする。そのボールを、ボランチの三竿健斗、中村とつなぎ、2トップの一角を担った土居聖真がボールを受けて中央をドリブルで駆け上がっていく。同時に、ボールを預けた中村が土居を追い越すと、最後は土居からのラストパスをフリーで受けた中村が右足を一閃。強烈なシュートを突き刺した。

 まさに新監督の狙いどおりだった。シンプルにボールを動かすプレーと、ボールホルダーを追い越していく動きによって決まった得点だった。その先制点をお膳立てした土居が語る。

「(FWで起用されたことに対する監督からの)期待というか、メッセージは伝わってきた。もちろん、自分が得点も決めたかったですけど、自分が生きることで、周りが生きると思っていたので、今日はそれをもろに出すことができたと思う」

 前半30分、レアンドロが挙げた2点目も同様だった。レアンドロが縦パスを入れて、中村とのワンツーから決めたファインゴールも、すなわち追い越す動きから生まれた得点である。

 ダメ押しとなる前半43分のゴールは、MF永木亮太のボール奪取からレアンドロへとつながったものだった。それも大岩監督が求めた、チームのベースとなる組織的な守備によって生み出された得点であり、連動したプレスの成せる業(わざ)だった。永木が言う。

「(前半43分の)得点も、前からボールを奪いにいった結果だった。そうした前への意識が高かったことが得点にまでつながったので、よかったと思います」

 キャプテンマークを巻いて出場したDF昌子源が、「実際にやるのは、僕ら選手。それを、みんなもわかっていたと思うし、その思いをしっかりとピッチで表そうとした」と、この一戦にかける思いを語ったように、選手たちも危機感を持っていた。そのうえで、大岩新監督が”鹿島の哲学”を取り戻させたことも勝利には大きかった。

 大岩新監督が初陣で見せた”色”は、何も原点回帰だけではない。3得点を奪って折り返した後半、広島が前に出てきたため、押し込まれる場面が増えたが、それには選手交代を駆使してうまく対応した。まさに、そのひとつ、ひとつに明確な意図があった。

 広島は左ウイングバックを務める柏好文の突破力を生かしての反撃を試みていた。後半22分には、その柏のクロスから失点したが、すると大岩監督はすぐさまレアンドロを下げて、DF西大伍を投入したのである。

「(後半は)うちのDF伊東(幸敏)のサイド、そこが(広島の)柏選手に1対1でやられてしまっていた。そのため、西を入れることで数的優位を作れるのではないか、と」(大岩監督)

 大岩監督は、サイドバックを主戦場とする西を2列目に置くことで、伊東と西のふたりで相手のキーマンである柏の突破を封じた。さらに、西が中盤でタメを作って、相手のストロングポイントを完全に消した。

 また、広島が選手交代に加えて、システム変更をしてまで攻撃に打って出てきた終盤には、満を持してMF小笠原満男をピッチに送り込んだ。

「相手のボールの出し手となる青山(敏弘)選手と柴崎(晃誠)選手のところへのプレッシャーが足りていなかったので、最後に小笠原を入れた。それで、選手たちにはっきりとしたポジショニングを取らせることで、(相手に)圧力をかけたいな、という考えがありました」(大岩監督)

 誰よりも試合の”勝ち方”を知っている小笠原に細かく指示を与えて、チーム全体に試合の終わらせ方を伝播させた。結果、鹿島は相手の逆襲を1点でしのいで、白星を手にした。

 完璧だった前半と比べれば、後半は受け身に回って劣勢を強いられた。降格圏に位置する広島が相手ということを考えると、修正、改善しなければいけない点はまだまだある。しかしながら、少ない準備期間を思えば、申し分ない結果だった。しかも、得点した中村やレアンドロをはじめ、FWで起用された土居らがピッチで躍動したことは、今後に向けて明るい材料ともいえる。

「中盤の中村、レアンドロは、もちろん(彼らの)ポテンシャルというものを信じて起用しましたが、彼らに言ったのは、ひとつのプレーで終わりじゃないということ。出して動く、出して追い抜いていく動きをやってもらいたいということを伝えた。

 2トップの土居と鈴木(優磨)については、(ふたりはこれまで)サイドハーフをやっていたことが多かったのですが、僕の中では特に土居は、中央で相手のボランチとDFラインとの間でボールを受ける力というのが、日本を代表する能力があるとも思っていますし、彼の得意とするプレーだとも思っている。そこで起用することで、広島を押し込んでいくイメージを持って起用しました」

 そうした大岩新監督の明確なメッセージを受けて、選手たちも迷うことなく、自らのプレーを存分に発揮した。3-1と快勝した試合を、再び昌子が振り返る。

「今日のような前半の戦いができれば、絶対に負けないと思う。この日の試合の入り方を忘れないようにして、この(日本代表のW杯予選による)ブレイクでちょっとずつ”大岩色”というのが出せるようになればいいと思います」

 記者会見の場で、理路整然と質問に答える大岩監督には力強さがあった。まだ1試合を指揮したにすぎないが、常勝軍団にふさわしい勝利にこだわる姿勢は伝わってきた。初陣ではあったが、新監督からもやはり”王者”の風格が漂っていた。

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jleague_other/2017/06/07/___split_69/

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