日刊鹿島アントラーズニュース

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2018年11月4日日曜日

◆【英国人の視点】鹿島が歩んできたACL決勝までの軌跡。悲願のアジア王者へ、最大の武器と最大の弱点(フットボールチャンネル)






鹿島アントラーズがAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝に進出し、イランのペルセポリスに勝てば日本勢の連覇が決まる。鹿島としては初のACLのタイトルとなるが、決勝までの道のりは決して楽ではなかった。鹿島が見せたACLでの戦いとは…(文:ショーン・キャロル)


鹿島が獲得していないタイトル

 鹿島アントラーズには、日本で最も成功を収めたクラブであることを誇る正当な理由がある。

 Jリーグ加盟は99.999%不可能だと言われながらもジーコと契約を交わして加盟を果たし、日本のプロチームとして初の3冠を達成し、あらゆる国内タイトルをどのクラブよりも多く獲得し、アジアのチームとして初めてクラブワールドカップ決勝へ進んだ(さらにレアル・マドリー撃破まであと一歩に迫った)チームとなった。誰もが羨むようなその歴史は何度も語られてきた。

 だが、その鹿島が今まで逃し続けてきたタイトルが一つある。国内で圧倒的な成功を収めながらも、鹿島が手に入れることができていないトロフィーがある。まだ一度もアジア王者の座に登り詰めることはできていない。

 今季開始前の時点で鹿島はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)に7回参加していたが、2008年に準々決勝まで進んだのが最高成績だった。昨季も含めて4回はベスト16で敗退。宿敵の浦和レッズが2回目の大会制覇を果たしたことで、アジアのトロフィーがコレクションから欠けていることの悔しさはより一層強まった。

 だが2週間後には、その全てが変わるかもしれない。初めて戦う決勝の舞台でイランのペルセポリスを下せば、鹿島に足りなかったピースがついに手に入る。

 鹿島の決勝進出までの道のりはやや奇妙とも言うべきものだった。準決勝で水原三星と激突するまではある程度楽な戦いが続き、大岩剛監督のチームが本格的にトップギアを入れることもなかったが、敗退の危機に追い込まれることもほとんどなかった。

 グループステージではわずか2勝を挙げたのみで、いずれもアウェイでの白星だった。だが敗戦も1回のみ。すでに決勝トーナメント進出を決めたあとで水原に0-1の敗戦を喫した。

グループステージで負けた韓国勢との再戦

 その敗戦で水原にグループH首位の座を明け渡したことで、鹿島はベスト16で難敵上海上港との対戦を強いられることに。だがそのラウンドもホームで3-1の勝利、アウェイで1-2の敗戦という結果で突破。最後にフッキがPKを決めたことで実際より接戦に見えるスコアだが、鹿島は比較的楽に勝ち進んだ。

 準々決勝でも中国勢をあっさりと退けた。アクセル・ヴィツェルがチームを去り、退団を望むアントニー・モデストを欠いていた天津権健はグループステージと比べて抜け殻のようなチームとなっており、2試合合計5-0で一蹴された。

 続いて準決勝では水原との再戦が決定。一見したところ戦いやすいカードかと思われたが、鹿島での1stレグ開始からわずか6分で水原が2-0のリードを奪うというカオスな展開が待っていた。

 それでも鹿島は前半半ばにチャン・ホイクのオウンゴールで息を吹き返すと、終盤に入ったところでセルジーニョ、そして93分に内田篤人がゴールを挙げて衝撃的な逆転勝利を飾った。

 しかし、準決勝のドラマはまだ終幕には程遠かった。

準決勝2ndレグで起きたドラマとは…

 2ndレグでは1stレグより良い形で試合に入ることに重点を置いた鹿島は、水原ワールドカップスタジアムでの試合の序盤戦の主導権を握り、25分にはセルジーニョのフリーキックに山本脩斗が頭で合わせてアウェイゴールを奪う。これで合計スコア4-2とリードし、決勝進出を手中に収めたかに見えたが、水原も後半に反撃を繰り出した。

 まずは52分にイム・サンヒョプがリバウンドを押し込んで最初のジャブを食らわせる。突然のように揺らいだ鹿島に対し、わずか1分後にはチョ・ソンジンがCKに合わせた弾丸ヘッドを決めて2-1とした。ロープ際にまで追い込まれた鹿島は、水原に攻め込まれるたびにゴールを許すかのようだった。実際に60分には裏へ抜け出したデヤン・ダムヤノビッチが決めて水原が合計5-4のリードを奪った。

 もはやパンチドランカーとなった鹿島に対し、62分にはエルビス・サリッチが決定打を打ち込むチャンスを迎える。穴だらけとなった鹿島守備陣をまたも切り裂いたが、シュートはわずかに枠外へ外れた。

 ボスニア人MFは2分後にはこのミスを悔いることになる。西大伍のゴールで鹿島が1点を返し、合計スコア5-5、アウェイゴールも2点ずつという全くの互角に持ち込んだ。この状況により鹿島は前半45分間に見せていたような落ち着きを取り戻すことができた。82分にセルジーニョがエリア内のルーズボールに反応し、最終的に勝負を物にしたのもさほど驚くべきことではなかった。

 準決勝は盛り上がる展開ではあったが、現在の鹿島の守備の脆弱ぶりも浮き彫りにした。ペルセポリス打倒のチャンスを掴むためには間違いなく修正しなければならない部分だ。

鹿島が抱える守備問題と攻撃陣の調子





 決して一度きりのことではなく、10月を通して守備が脆い状態は続いていた。アントラーズは10月の公式戦6試合中5試合で2失点以上を喫している。10月31日から11月10日までにホーム&アウェイの決勝も含めた4試合を戦うというこれまで以上の過密日程の中で、クラブ史上最大の2試合に向けて疲労が蓄積し、その結果として個人のミスがさらに増えていく恐れもある。

 選手の負傷が影響していることも間違いない。決勝に向けて鹿島は、昌子源をセンターバックに起用し続けるかどうかという大きな決断を下さなければならない。25歳の昌子はトップクラスのDFではあるが、長引いた負傷離脱から復帰後の2試合ではやはり動きが鈍っていた。本来のスピードを取り戻し、万全の状態が整ったことを示す時間はまだ1週間残っているが、100%の状態ではないようなら大岩監督は代役として犬飼智也の起用も検討しなければならないかもしれない。

 それに比べて攻撃陣ははるかに期待を感じさせる。鈴木優磨とセルジーニョは非常に良いコンビネーションを見せており、セルジーニョは8月にクラブに加入して以来ACLで出場した4試合全てでゴールを挙げている。鈴木も、相手がいかに優れたDFであっても手を焼かせる存在だ。土居聖真も常に相手を脅かし、両サイドバックも自由にファイナルサードまで攻め上がることを許されている。鹿島はいつでもゴールを奪えるチームであり、今大会でゴールを奪えなかった試合は水原に敗れた前述の1試合のみだ。

 決勝に向けて、その攻撃的姿勢は持ち続けなければならない。守備に不安は抱えているとしても、あるいはその不安があるからこそ、何も恐れないポジティブなアプローチこそが、鹿島が約束の地にたどり着いて浦和から大陸王者の座を引き継ぐ可能性を最大限に高めることになるだろう。

(文:ショーン・キャロル)

【了】




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