日刊鹿島アントラーズニュース

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2021年12月28日火曜日

◆“非常事態”の鹿島に大ナタ――忘れてはいけないのは、全員の当事者意識と覚悟、同じ方向に進む一体感(サッカーダイジェスト)






今までしなかった選択をするという動きが本格化


 国内で5シーズン無冠に終わった鹿島が今オフ、復権を目指し、今までとは異なる決断を下している。

 まずは監督。退任した相馬直樹前監督の後任として、スイス人指揮官レネ・ヴァイラー氏に指揮を任せることを決めた。ブラジル色が濃く残るクラブにあって、欧州国籍を持つ指揮官を招くのは今回が初めてになる。今季まで強化責任者を務めた鈴木満フットボールダイレクター(FD)は監督選定の経緯を説明する。

「最初から欧州の監督にいこうというよりも、ブラジルで若くて、現代サッカーの勉強をしている指導者はいるか、と探した。ブラジルでも強いクラブは、アルゼンチン人、ポルトガル人が監督を務めているので、なかなか若くて日本に来てやれるような(ブラジル人)指導者がいなかった。

 どうしようかとなった時に、ポルトガル語を理解するスタッフがいて、クラブのリソースを活用しようと思い、(欧州に目を移して)ポルトガル人でリサーチした。リストアップした中で、4人くらい面談した。その中から鹿島のサッカーを理解し、アップデートさせてくれる、一番適応できると感じ、今度の監督に決まったという経緯ですね」

 今季途中で解任されたザーゴ前監督に要請する前から欧州への意識は持っていた。それでもブラジル人を優先的に人選したのは、安心して任せられる通訳がいて、慣習、国民性への理解などこれまで積み上げてきたノウハウがあり、自信と結果を得ていたから。クラブ節目の創設30周年の年に無冠に終わったことで、リソース関係なく、土台から変える。今までしなかった選択をするという動きが本格化したのだった。

 次に鈴木氏の退任である。今季限りで強化責任者であるFDから降板が決まった。クラブ主導の解任ではなく辞任という形だが、1996年から26年、強化責任者として20個のタイトルをもたらした中核が示した辞意を、最終的にクラブが受け入れたことは大きな変化だ。

 後任は、11年間鈴木氏の下で強化担当を務めていた吉岡宗重氏に決まった。鈴木氏は「自分が変わったほうが、クラブも変わることができる」と話した。コメントからは、クラブの中に「変わらなければいけない」という意識が強くあることがうかがえる。
 

これまでなかったことが鹿島で起き始めていることを実感





 クラブに貢献度の高かった選手たちを放出したこともそうだ。鹿島一筋15年の遠藤康が仙台へ移籍し、大迫勇也、柴崎岳らの海外流出を、プレー面、世代面でカバーしていた永木亮太が湘南へと旅立った。心臓役だったレオ・シルバは名古屋へ。ディフェンスラインの主軸、犬飼智也は浦和へ、町田浩樹のベルギーリーグ挑戦も濃厚だ。来季のアジア・チャンピオンズリーグ出場権を得られなかったことが影響し、多くのベテラン、主力が去っていった。これまでの緩やかな戦力入れ替えとは一線を画す手法で変化を求めていることを強く感じる。

 結果が出なければ、変わる、代えることはビジネスの世界でも一般的だ。勝負の世界ではなおさらシビアに行なわれるべきだろう。5シーズン、国内タイトルから遠ざかっていることは鹿島にとって非常事態だから、その渇望は理解できる。

 一方でこれまで大事にしてきたものが見過ごされないか、不安がないわけではない。今季のホーム最終戦、選手代表のあいさつに立った三竿健斗から発せられた言葉は、クラブ批判とも監督批判とも受け取れる内容だった。これまでなかったことが鹿島で起き始めていることを実感させられた直後だけに、すべての決断を前向きに受け止めることは、まだできない。

 奇跡のJリーグ加盟、タイミングを見て行なうチームの再編成など変化を恐れなかったから、多くの栄光を手にできた。練習の緊張感、勝利へのこだわりは継続があって手にしたものと言える。それを上手にやってこられたからこそ、鹿島が築かれた。

 いずれにしてもそこには全員の当事者意識と覚悟、クラブ全体が同じ方向に進む一体感があったことは、忘れてはいけない。「代わるが、強みは変わらない」。鹿島が今後も強くあり続けるために、大ナタを振るった。

取材・文●内田知宏(報知新聞社)




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