日刊鹿島アントラーズニュース

Ads by Google

2021年8月18日水曜日

◆【J1分析】鹿島アントラーズ対徳島ヴォルティス「荒木遼太郎とエヴェラウドの微笑」(サッカー批評)






【明治安田J1リーグ 第24節 鹿島アントラーズvs徳島ヴォルティス 2021年8月15日 18:33キックオフ】

 80分にこの日2点目を奪ったアントラーズの荒木遼太郎は、試合が再開した直後の81分、最終ラインを上手く抜け出してハットトリックとなるシュートを流し込んだ。彼はそのままサポーターのもとへと走り看板を飛び越えたものの、すぐに副審の旗を視界に捉えた。当然そのまま大喜びするわけにはいかず、再び看板を越えてフィールド内へ戻ることになった。VARのチェックも入り、結果はオフサイド。幻のハットトリックとなってしまった。

 しかしこの時、看板を再び越えて戻っていく彼は笑っていた。気分が最高に良いところで突然現実に引き戻されたことや、ほんの一瞬の差でゴールにできなかったことに対して悔しさや不満を見せるのではなく、明るい表情でポジションに戻っていったのだ。


■悔しさを笑みで覆ったもう1人の選手


 この試合では、荒木以外にも悔しさを笑みで覆った選手がいた。フォワードのエヴェラウドだ。

 チーム全体では徳島がやりたい形をことごとくさせず、後半は被シュート0。完勝という言葉が当てはまる試合となったが、エヴェラウド個人はなかなかゴール前でプレーすることができず、中盤に降りたりサイドに流れたりしてボールを受けるという形でどうにか試合に入ろうとしていた。

 しかし、ディフェンダーを背負って、あるいはサイドで何人もに囲まれてボールをコントロールしなければならなかった彼はボールロストの回数も増えてしまい、フォワードが本来望むような決定的な場面を迎えられないことに自ら拍車をかけてしまっていた。

 そんなフラストレーションが溜まる展開で後半にようやく迎えたゴール近くでの決定機を、この日の背番号9は仕留めきれなかった。

 すると、ゴールネットを揺らすことが出来なかった彼は、苛立ちを見せるわけでも自身に悪態をつくわけでもなく、笑みを浮かべて小さく残念がった。

 自身のことを「ハートでプレーするタイプ」と評する彼がこういう場面で悔しがる姿は過去に何度も見たが、この試合では違っていた。昨シーズンのJ1得点ランキングでは18ゴールで2位に名を残した助っ人は、今シーズンのリーグ戦ではここまで僅か1ゴール。毎試合結果が欲しくてたまらないはずだが、なぜか表情には今まで以上に余裕があった。

 荒木とエヴェラウド、ゴールを強く欲している彼らがゴールを決められなかった時に見せた笑み。それはこの試合の勝ち方だけがそうさせたのではなく、アントラーズの現状が表れているのだろう。

 序盤こそ低迷したものの、徐々に調子を上げて暫定ながらとうとうACL圏内の3位まで浮上してきた。試合前に6ゴールで上田綺世と並んでチーム内得点王だった荒木は、この日の2ゴールで8ゴールとし単独でチームトップとなった。

 パリ五輪世代の19歳の彼は試合後「チームが勝つことが一番。自分が決めて勝利出来ればさらにいいが、まずはチームが勝つことを優先してやっていきたい」と堂々とコメントを残している。

 荒木と上田に続くのはこの日ダメ押しゴールを奪った町田浩樹、そして町田とセンターバックコンビを組む犬飼智也の5ゴールだ。町田は試合後「セットプレーの数が多いのは、攻撃陣がシュートで終わることができているから」と感謝を口にしている。

 まさにチーム全体で支え合いながら苦しい時期を脱して順位を上げてきたアントラーズは、荒木やエヴェラウドの笑みが示すように、マイナスを引き摺らずに即座に前を向くことができる時期に入ったようだ。こうなると、個人の結果もここからどんどんついてくるに違いない。


■試合結果

鹿島アントラーズ 3-0 徳島ヴォルティス

■得点

5分 荒木遼太郎(鹿島アントラーズ)
80分 荒木遼太郎(鹿島アントラーズ)
90分 町田浩樹(鹿島アントラーズ) 


◆【J1分析】鹿島アントラーズ対徳島ヴォルティス「荒木遼太郎とエヴェラウドの微笑」(1)取り消された荒木のゴール(サッカー批評)
◆【J1分析】鹿島アントラーズ対徳島ヴォルティス「荒木遼太郎とエヴェラウドの微笑」(2)表れていた「アントラーズの現状」(サッカー批評)




Ads by Google

日刊鹿島

過去の記事