日刊鹿島アントラーズニュース

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2021年11月17日水曜日

◆「僕は大学サッカーに育てられた」駒澤大の2位躍進に深井正樹コーチの存在(ゲキサカ)






 優勝には勝ち点1届かなかったが、駒澤大がリーグ2位の好成績を残した。

 DFラインからでも前線の選手にロングボールを当てて、高さやパワーでゴールに繋げる。「とにかく前に蹴るサッカーでしょ」。そんな声が頻繁に聞かれるほど、これまでの駒大サッカーに対するイメージは良くも悪くも定着していた。

 そこにメスを入れようと奮闘しているのが深井正樹コーチだ。深井コーチは駒大のOBで、元日本代表FW巻誠一郎氏との2トップは、大学サッカー史上最高の2トップとも称えられた。卒業後は鹿島アントラーズに入団すると、その後、アルビレックス新潟、名古屋グランパス、ジェフユナイテッド千葉、V・ファーレン長崎、SC相模原でプレー。161cmの小柄な体でプロ生活14年間を過ごし、J通算300試合出場を超えるキャリアを重ねた。

 16年限りで現役を引退後は千葉で普及コーチを務めていたが、19年より駒大の総合教育研究部スポーツ・健康科学部門助教およびサッカー部コーチに就任。そして今年度よりトップチームのコーチとして練習から指導を行い、試合メンバーや作戦などはこれまで通りに秋田浩一監督が決めているというが、試合中も最前線に立って選手たちに指示を送るなど、“助監督”としての役割をこなしている。

「僕自身、大学サッカーに育てられたところがある」。大学サッカー界に帰ってきたレジェンドOBは、「あの大学4年間がなかったら僕はプロになれなかったし、今の人生もない。感謝しかないし、今度は学生たちが進んでいきたい、希望する道に導いてあげられるようにしてあげられるようにしてあげたい」と使命を感じながら日々の指導とあたっている。

 自身の経験を生かした攻撃面に大きな変革をもたらしている。導入したのは「ゴールに向かっていく方法を変える」ということ。これまでの縦に早いサッカーを踏襲しつつ、「繋ぐ」ことに意識を寄せることで、攻撃のバリエーションを増やすことを求めた。主将DF猪俣主真(4年=三浦学苑高)は「前に蹴ったあとの繋がり、オフェンスに関わってくる人数、その入り方をいろいろ教えていただいた。自分たちはそれを徹底してやること、試合で出せるようにということを意識しています」と明かす。

 もともと19年度の1、2年生の主体とするチームで出場する新人戦で日本一に輝いた世代が最終学年を迎えている今季だが、関東大学リーグの総得点46は、優勝した流通経済大と1点差の2位。得点王のFW土信田悠生(4年=高川学園高/熊本内定)の14得点を筆頭に、FW宮崎鴻(4年=前橋育英高/栃木内定)とFW荒木駿太(4年=長崎総科大附高/鳥栖内定)が11得点を決めるなど、駒大から2桁得点者が3人も生まれるなど、爆発的な攻撃力でリーグを席巻した。

 宮崎が「深井さんが来る前までは、自分にみたいなタイプはヘディングで競るだけでいいという感じだった。でも深井さんが来てからは大きな選手でも常に予測と準備を繰り返してどんどんスペースに走らないといけない」と話したように、選手たちの意識レベルから改革が行われている様子。“深井効果”について秋田監督も「地道なシュートのトレーニングを一生懸命やってくれている。荒木、宮崎、土信田。これからも絶えず努力し続けないと厳しいが、そういう意味では深井の影響は大きい」と大いにあることを認めた。

 それでも深井コーチ自身は「秋田監督がずっと築かれてきている縦に早いサッカーは今の日本サッカーに必要なものだと思っているし、それがサッカーの本来の姿だと思う」と強調する。さらに「今はどうしても後ろからボールを大切にするチームが増えているけど、後ろでボールを繋ぐことが良くて、前に早いサッカーがダメということはない」と熱弁。そして「まだまだうちの大学のサッカーはただ前に蹴っているだけだと思われるかもしれないけど、そこには僕なりに緻密に、彼らがしっかりと勝つということに対して道筋を作って上げられるように指導していきたい」という。

 使命という部分ではプロ経験者として伝えていかないといけないことも多くあると感じている。ただプロクラブの指導者には「興味はない」といい、学生の指導に人生を捧げるつもりだ。「お金じゃないつながりというか、プロはお金があるのでそこでいろいろとあるけど、そういうのと関係のないところで指導したいというのが僕の思いだった。人と人とのつながりだったり、学生には仲間とやる楽しさを学んでいってもらえればと思います」。

 今季リーグ終盤、引き分けでも優勝争いから脱落する緊張感が続いた中で、明治大、筑波大と難敵を相手にしっかりと勝ち切って優勝の可能性を最後の最後まで繋いだ。そこで見られた団結力は、自分たちのサッカーへの手ごたえもあったことだろう。「4年間でゲームに出たいとか、みんなで優勝を目指せるということが大学サッカーのいいところだと思います」。大学サッカーの醍醐味を楽しみつつ、駒大サッカー部から新たな風を吹かす。

(取材・文 児玉幸洋)




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