◆明治安田生命J1リーグ▽第13節 鹿島4―1札幌(14日・カシマスタジアム)
ホーム側スタンドからは頼もしく、反対側から見たら憎たらしい。ひと昔前、どのチームにもこんな選手が1人はいたが、組織的なプレーとフェアプレーが重視される昨今になって減ったように思う。今季ベルギーから鹿島に復帰を果たした鈴木優磨はそんな見られ方をする一人。開幕のG大阪戦でパトリックの退場にかかわって、その構図が生まれると、6得点4アシストの結果で定着した。2得点を挙げた札幌戦では派手なゴールパフォーマンスを含めて決定的になったかもしれない。
鈴木のプレーには、心理的な駆け引きを含んだアクションが見受けられる。また、味方を鼓舞する行動が多く、プレーが切れた時はいつも40番に視線が行く。たとえ細くても常にきっかけをつかもうとする姿勢は、敵味方関係なく目立つ。0―3で敗れた前節の広島戦を「本当クソみたいな試合した」と言い、「ウォーミングアップから絶対に繰り返さないという思いで、入りから相手を圧倒できた」と臨んだ札幌戦だったから、より気持ちが入っていた。
鈴木は2年半年を過ごしたベルギーで26得点を記録。複数の欧州クラブから獲得の打診を受けたが、CLに出場するクラブからのオファーはなかったという。現役中には個人で世界に届かないと感じ、幼いころからの夢だったと語る「CL出場」をあきらめた。目標を鹿島でのタイトル獲得、その先にあるチームで世界へ、に切り替えて帰国。ピッチ内外でよりチームの勝利にこだわる背景には、夢を切り替えたという重い決断がある。
鈴木が鹿島に戻ってきて変わったことがある。選手間での対話が増えた。鈴木から始まることが多いといい、鈴木満強化アドバイザーは「良い意味で、チームを動かす起爆剤になってくれている」と見ている。また、鈴木に怒声を浴びせられることが多い安西幸輝も「けんかは多々ある。あいつは鹿島のことを考えて発言している。細かいミスを減らしてくれ、と。鹿島が勝つために発言している」と言った。再建を目指す若いチームにマッチした。
地元・銚子からの来場者が多いと知り、「銚子から来ている子どもたちにゴールを見せたかった」と故郷を思う一面を持つ鈴木。記者へのあいさつ、敬語口調は崩さない人間でもある。ただ、ピッチに入れば、味方との衝突をいとわず、敵からは嫌がられる存在になる。夢や目標に向かう愚直さ。時に勘違いを生むかもしれないが、鈴木の愚直さがタイトルから遠ざかるチームを戦う集団に変えていると感じた札幌戦だった。(鹿島担当・内田知宏)
◆【番記者の視点】4発快勝の鹿島 鈴木優磨の不器用な生き方が生み出す力(報知)
「現役中には個人で世界に届かないと感じ、幼いころからの夢だったと語る"CL出場"をあきらめた。目標を鹿島でのタイトル獲得、その先にあるチームで世界へ、に切り替えて帰国」
— 日刊鹿島アントラーズニュース (@12pointers) May 15, 2022
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