日刊鹿島アントラーズニュース

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2022年11月14日月曜日

◆「あいつは動き出しが武器と浸透させられた」上田綺世が明かしたゴール量産の理由。被弾したシュミットは「嫌な選手だった」【現地発】(サッカーダイジェスト)






「その一瞬”を逃さないようにシュートと嗅覚は常にスイッチオンにしているつもり」


 11月12日に行われたSTVV対サークル・ブルージュは両チームともチャンスが少なく、無得点のまま後半半ばに入っていた。69分、セルクル・ブルージュのCFケビン・デンキ―が最終ラインからの縦パスをもらいに下りてきた。その瞬間、上田綺世が敵陣背後のスペースへ猛ダッシュし、フリーでデンキ―からのパスを受け、STVVの守護神シュミット・ダニエルとの1対1に。上田は冷静にゴール左隅にシュートを決めた。

 この上田のゴールが値千金の決勝点となって、サークル・ブルージュが1-0で勝利。両チームの順位が入れ替わり、サークル・ブルージュが9位、STVVが10位(執筆時点で暫定)でワールドカップの中断期間に入った。

「試合の中でワンチャンスを逃さないというのが自分の武器。今日の1点もそうです。ゴールにつながる“その一瞬”を逃さないように自分なりにシュートと嗅覚は常にスイッチオンにしているつもりです」

 今夏、鹿島アントラーズからクラブ・ブルージュに移籍した上田は、ベルギーリーグ17試合で7ゴールと上々の結果を残している。カップ戦を挟んで公式戦3試合連続ゴールと現在絶好調だ。

 初ゴールは第6節の対アンデルレヒト戦だった。この時期はサークル・ブルージュのサッカーが安定せず降格圏に低迷していた。上田は身体を張って空中戦で互角以上の競り合いを見せていたが、味方との距離が遠すぎて前線で孤立した状態だった。

 しかし、第10節の対ヘント戦(4-3)からミロン・ムスリッチ監督が指揮を執るとチーム状況が一気に上向き、6勝1分け1敗と勝ち癖が付いた。ムスリッチ体制になって最初の2試合こそベンチスタートだった上田だが、12節のオイペン戦で先発して今季3点目を記録すると、レギュラーの座をしっかりつかみ、直近のリーグ戦6試合で5ゴールを決めた。

 ファーサイドからの折り返しを、抜群のポジショニングでワンタッチ。DFを背負って反転シュート。右45度にボールを持ち出し、ゴール左隅に糸をひくようなシュート。マークするDFよりはるか高く飛んで、ピッチに叩きつけるヘッド――。上田のゴールの形はバリエーション豊富だ。中でも、スローインの始動で上田が敵の視界から消え、味方からのパスを受けてゴールを決めるパターンが2つあるのはユニークだ。

「もちろんデザインしています」とスローインをセットプレートみなして作り込んだ攻撃だったことを明かした。


シュミットは「悔しいですけど、ワールドカップで点を決めてくれれば良い」


 STVV戦で縦横無尽にピッチの中を走ってプレーに関与し続けている姿を見ると、開幕当初の連係の無さが嘘のようだ。

「僕の中身は変わってないです。自分が表現したいことをいま出来ているのは、自分を知ってもらったからこそ。僕はそれを頭(=開幕)からやり続けていた」

 つまり、変わったのは上田ではなく周囲ということ。ちなみに、「やり続けていた」というコメントは「動き出し」を意味する。

「自分にボールが来なかったのが、来るようになったのは、選手たちが試合のハイライトを見ていて『今のシーンでアヤセにボールを出したら(キーパーと)1対1じゃん』というシーンが毎試合のようにあって、監督もそこを指示しました。こうして『あいつ、スマートだ(賢い)な。あいつは動き出しが武器なんだ』というのを浸透させることができました。その中でポジション(2シャドー、2トップの一角など)が変わり、求められることも多少変わっていく中で、『動き出し』という武器や空中戦(の強み)をどうやって出していくか、試合ごとにやっているつもりです。味方と噛み合ってきたし、自分の特徴が伝わってきました」

「動き出しは見てわかるような武器ではない」と上田は言う。しかし、それを繰り返しやり続けることでチーム戦術に昇華し、ゴールの量産、チームの上昇につながった。こうした成功体験とともにワールドカップに挑む。

 一方、STVVのGKシュミット・ダニエルは「悔しいですけど、それで彼が弾んでワールドカップで点を決めてくれれば良いんじゃないでしょうか。やっぱり(相手チームにいて)嫌な選手でした」と上田のパフォーマンスを称えた。

 シュミット自身は今年に入ってから10か月間、好調を維持している。前節のスラン戦(2-1でSTVVの勝利)では後半アディショナルタイムにキャッチしたボールを大事に抱え込みながらピッチに伏せ、その瞬間タイムアップの笛がなって勝利が決まると最高の笑顔を見せた。

「ああいう風に1点リードで、最後自分がボールをキャッチして終わるのはキーパーをやっているなかでもっとも気持ちがいいシーンの一つなんで、必然的に笑顔が出たと思います。調子は悪くない」

 昨シーズン、前半戦のSTVVはベルギー国内で降格が確実視されていたほどチーム状態が悪く、シュミットも浮かない顔をしていた。しかし、昨季のラスト9試合は7勝2分けという快進撃。この間、シュミットは6度のクリーンシートを記録した。

  今季のSTVVは堅守で勝点を積み重ねていくタイプのチームだ。

「(STVVの守備は)堅いけれどワンチャンスでやられてしまう感じが最近あるので、ちょっともったいない。そういったところは昨季の終盤戦は修正できていた。この成功体験があるのは大きい」

 セルクル・ブルージュ戦のキックオフ前には2人の愛娘から花束を贈られ、ワールドカップのメンバーに入ったことを祝福された。

「サプライズでした。本当に知りませんでした」

 ワールドカップを目前にして「ワクワクしています」というシュミットに目標を尋ねると「やっぱり試合に出たいです」ときっぱり。

「出るからには絶対に結果を出して、日本国民から認められたいです」

取材・文●中田 徹




◆「あいつは動き出しが武器と浸透させられた」上田綺世が明かしたゴール量産の理由。被弾したシュミットは「嫌な選手だった」【現地発】(サッカーダイジェスト)





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