日刊鹿島アントラーズニュース

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2023年7月18日火曜日

◆結局、鈴木優磨の何が凄いのか? 鹿島アントラーズを2度救った男「戦術も大事だけど」【コラム】(フットボールチャンネル)



鈴木優磨


明治安田生命J1リーグ第21節、FC東京対鹿島アントラーズが16日に行われ、1-3で鹿島が勝利した。鹿島の鈴木優磨は全得点に絡む活躍で、公式戦5試合ぶりの勝利を手繰り寄せた。今季もここまで大車輪の活躍を見せているが、改めて鈴木優磨の凄さが随所に現れた90分になった。(取材・文:元川悦子)


3戦未勝利。再び停滞する鹿島アントラーズ


 横浜F・マリノス、名古屋グランパス、浦和レッズといった上位陣が軒並み敗れ、2023シーズンのJ1優勝争いはさらに混とんとしてきた。20試合を消化して勝ち点30の6位につけていた鹿島アントラーズとしては、リーグ3戦未勝利のトンネルを抜け出し、何とかして上位に食らいつきたかった。

 3~4月にかけてのリーグ4連敗で解任論が高まった指揮官だが、そこからいったんは巻き返し、危機が去ったかに見えた。しかし、5月27日のサガン鳥栖戦あたりから再び白星が遠のき始め、6月以降にリーグ戦で勝利したのは湘南ベルマーレ戦だけ。直近リーグ3戦未勝利と停滞感が色濃く感じられただけではなく、今月12日の天皇杯3回戦でヴァンフォーレ甲府戦に2年連続で負け、早々に敗退した。批判が再燃しつつあったのも確かだ。

 モヤモヤしたムードを打ち消すには、16日のFC東京戦でスッキリと勝って、中断期間に突入するしかない。鹿島は天皇杯・甲府戦から攻撃陣をガラリと入れ替え、2トップに鈴木優磨と垣田裕暉を配置。2列目に樋口雄太と仲間隼斗を起用する形で試合に挑んだ。

 とはいえ、FC東京も安部柊斗のベルギー1部・モレンベーク移籍前ラストマッチというモチベーションがある。その意気込みを示すかのように開始早々の9分、左サイドを深くえぐった松木玖生のクロスをディエゴ・オリヴェイラが巧みなトラップから先制点をゲット。鹿島は早い時間帯に1点のビハインドを背負うことになったのだ。

 実に嫌な雰囲気が漂ったが、この日の鹿島はブレなかった。そのけん引役となったのが、キャプテンマークを巻く鈴木優磨だ。


相棒が語る鈴木優磨の凄さ


「みなさんも見ても分かる通り、サッカーは戦術も大事だけど、見ているお客さんの心が震える試合っていうのは俺らの戦う気持ちや魂が載っているかどうか。やっぱり相当ストレスがたまっていたので、それをぶつけたかった」

 背番号40はチーム全体の士気を高め、先陣切って攻撃のリズムを改善していった。その流れを決定づけたのが、前半23分の同点弾。甲府戦でPKを失敗し、岩政監督と面談したという樋口の正確な左CKがゴール前に飛び、確実に仕留めたのは鈴木優磨。マークについていた松木が全く反応できないくらい打点の高い、文句なしのヘッド弾だった。

 彼にとってはリーグ6試合ぶりの今季9点目。日本人選手では14ゴールの大迫勇也に次ぐ2番目に浮上した。

「優磨は見ての通り、スゴい男。チームが窮地に立たされた時に点を取って結果まで出してくれる。僕は2度、彼に助けられた」と岩政監督は今季2度目の危機を救ってくれた教え子に心から感謝していた。

 ここからの鹿島は一気にペースアップ。鈴木優磨は要所要所でボールを受けてタメを作ったり、攻撃のリズムを変化させたりと、大半のチャンスに絡む圧巻パフォーマンスを披露する。6月24日のガンバ大阪戦から欠場していた垣田が戻ってきたこともあり、より躍動感も見て取れた。

「優磨君は足元で受けたり、技術も高いですし、さばけたりする。そういう中で自分が優磨君の分をうまく守備で走ったりだとか、裏へ走ってスペースを空けたりだとか、そういう関係を作れている。自分が生きて優磨君も生きる術がお互いに分かっている」

 鈴木優磨と同じアカデミー出身の背番号37も前向きに語っていたが、2人が組むと鹿島の攻めは俄然、迫力が出てくる。そこも大きかった。


鈴木優磨の頭脳


 前半終了間際の45分に奪った鹿島の逆転弾も2人が絡んだ。左サイドを突破した安西幸輝の鋭い折り返しに鈴木優磨が飛び込み、こぼれたところに反応した樋口が右足ボレーで合わせた瞬間、ゴール前で垣田が確実に頭で押し込んだのである。

「相手も120分間、天皇杯を戦ったチームなので、ガクンと落ちたのは戦いながら感じていた。カキが2点目を決めてくれたことが非常に破壊力があった。後半を戦っていく中で相手もメンタルや体に来ると感じたので、3点目が取れると思いました」と鈴木優磨もこれで敵を圧倒できると確信したという。

 確かに後半の鹿島はFC東京を圧倒。後半9分のディエゴ・ピトゥカの3点目も当然の流れだった。ここでキラリと光ったのが鈴木優磨の動き。仲間からパスを受け、前を向いた背番号40は左から安西が上がってくるタイミングを確実に見極め、一番いい状況でパスを供給。そこからマイナスクロスが仲間に入り、シュートのこぼれ球を拾ったピトゥカが遠目の位置から押し込んだのだ。

 鈴木優磨が微妙にタイミングをズラし、安西にボールを送ったことで相手守備陣が完全に崩れる結果になったわけだが、こういった頭を使ったプレーをこの日の彼は随所に見せていた。鈴木優磨は激しさや強度を前面に押し出すFWという印象が強いが、垣田が指摘した通り、ボールを収める技術や展開力、戦況を冷静に見極めながら変化をつける能力も兼ね備えている。その多才ぶりがFC東京戦で改めて実証された。だからこそ、岩政監督も「スゴい男」と賞賛したのだろう。

 結局、3ゴール全てに背番号40が絡み、鹿島は3-1で勝利。勝ち点を33に伸ばし、6位で中断期間に突入することになった。首位・ヴィッセル神戸とはまだ10ポイント差があり、逆転タイトルへの道は険しいが、後半戦に弾みのつく勝ち方をしたのではないか。


中断期間に残された鹿島アントラーズの課題


 課題を挙げるとすれば、攻撃面における鈴木優磨への依存度の高さだろう。チーム最大の得点源は紛れもなく彼だが、それに続く点取り屋が不在というのは不安要素に他ならない。

「それ(鈴木優磨への得点力の依存)は試合前のミーティングでも伝えました。例えば、仲間も樋口も土居(聖真)も、あるいは若手選手もそうですけど、チームのために献身的に動いてくれているのは見ての通り。ただ、やはりゴール、アシストのところで優磨に頼っている。そこが分散していかないとタイトルまでは届かない。彼らにはもう少し意識を得点に向けてもらいたいという話をしました」と指揮官も神妙な面持ちでコメントしていた。

 今後のキーマンの1人になりそうな垣田も「自分の得点を取るパターンを多くしないといけないし、もっとゴール前に入っていく迫力も増やさないといけない」と危機感を募らせた。彼ら他のアタッカー陣が鈴木優磨同等の得点力をいかに身に着けていくのか。そこが今後の重要なポイントになってくる。

 そのためにも2週間の中断期間を最大限有効活用しなければいけない。今季2度目の重大局面を乗り越えた指揮官と選手たちがここから進化を遂げられるか否かが気になる。

(取材・文:元川悦子)


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