日刊鹿島アントラーズニュース

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2024年2月29日木曜日

◆鹿島サポ怒号「ブラジルに帰れ!」 罵声浴び「非常にショックでした」…来日後の“カシマ騒動”【コラム】(FOOTBALLZONE)



オズワルド・オリヴェイラ


2007年に新指揮官として迎えられたブラジル指揮官、日本で苦難の船出に


 創設から32シーズン目に突入したJリーグの歴史のなかで、あとにも先にも3連覇を成し遂げているのは鹿島アントラーズだけだ。2007年に新指揮官として迎えられたオズワルド・オリヴェイラ監督の下、6年ぶりにJリーグを制すると、続く08年、09年も覇権を譲ることはなく、“常勝”の名をほしいままにした。

「このような素晴らしい成果を上げられたのは、何より選手たちの努力の賜物です。一時的な努力なら大半の選手ができるでしょう。しかし、努力をし続けるのは大変難しいことです。チームの勝利のために1人1人が責任を持ち、どんなことがあっても諦めず、自分の役割を全うしようと伝えてきました。それを選手たちは実践し続けてくれました」(オリヴェイラ監督)

 チーム力が拮抗し、群雄割拠と言われているJリーグのなかで、3シーズンにわたり“てっぺんの座”を明け渡さなかった事実は、やはり称賛に値するだろう。名うてのモチベーターと称されるブラジル人指揮官に率いられた鹿島は、まさに我が世の春を謳歌していた。

 だが、その船出は苦難に満ちていた。

 07年のJリーグ開幕戦は川崎フロンターレに0-1で惜敗し、第2節のガンバ大阪戦も同スコアで涙を飲んだ(連敗スタートは02年以来、2度目のこと)。中盤の要である野沢拓也が怪我のために離脱中。期待された新外国籍選手が今1つフィットせず、また、開幕2戦ともに退場者が出てしまい、10人での戦いを強いられるなど、躓きの要因が重なった。

 Jリーグと並行するナビスコカップ(現ルヴァンカップ)では公式戦初勝利を飾っていた。だが、好転のきっかけにならなかった。

 そんな最中に騒動が勃発する。

 07年4月7日、Jリーグ第5節の試合後のことだ。地元カシマスタジアムに大宮アルディージャを迎えての一戦。後半10分に相手選手が1人退場するなか、全体的に試合の主導権を握りながらも決め手を欠き、スコアレスドローに終わった。開幕2連敗のあと、これで3連続の引き分け。リーグ戦5試合を終えた時点で、未勝利のままはクラブ史上初めてのことだった。

 こうした事態に業を煮やす一部サポーターが、大宮戦を終え、スタジアムをあとにするチームバスを取り囲んだのだ。怒号が飛び交い、騒動が収まる気配はなかった。

「ブラジルに帰れ!」

 新指揮官に向けられた罵声は辛辣だった。なかには耳を疑うような暴言もあった。唯一の救いは、その日本語による非礼をオリヴェイラ監督が理解していなかったであろうことだ。

「大宮戦のあとの出来事は忘れられません。非常にショックでした。私が監督になって、鹿島は新たにスタートしたばかり。助っ人というべき外国籍選手も変わっていましたし、シーズン序盤はいろいろな面で手探り状態です。私の指導法や考え方を選手たちに理解してもらい、逆に、私が選手たち1人1人の特徴を理解するまで、やはり時間が必要だったと思います」


徐々にチーム状況は好転、終盤に破竹の9連勝を飾り頂点に


 鹿島の勝利を願い、熱量を持って選手たちを支えてくれるファンやサポーターの期待に応えられず、歯がゆい思いを募らせていた指揮官は「だからこそ——」と、その胸中を次のように打ち明けていた。

「苦しい状況をともに乗り越えようと、選手たちを励まし、あと押ししてほしかった。鹿島の勝利を願う気持ちを違う形で示してほしいと思いました」

 不穏な雰囲気に包まれた騒動から1週間後、第6節の横浜FC戦で、リーグ初白星を挙げ、ひと息ついた鹿島は、徐々にだが、チーム状態が上向く。11試合を終えた時点で、ついに貯金ができ、折り返しに入るころには3位にまで上昇。そして、終盤に破竹の9連勝を飾り、最後の最後に頂点に上り詰めた。

 シーズン中、一度も首位に立つことがなかった鹿島が劇的な逆転優勝を果たし、通算10個目のタイトルを手中にする。クラブ史上、最悪のスタートと言われた07年。躓きを躓きのままで終わらせず、飛躍の原動力に変えていった。

 Jリーグ史上初の3連覇という金字塔を打ち立てた09年12月5日は、鹿島にとってクラブの歴史と伝統を彩る記念日にほかならない。実は、その日はオリヴェイラ監督の59回目の誕生日でもあった。人智を越えたこの巡り合わせに、ただただ驚嘆するばかりではないだろうか。

(小室 功 / Isao Komuro)




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