日刊鹿島アントラーズニュース

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2018年10月8日月曜日

◆2018明治安田生命J1リーグ 第29節(オフィシャル)



クォン・スンテ Kwon Sun-tae


明治安田J1 第29節

鹿島、ホームでスコアレス。川崎Fとの大一番、悔しいドロー。

意地と気迫をみなぎらせて臨んだホームゲームは、心の底から悔しいスコアレスドローに終わった。J1第29節、川崎フロンターレ戦。リーグ首位に立つ難敵を迎え撃った大一番、我慢の戦いとなった前半は押し込まれたものの、クォン スンテが鬼迫のPKストップを見せてゴールを許さない。後半は攻撃の圧力を高めてチャンスを作り出したが、ネットを揺らすことはできなかった。

4日前、鹿島は聖地で大逆転劇を演じた。AFCチャンピオンズリーグ準決勝第1戦、水原三星戦。開始6分で2失点を喫する痛恨の展開となったが、前半のうちに1点を返して後半を迎える。守備を固める相手を攻略しきれず、1-2のまま残り10分を切った。それでも84分、出場間もない西が絶妙なラストパスを繰り出し、セルジーニョが押し込んで同点に。そしてアディショナルタイム、聖地を沸騰させる決勝弾は背番号2の右足によってもたらされた。ペナルティーエリア内の混戦から内田が放ったシュートが、サポーターが待つゴールへ。“前半90分”終了、3-2。殊勲のチームリーダーは「次につながっただけ」と言いつつ、「勝ちは大きい」と価値を噛み締めていた。

「流れや運、チャンスが来た時に掴んで離さない」。余韻が残るミックスゾーンで、内田は次なる戦いを見据えていた。4つの大会を並行して戦う日々は、秋が深まる10月以降も続いていく。勝負のシーズン終盤へ向けて「ウェイトが重い試合が増えていく。チームのために戦うことが重要」と繰り返し強調するセルジーニョは「互いの信頼関係も非常に強いので、互いの能力を信じてプレーするだけ」と、ともに戦う仲間への思いを言葉に刻んだ。信頼は背番号12にも託される。「ホームでの自分たちのパワーはわかっていた」。穏やかな口調に、確かな自信が宿っていた。



息つく間もなく、次なる戦いが待ち受けている。チームは翌朝からトレーニングを実施。ピッチに立ち続ける面々はリカバリー中心のメニューでコンディションを整え、出場機会を窺うメンバーは意欲的にボールを追った。そして試合前日、指揮官は入念なミーティングを敢行。水原三星戦の反省を活かし、キックオフと同時にギアを上げること。集中力を切らすことなく、いい守備からいい攻撃へとつなげていくこと。いつ何時も変わらない姿勢を強調し、そして取り組んだトレーニングは熱を帯びた。三竿健斗は「緊張感のある、強度の高い試合になる」と展望し、「このクラブは勝たないと評価されない」と、不退転の決意を述べていた。



水原三星戦から中3日で迎えるホームゲームへ、大岩監督が施した先発変更は2名だった。安西を右サイドバックに指名し、ボランチにはレオ シルバが復帰。その他、ゴールマウスにクォン スンテが立ちはだかり、最終ラインにはチョン スンヒョン、犬飼、山本が並ぶ。ミドルゾーンはレオとともに健斗が制圧し、攻撃陣は遠藤、安部、セルジーニョ、鈴木のユニット。直近2試合で8得点を挙げている自信を胸に、今日も虎視眈々とゴールを狙う。そしてベンチにはGKの曽ケ端、内田、町田、永木、土居、中村、金森が座る。



真夏のような暑さ、そして突き抜けるような青空。大一番の時を待つ聖地は、朝早くから緊張感と高揚感に満ちていた。アントラーズレッドが続々と足を運び、ボルテージが高まっていく。ウォーミングアップへと姿を現した選手たちへ、大音量のチームコールが注がれた。「いつだって、勝利のために」。闘志を燃やした背番号12が、その決意を聖地の空へ刻んでいった。

13時3分、戦いの火蓋が切って落とされた。立ち上がり、ボールポゼッション率を高めたのはビジターチームだった。中盤でのパス交換からサイドのスペースを使われ、鹿島は深い位置へ押し込まれてしまう。8分には左サイドからのクロスをニアサイドで逸らされ、シュートが右ポストを直撃。ペナルティーエリア内へ転がったセカンドボールはスンヒョンが確保し、大きくクリアして事なきを得た。肝を冷やした場面だったが、スコアが刻まれることはなかった





鹿島は我慢の戦いを続けた。前線で起点を作れず、敵陣深くまで進出することができない。機を見たカウンターに突破口を見出そうとしたものの、13分にセルジーニョが狙い済まして繰り出したスルーパスは、鈴木の前でカットされてしまった。以後も川崎Fのパス交換が続き、鹿島は選手間距離を保ちながら攻撃に対応。連動したプレスと激しいボディコンタクトで応戦していった。









決定機を作れないまま、20分が経過した。23分にはクーリングブレイクが設けられ、水分補給でプレー中断。まさに真夏のような過酷な気候で、大一番はさらなる緊迫感を帯びていった。30分経過後はCKのチャンスを立て続けに獲得したものの、ゴールを脅かすには至らない。鈴木やセルジーニョが体を張って起点となったが、チャレンジはなかなか結実しなかった。

すると36分、聖地が一瞬の沈黙に覆われた。ペナルティーエリア右側への突破に対応したスンヒョンが小林ともつれ合って倒れると、ホイッスルが鳴る。鹿島にとって、絶体絶命のピンチを宣告するものだった。PK、キッカーは小林。川崎Fのエースが先制点を見据えた先で、ゴールマウスに立ちはだかったのは誇り高き守護神だ。シュートが飛ぶ。スンテも跳ぶ。コースを読み切った背番号1の左手が、ボールをネットから遠ざける。スンテ、起死回生のPKストップ――。ゴールを許すことなく、我慢の時間帯をしのぎ切った。0-0。前半はスコアレスで終了した。



















ゴールを目指す後半、鹿島は立ち上がりからギアを上げて推進力を高めていった。50分にはペナルティーエリア手前から鈴木が強引な突破で打開を試み、53分には中盤でのパスワークからセルジーニョが抜け出す。相手のファウルでカウンターのチャンスを潰されてしまったが、相手DFの先手を取って、後ろ向きでの守備をさせる場面が増えていった。

そして55分、鹿島が決定機を作り出す。ペナルティーエリア手前でセルジーニョが起点を作ると、サポートに入ったレオが浮き球を供給。相手DFに跳ね返されたが、遠藤がこぼれ球を狙っていたエリア左手前、狙い済ました左足ボレーが川崎Fを襲う。枠を捉えるかと思われた瞬間、相手DFの手に当たってコースが変化。遠藤をはじめ、選手たちはハンドをアピールした。だが、PKを告げる笛は鳴らず。スコアレスのまま、試合は進行していった。





大岩監督は59分、安部に代わって土居を投入。消耗戦へと傾斜していった炎天下の後半戦、ショートカウンターの応酬となる中で、鹿島はしっかりと集中力を保ち続けた。抜群の安定感で立ちはだかったスンテ、そして気迫のエアバトルを繰り返したセンターバック陣をはじめ、全員で反撃の時を虎視眈々と狙い続けた。78分には内田、83分には永木がピッチへ。90分にはカウンターに転じた土居のドリブルで、阿部に2枚目のイエローカード。数的優位に立ち、必死にゴールを目指し続けた。だが、最後の一線を割ることはできなかった。

















0-0。心の底からこみ上げる悔しさをコールに変えて、背番号12はチームの背中を押していた。立ち止まる時間はない。次戦は3日後、みたび迎える聖地での90分だ。ルヴァンカップ準決勝第1戦、相手は横浜F・マリノス。トリコロールを迎え撃ち、ファイナルへ前進するための“前半90分”に臨む。チームは明日、午前練習を実施。ノックアウトマッチに照準を合わせ、準備を進めていく。



【この試合のトピックス】
・J1での川崎F戦がスコアレスドローに終わったのは、通算30試合目で初めてのことだった。
・途中出場の永木がJ1通算150試合出場を達成した。




監督コメント

[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
・守備はしっかりとスライドし、全体が連動して対応すること。
・ボールを奪ったらシンプルに動かし、サイドを有効に使っていこう。
・我慢の前半は想定内。ここからが勝負。後半、絶対に点を奪い全員で勝とう!


川崎フロンターレ:鬼木 達
・守は攻守の切り替えをはっきりと継続していこう。
・攻は中と外をうまく使い分けて。
・焦らずに我慢強く、自分達のサッカーをやり続けよう。


[試合後]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
90分戦うなかで、後半ギアを上げ、得点できる形が何度かあったが、崩すことができず非常に残念だ。この条件のなかで、選手たちはよく戦ってくれた。

Q. ハーフタイムに前半押し込まれることは想定内とコメントしていたが、どんなゲームプランで臨んだか?

A. この試合までの間隔、今日の気象条件、相手が川崎Fということを踏まえて、選手に「引け」と指示はしていないが、想定していた展開だった。押し込まれても、自分たちでゲームをコントロールしようと話していた。相手がやりにくそうだったのも事実。後半ギアを上げようというプランだった。セットプレーやサイドからの攻撃など、今ひとつ選手の推進力が出なかったと感じている。ただ、選手は本当に走ってくれた。次に向けてしっかり準備したい。

Q. 勝ち点1という結果をどう感じるか?

A. 絶対に勝たなくてはいけない試合だった。自分たちが逆転するために、勝ち点3を必ず取ろうと話していたので、非常に残念だ。次にすぐルヴァンカップがある。切り替えて準備したい。


川崎フロンターレ:鬼木 達
アウェイに多くのサポーターが駆けつけてくれ、感謝している。試合は勝ってもおかしくないし、負けても不思議ではない内容だった。負ける可能性があるなかで、勝ち点1を拾うことができた。ここから、また突き進んでいきたい。


選手コメント

[試合後]

【クォン スンテ】
(小林選手が)以前の試合でPKを正面に蹴ったことを知っていたので、最後まで正面にシュートが来る可能性を残しながら跳んだ。意図的に時間をかけて、相手を圧倒しようと思っていた。ホームの最大の利点である、サポーターが作ってくれた雰囲気を活かそうと考えていた。

【安西 幸輝】
スンテに救われた。前半は守ろうということで、チーム全体で統一できていた。カウンターでもチャンスがあったし、もっとゴールに直結するプレーを出せればよかった。

【山本 脩斗】
立ち上がりは相手の方が勢いがあったけど、しっかりと耐えて自分たちのペースに持っていって、やりたいサッカーができた。しっかりとした守備はできたと思うけど、最後の部分が…という試合になった。

【三竿 健斗】
みんなで我慢して、最後のところでやられなければと思っていた。プランとしては描いた通り。あとは点を取れればよかったけど、残念な結果。今は苦しい場面で我慢ができているし、どんな状況でも同じ方向に向かってやれている。

【犬飼 智也】
相手のセットプレーが多かった中で、みんなでよく我慢することができた。もう少し前から行くことができればよかったけど、そうならなくても我慢できたのはよかった。水原三星戦では立ち上がりにやられたけど、今日は立ち上がりから声をかけ合ってやれていたと思う。


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