世界最高峰を知る男が復帰1年目に実感してきた「今日に限ったことではない」。
[J1 29節] 鹿島 0-0 川崎/2018年10月7日/県立カシマサッカースタジアム
3位の鹿島アントラーズは首位の川崎フロンターレとの一戦をスコアレスドローと勝ち切れず、逆転優勝をより現実味にするための勝点3を積み上げることはできなかった。それでも連戦が続くなか、選手たちは「良い流れを継続できている」「ここからが本当の勝負。大切な試合が続く」と、この勝点1を前向きに捉えていた。
そんななか、この日途中出場した内田篤人が声を挙げた。
3万1798人と大観衆で埋まったJリーグ注目の一戦だっただけに、「にしても……ダメだよ。(何が、かは)言えないけれど」と言葉を濁しつつ、Jリーグの判定について疑問を呈した。
プレーが止まるたび、誰かが判定に首をかしげる。そんなシーンが続いた。それはこの日に限ったことではない。だからこそ、内田は指摘した。
「毎試合続いている。これだけストレスが溜まるリーグって、本当にもったいないと思うよ」
内田のその言葉がすべてだろう。
PKかどうかなど一つひとつのジャッジは、主審や審判団の判断に委ねる。ただ、Jリーグ全体として、判定基準や安定感を欠いている、選手との信頼関係を築けずにいると感じていた。
「これだけお客さんが入っていたから。試合前、『この試合、絶対に荒れるから』とは伝えていたんだけれど、笑っていたから、ダメなのかなとはちょっと感じていた。
今日の試合に限ったことではなく、リーグ全体として(レベルが)低いなと感じる。今日勝ったから、負けたから、ではなく、そこは改善しないと、本当に良くないと思う。
解説者もハッキリ言ってくれないからね。微妙な判定だって。そこらへんも厳しく言ってもらいたい」
シャルケ04、ユニオン・ベルリンと、2007年からドイツブンデスリーガで8年間戦ってきた。UEFAチャンピオンズリーグでは決勝トーナメントまで勝ち進み、ヨーロッパリーグも経験している。さらに日本代表としてアジア予選を突破し、ワールドカップの舞台にも立った。今季はAFCアジアチャンピオンズリーグでも戦っている。
世界最高峰を知る男が、Jリーグに復帰した1シーズン目に痛感した「審判のレベル」。そんな説得力のある声だからこそ、より耳を傾けるべきだろう。
試合後は両方サポーターから、審判団に向けてブーイングが鳴り響いた。もちろん審判団の主張もあるだろうし、基準に照らし合わせれば「妥当な判定」と言えるものも多いはずだ。
しかし、選手や監督など現場と審判に溝のようなものが生まれている。確かに主審が目立つ、判定が気になってしまう試合が多く、それは水を差す印象が残る。
試合全体をいかに滞りなく進めるか。選手たちが気持ちよくプレーできるか。審判が判定基準を守っているかどうかのみならず、そのあたりを含めた議論を、今後は進める時期に来ているのかもしれない。
取材・文:塚越始
text by Hajime TSUKAKOSHI
◆内田篤人が遂に判定問題に声を挙げる「これだけストレスが溜まるリーグ。本当にもったいないよ」(サカノワ)