Jリーグチームの中で唯一、今季のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)に勝ち残っている鹿島アントラーズ。8月28日(火)に、準々決勝第1戦・天津権健戦を迎える。
鹿島アントラーズは28日、アジア・チャンピオンズリーグ準々決勝第1戦・天津権健戦に臨む。舞台はカシマスタジアム。24日の明治安田J1第24節・磐田戦(1-1)から中3日での一戦となる。
対戦相手の天津権健は、ACLグループステージ2位でノックアウトステージに進出。ラウンド16では同じ中国超級リーグ所属の広州恒大と対戦し、アウェイゴール差で準々決勝に勝ち上がった。
天津権健は24日に超級リーグ第20節で貴州恒豊を1-0で下したものの、順位は7位。前線の外国籍選手の移籍等もあって、リーグ戦での成績は今ひとつ。しかし、元ブラジル代表FWアレシャンドレ・パトは健在であり、バーゼルやフィオレンティーナを指揮したポルトガル人指導者パウロ・ソウザ監督の采配含め、侮れる相手ではない。鹿島としてはホームの利を生かし、なんとしても勝利を奪いたい。
厳しい暑さの中での連戦でカギを握るのは、やはり中盤の活動量と存在感だろう。ここに来て好調を維持しているレオ・シルバ。彼の存在は大きなアドアンテージとなる。
■前半戦のパフォーマンスは自分ではない
「シーズン前半戦のようなパフォーマンスでは、それは自分ではないのだと思っています。“違いを見せなければいけない”という意識を持って試合に臨んだら、自然と自分のプレーができるようになっていました」
真夏の連戦、高温多湿をものともせずに所狭しとピッチを駆け続ける背番号4。長いリーチを活かした対人戦、鋭いタックルで相手の矛を無力化すると同時に、攻撃の起点としてチームのスイッチを入れる。8月に入り、1日のFC東京戦から6試合連続フル出場。レオ・シルバは今、己の存在価値をあらためて証明するがごとくミドルゾーンに君臨し、輝きを放っている。
「得点の場面は、理想どおりの位置にボールをコントロールすることができたので迷いなくシュートを打ちました」
8月15日、アウェイでの第22節・V ・ファーレン長崎戦。思いがけない形で先制を許し、未経験の高湿度に苦しめられていたアントラーズを救ったのは、レオのファインゴールだった。
GK曽ケ端準のキックに右サイドの遠藤康が反応して前を向く。遠藤のドリブルから、伊東幸敏のオーバーラップで攻撃が加速。ファーサイドへ飛んだクロスにペナルティーエリア左奥でボールに追いついたのがレオだった。遠藤がボールを持った瞬間には自陣中央に位置していた背番号4が、機を見た疾走でスペースを突いた。
右足を一閃、そしてサイドネットに突き刺したコントロールショット。「あの得点で、多くの人の目を覚ますことができていればと願っています」。無尽蔵のスタミナ、そして高水準の技術――。笑顔と冗談で振り返った同点弾こそ、レオ・シルバの真骨頂だった。
8月24日、第24節・ジュビロ磐田戦。後半アディショナルタイムにPKで追いつかれ、失意の結末を迎えた一戦ではあったが、そのタフネスは抜群の存在感を誇っていた。
「(鈴木)優磨はうちの得点王で、絶対の信頼を置いています。彼に預ければ、得点が決まる。そう信じてプレーしています。今日はチャンスを活かせませんでしたが、相手の守備も称えないといけない。今後の試合では点を取ってくれるはずです」
パスカットを連発し、サックスブルーの攻撃を寸断。1点リードで迎えた80分、中盤でのインターセプトから一気にスピードを上げ、敵陣を切り裂く。願いを乗せた背番号9へのラストパスはため息へと変わってしまったが、あらためてその存在感を刻み込んだプレーだった。レオは鈴木を気遣いながら、新エースの奮起を促していた。
■憧れの存在――ジーコとともに、タイトルを
「運をもたらしてくれる存在と思うので、ずっといてくれればと思います」
ピッチ上での復権。その理由を探る報道陣から必ず問われることがある。ジーコテクニカル・ディレクターの来日と、その影響について――。
流暢な日本語を操る32歳は通訳を介す前に笑顔を見せつつ、しかし多くを語ろうとはしない。「そんなに単純なことではない」という、プロフェッショナルとしての矜持ももちろんあるだろう。しかし何より、憧れの存在であるからこそ、この上ない敬意を抱いているからこそ、自身のパフォーマンス向上と直接的に結びつけることなどできない。そんな思いもまた、言葉ににじんでいる。
「このユニフォームに袖を通してきた偉大なブラジル人たちである、ジーコ、レオナルド、ジョルジーニョのように成功できるように頑張ります」
鹿島での歩みを始める前に刻み込んだ決意をあらためて思い返した時、フットボールの神様とともに勝利を目指す日々がどれほどの喜びをもたらしているか。だからこそ、今季こそ。アントラーズとともに、ジーコとともに、タイトルを――。
「ホームでアドバンテージを持って、第2戦に臨めるようにしないといけません。一つひとつの試合を大事にして、結果を出したいです」
中国の雄を聖地・カシマへ迎え撃つ前半90分。アントラーズのミドルゾーンには、王国のDNAを継承するスーパーボランチがいる。レオ シルバ、32歳。円熟のプロフェッショナルが、アジアの頂へ続く道を疾走する。
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