西大伍は故郷・北海道で堂々たるプレーを披露し、鹿島の勝利に大きく貢献してみせた。
■特別な一戦で躍動
明治安田生命J1第27節、札幌ドームで鹿島がコンサドーレ札幌を2-0と破り、暫定4位に浮上した。北海道胆振東部地震の発生後、札幌にとって初のホームゲームとなった試合だったが、5日前にACLでクラブ史上初の準決勝進出を決めた鹿島はその勢いそのまま、公式戦4連勝を飾った。
「試合に入ってしまうと、そこまで考えてはいませんでした。でもいい試合をしたいと思っていた」。故郷の札幌で90分戦い終えた西大伍はこの難しい一戦をそう振り返った。地震発生直後から、自身のツイッターで災害情報や避難情報を頻繁にリツイートした西。古巣との対戦を前にして、「震災後、初のホームゲームですからね。札幌にとっては…」と遠くを見つめながら口にしていた。
しかし自身の言葉通り、試合に入るといつも通り、西は右サイドで躍動した。5日前のACLでは内田篤人が同じ右サイドバックとして圧倒的な存在感を見せたが、西も自身の定位置でコンビを組む遠藤康とチームを攻守に牽引した。「相手の強い気持ちを感じたけど、それは自分たちもそうでした」と西が語るように、この日の鹿島は前線の鈴木優磨、土居聖真から中盤の永木亮太、レオ・シルバ、そして最終ラインの犬飼智也、チョン・スンヒョンに至るまで、球際での強さが際立った。ポゼッションしながら前へ出ようとするホームの札幌を局地戦で潰し、逆に前へ進む。「みんなで集中してプレーしていた」とゲームキャプテンの遠藤はチームメートの戦いぶりを称賛した。
■2点のリードを守り切る
前半24分、その遠藤がチームへ歓喜をもたらす。ペナルティーエリア左手前で鈴木がボールを持つと、右足で右前方へクロスを送る。ボールは相手DFの頭上を越え、背後のスペースへ。そこへ走り込んでいたのが遠藤だった。右足ダイレクトで放たれたボレーが、ニアサイドを射抜いてゴールネットを揺らす。1-0。鮮やかな連係から会心のスコアを刻み、鹿島が敵地でリードを奪った。
その後、前半はスコアが動かなかったが、後半開始直後の48分、ペナルティーエリアにドリブルで侵入した安西幸輝が得たPKを鈴木が冷静に決めた。2-0。鈴木にとっては、自己記録をさらに更新する今季10得点目。リードを広げ、鹿島がさらに優位に立った。
ホームの札幌も意地を見せ、51分、ビッグチャンスを得る。鹿島のボールロストからスルーパスを受けた都倉賢がフリーの状態で前を向く。しかし、ここは犬飼が必死のプレスバックでシュートを足に当て、コースが変わったボールをスンテが足でセーブする。そのこぼれ球をスンヒョンがカバー。このように集中力を切らさずにボールを追い続けたことで、鹿島は最後の最後までゴールを割らせなかった。
「被害の大きい地域も残っています。それを忘れないようにしたい」と言い、札幌ドームを後にした。次戦は3日後、26日に行われる天皇杯ラウンド16。広島をカシマスタジアムへ迎え撃ち、準々決勝進出を懸けて戦う。傷つきながらそれでも立ち上がる故郷のためにも、西はチームメートとともに勝利だけを目指して戦い続ける。
◆鹿島DF西大伍「いい試合をしたいと思っていた」…震災後の故郷に捧げる勝利。暫定4位へチームを牽引(GOAL)