日刊鹿島アントラーズニュース

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2016年12月2日金曜日

◆「完璧だった」アントラーズ。自らの 手の及ばぬところで誤算は起きた(Sportiva)


https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jleague_other/2016/12/01/___split_31/

 ホーム&アウェーの戦いにおいて、重要なカギを握るのが、「アウェーゴール」のルールだ。

 ホーム&アウェーの2試合を戦い、どちらかが1勝1分け、あるいは2勝となれば、その時点で勝負に決着がつく。だが、互いに1勝1敗、あるいは2分けに終わった場合には、得失点差で勝負が決まるのだが、得失点差でも並んだ場合にはアウェーゴール、すなわち、アウェーゲームで奪ったゴールが多いほうが勝ちとなる。

 例えば、Aチームが第1戦をホームで戦い、Bチームに1-0で勝利。続く第2戦、Bチームのホームで戦い、Aチームが1-2で敗れたとする。

 この場合、勝敗はともに1勝1敗。総得点2総失点2も同じなので、得失点差はともに0。ここまではまったくの互角なのだが、アウェーゴールがAチームには1点あるのに対し、Bチームは0点。つまり、アウェーゴールの差によって、この対戦はAチームの勝ちとなるのだ。

 サッカーの世界では、一般的なホーム&アウェーの戦い。そこでは、勝敗ももちろん重要だが、アウェーゲームでゴールを奪えるか否かが、非常に大きな価値を持つのである。

 J1の年間王者を決めるJリーグチャンピオンシップ決勝の第1戦。鹿島アントラーズのホーム、カシマサッカースタジアムで行なわれた試合は、J1年間勝ち点1位の浦和レッズが、同3位の鹿島に1-0で勝利した。

 少々前置きが長くなったが、だからこそ、鹿島にとっては、単なる1敗という以上に痛い敗戦だった。

 ホームで戦う鹿島にしてみれば、先勝して第2戦に臨めるのがベスト。だが、先に述べた通り、まずは浦和にアウェーゴールを許さないことが重要だった。鹿島のセンターバック、DFファン・ソッコは「ホームではゼロに抑えたかったが、それができずに残念だった」と語る。

 ファン・ソッコとセンターバックのコンビを組むDF昌子源もまた、「ゼロ(無失点)が重要な意味を持つ試合。アウェーゴール(の価値)を考えると、うちがゼロにするのは大きかった」と悔やむ。



 鹿島はこの試合、総じてうまく守っていた。昌子が「みんなが浦和の戦い方をわかっていることが重要だった」と話したように、浦和の攻撃をよく分析していた。

 浦和の攻撃の組み立て役であるMF柏木陽介には、MF永木亮太がマンツーマンに近い形で張りつく。当の柏木は「永木は前に強い。かなり激しくこられたので、きれいに崩そうとするより、まずは球際で負けないことを考えた」と話す。

 鹿島が浦和のパスワークを寸断すべく、激しく中盤でボールを奪い合った試合は、その結果、両チームともにシュートチャンスがほとんど生まれなかった。前半に関して言えば、シュート数は浦和が2、鹿島はゼロ。「すごく堅い試合だった」(昌子)ゆえんである。

「第1戦はホームゲームだったので、最低でも相手に得点を奪われない形にしたかった」

 試合後、鹿島の石井正忠監督もそう語っていたが、試合展開次第では「第1戦は0-0の引き分けでもOK。勝負は埼玉スタジアムでの第2戦」という思いもあっただろう。

 ところが、昌子が「PK以外は完璧だった。そんなにやられる雰囲気はなかった」と話したように、思わぬところに落とし穴が待ち受けていた。

 後半56分、右サイドでパスを受けた柏木がゴール前にクロスを入れると、ボールに向かって動き出した浦和のFW興梠慎三と、後ろから追いかけた鹿島のDF西大伍が接触。つまずくように興梠が倒れた瞬間、レフリーの笛が鳴った。

 このファールによって得たPKを浦和のキャプテン、MF阿部勇樹が冷静に決めて先制。鹿島はあまりに痛いアウェーゴールを与えてしまったのである。

 昌子が言うように、鹿島がやられる雰囲気はまったくと言っていいほどなかった。ファン・ソッコは「前半は意図した通り、相手の攻撃をコントロールしてインターセプトを狙うことができたが、後半は少し体力が落ちて、前半ほどタイトにいけなくなった」と振り返ったが、とはいえ、致命的な破たんをきたすほどに、鹿島の選手たちの動きが悪くなっていたわけではない。

 率直に言って、PKのジャッジはかなり際どいものだった。

 まったくのミスジャッジとは言えないまでも、一般的な判定基準で言えば、ノーファールでも何ら不思議はないプレーである。少なくとも鹿島側に立てば、納得し難いプレーであることは間違いない。

 さらに言うなら、鹿島が承服できないジャッジは、これ以外にも数多くあったはずだ。鹿島はこの日のレフリーと非常に相性が悪かった。判定の正誤はともかく、鹿島の選手がボールを奪いにいくたびに笛を吹かれ、守備から攻撃につなげるという意味では、なかなかリズムに乗れなかったのは確かだ。

 鹿島にしてみれば、手を尽くしたものの、自分たちの手の及ばないところで誤算が起きた、というところだろう。

 いずれにしても、第1戦を落とした鹿島は、第2戦を2点以上取ったうえで勝利することが逆転優勝への条件となった(鹿島が1-0で勝利すると、勝敗、得失点差、アウェーゴールのすべてで両チームが並ぶが、その場合はJ1年間勝ち点1位の浦和が優勝となる)。第1戦のように手堅く試合を進めているだけでは、勝利を手繰り寄せることはできない。

 しかしながら、鹿島は自ら試合を動かすことを決して得意とはしていない。自分が先に動くのではなく、相手が先に動かざるをえない状況を作って、そのスキを突く。そんな憎らしいまでの老獪さが、鹿島の持ち味である。

 むしろ第2戦では、浦和が点を取りに出てこざるをえない状況を作りたかったはずだが、実際はまったく逆の展開になってしまった。それほどまでに、ホームでの1失点が鹿島に重くのしかかる。

 まさかの誤算。無類の勝負強さを誇る常勝軍団が、苦しい立場に立たされた。

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