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日本サッカー協会とキリンが東日本大震災からの復興応援として活動している「JFA・キリン スマイルフィールド」。子どもたちにサッカーを通じて笑顔になってもらいたいという想いから、岩手・宮城・福島の3県の小学校を対象にサッカー教室を各地で開催している。
東日本大震災から5年経ったいま、「JFA・キリン スマイルフィールド」でコーチを勤める元日本代表の名手たちに、復興への想いを聞くシリーズ企画。最終回は、現役時代は強靭なフィジカルで鉄壁のディフェンスを誇った秋田豊氏だ。
続けないといけない
日本サッカーの“未来”
――最初に「JFA・キリン スマイルフィールド」の話を受けたときは、どんなお気持ちでしたか?
「東日本大震災があって、何かできないかと思っていたときに、キリン スマイルフィールドを始めるということを聞いて、すぐに行きたいと手を挙げました。キリン スマイルフィールドの以前にも東北にお邪魔したことはあるんですけど、最初に行ったときは言葉もなかった状況で、自分ができることがあれば何でもやりたいという気持ちがあったんです」
――コーチとして参加されるうえで、どんなことを心がけていますか?
「第一に子どもたちを笑顔にすること。終わったときに『楽しかった! またやろうね!』と言ってくれたらいいなと思っています。最初は自分たちにできるのか、何をしたら喜んでくれるのか、どう接するべきなのか、と不安でしたが、さまざまな苦労や苦しみを味わった子どもたちの笑顔を見ることができて、声をかけていただいたキリンさんにも感謝しています。中には『何でこんなことをしないといけないんだろう』という表情をしている子もいるんですけど、そういう子にこそ、優しく接するのでなく、普通にコミュニケーションを取ることによって心を開いてくれる。こちらが真摯に全力でやれば応えてくれるのが、嬉しいんです。いまの小学生は僕が日本代表でプレーしていたときには生まれていなかった。そんな彼らに会ってから2時間で、自分のことを分かってもらうことがすごく重要なので、短い時間で勝負だと思っています」
――これまで活動されてきた中で、特に印象に残っているエピソードを教えてください。
「遠野北小学校ですね。サッカースクールが終わったあとに、体育館で歌を歌ってくれたんです。みんなで準備してくれていたみたいで、舞台に上がって……。泣かされましたね。もうどうしようっていうくらい(笑)。僕らが与えないといけないと思っていたのに、プレゼントをされて本当に感動しました」
――秋田さんが携われて5年目となる「JFA・キリン スマイルフィールド」についての想いをお聞かせください。
「絶対にやり続けないといけないと感じています。岩手県、宮城県、福島県のすべての小学校を回るのはお金もかかりますし、大変なことですけど、いま終わったらダメだと思います。苦しんでいる子どもたちがいると思うので、1人でも多く笑顔にして、前を向いて一歩踏み出せるようにしていきたいです」
――元日本代表のコーチと一緒にサッカーをして、サッカーの道具も寄付している素晴らしい活動だと思います。この活動は日本サッカー界にとっても意義があるとお考えですか?
「未来ですね。もともとサッカーをやっていた子どもたちは『プロってこんなにすごいんだ』という基準ができたでしょうし、逆に初めてサッカーをやった子どもたちはサッカーを始めるきっかけになったはず。キリン スマイルフィールドを続けることによって、この企画で育った子どもがJリーガーになって、日本代表になる日もくるんじゃないでしょうか。僕が指導の中で考えているのは、1時間半、2時間の間にどれだけ子どもたちが無駄なく楽しめるか。考えながら動き続けてもらうんですけど、動きすぎても疲れて楽しくない。どのぐらいやるのが一番楽しいのか、グラウンドの大きさや環境によって変える。そこが一番難しいんですけど、一番楽しいところでもあるんです」
(取材・文 奥山典幸)