血を繋げる。 勝利の本質を知る、アントラーズの神髄 [ 鈴木満 ]
明治安田生命J1リーグ第28節 鹿島1-0C大阪 ( 2019年10月6日 ヤンマー )
常勝軍団がついに首位に立った。鹿島は敵地でC大阪を1―0で撃破。攻め込まれる時間が多かったが、前半6分にCKからDF犬飼智也(26)が頭で決めた虎の子の1点を、粘り強い守備で守り切った。前節はFC東京の試合前日に「暫定」で首位に立ったが、今回は最大「9」まで開いた勝ち点差を「正式」に上回り、3季ぶりのVを視界に捉えた。
ベンチは総立ちだった。左腿裏を痛めて担架で退いたMFセルジーニョまで、前のめりに立っていた。首位奪取を告げる終了の笛。チーム一体となった歓喜の輪が生まれた。得点は前半6分、左CKをDF町田が頭で折り返したボールを、DF犬飼が頭で決めた1点だけ。「苦しいゲームを全員でものにできたので次につながった。チームのために犠牲になるプレーがみんなできている」と犬飼はうなずいた。
試合直前にアクシデントが襲った。先発予定で大阪入りしたボランチの小泉が体調不良で欠場。急きょ左MFの白崎が回り、左MFに中村が入った。白崎がボランチで先発するのは初。即興力が試された。クラブの“お家芸”とも言えるピッチでの対応力。CKから先制した7分後の前半13分に一端が垣間見えた。縦パスから裏に抜けた相手MF柿谷に決定機をつくられると、MF永木、DF伊東、FW伊藤らが集結。柿谷へのマークの付き方をその場で変えた。
ハーフタイムにはさらにマークを修正。後半13分で柿谷を交代に追い込むと、大半の時間を攻め込まれながら後半はシュート1本に抑え込んだ。伊藤の言葉を借りれば「楽しく守備ができていた」。クラブW杯で2位に入った16年のようなしたたかさが生まれ始めている。
今季初の首位。だが、犬飼は「今、首位にいるかとか、2位にいるかとかは関係ない。(シーズンが)終わって上にいることが、このチームの使命」と強調した。前回首位だった17年は最終節で2位に陥落。その翌年に鹿島に加入したセンターバックの言葉に、受け継がれてきた伝統が宿っていた。