ナイキ(NIKE) 2020 鹿島アントラーズ 半袖 GX アカデミートップ C...
超高校級ストライカーとして鳴り物入りで鹿島アントラーズに新加入した染野唯月が、今、もっとも注目しているFWは「フィルミーノ」なのだそうだ。
「シュートもドリブルもパスもすべてがうまい。フィルミーノのプレーを見て、自分なりにいろいろ参考にしている」と、目を輝かせる。
当代随一の高速カウンターを武器に2018-19シーズンの欧州チャンピオンズリーグを制したリバプール(イングランド)の不動の9番で、ブラジル代表でもあるフィルミーノは現在、28歳。サッカー選手として、まさに全盛期を迎えようとしている万能ストライカーだ。
俗に“偽9番”と称される。
最前線に張るだけではなく、ときには中盤に下がってきたり、サイドに流れたりしながら攻撃を組み立てる。その変幻自在のプレースタイルが「9番のようで、9番ではない」といった意味合いからつけられた。
英国発の、ある記事のなかに次のような一文を見つけることができる。
リバプールの攻撃のほとんどはフィルミーノのドリフトの結果として生まれている――。
ドリフトとは「流れ漂う」といった意味だが、なるほど、うまいことをいうなと思った。
フィルミーノのポジショニングはとらえどころがなく、対峙する相手DFからすれば、実に厄介な存在だろう。センターフォワードながら、ピッチ上で、自由にポジションを変える染野も同タイプといえるかもしれない。
動き方だけではなく、ボールの置きどころや切り返しのフォーム、右利きだけど、左足も器用に使いこなす両選手。どことなく、似ているなと感じるのではないか。
フィルミーノと染野の共通点はまだある。たとえば、かつてボランチでプレーしていたことだ。
子どものころにFWや攻撃的MFをやっていた選手が年齢が上がるに従って、ボランチやCB、サイドバックに下がっていくのがサッカー界の“あるある”。後ろのポジションから前に上がっていくのは珍しいケースなのだ。
フィルミーノはよく守備をする。前線でのチェイシングはもちろん、プレスバックもいとわない。その献身性がリバプールにおける自身の存在価値をいっそう高めている理由でもある。
FWにどこまで守備を求めるか。監督の考え方によるところが大きいだろうが、フィルミーノのように攻撃を組み立て、周りのよさを引き出し、自らもゴールを重ね、守備にもエネルギーを注ぐ9番は重宝するに決まっている。
プロのキャリアをスタートさせたばかりの染野が今、課題のひとつに挙げているのが「守備」だ。
「個人的に守備の部分がまだまだ足りないので、どこまでレベルアップできるか、意識を高くもって取り組んでいる。ただ、守備はチームみんなでイメージを合わせながらやらなければ意味がない。お互いに声を掛け合うのがすごく大事だと思う」
個による守備と組織による守備。この兼ね合いを踏まえつつ、モダンなFWとしての完成形を目指す。
19歳のとき、ブラジルからドイツに渡ったフィルミーノは、その後、リバプールに移籍し、5シーズン目を迎え、世界有数のFWへと進化を遂げた。
フィルミーノと染野はちょうど10歳違いだが、数年後、こんなふうに評される日が来るのではないか、と思っている。
鹿島の攻撃のほとんどは染野のドリフトの結果として生まれている――。
(文=小室功)