日刊鹿島アントラーズニュース

Ads by Google

2022年11月13日日曜日

◆平畠啓史が選ぶ、J1年間“至極の11人”|鈴木優磨には心の馬力を感じた。西村拓真はマグロ並みの推進力と運動量(サッカーダイジェスト)






脱皮、羽化を繰り返し、力強い選手になった


 Jリーグアウォーズも終わり、MVPやベストイレブンが発表されたが、ここではそのベストイレブンには入らなかったものの、今シーズンの活躍が印象的だった選手をピックアップしてご紹介する。

 GKは上福元直人(京都)。ゴールキーパー=守護神ではない。神にもすがりたくなるような危機的なシーンでチームを救うセーブを見せるゴールキーパーこそ、守護神と呼ばれるにふさわしい。

 まさに上福元は「神」、「守護神」と呼ばれるような活躍を幾度となく披露。研ぎ澄まされた集中力でいかなるシュートやディフレクションにも反応するだけでなく、ディフェンスラインの背後もしっかりとケア。

 アグレッシブな戦いを見せる京都と上福元のプレースタイルの親和性は高く、インパクト十分なパフォーマンスだった。

 左サイドバックには永戸勝也(横浜)。左足のクロスが素晴らしいのはもちろんのこと、エウベルがアウトサイドでボールを受けた時のインサイドのランニングが、F・マリノスの左サイドの攻撃に躍動感を生み出した。

 三丸拡(柏)や山中亮輔(C大阪)など左サイドバックやワイドのポジションから、左足で高精度のクロスを送れる選手は魅力的だった。

 センターバックにはアレクサンダー・ショルツ(浦和)。対人の強さだけでなく、持ち運ぶドリブルも素晴らしい。プレーにムラがなく、常に安定したパフォーマンスを見せる。

 キックの精度も高くPKで5得点。今シーズン32試合出場で6得点は見事な活躍だが、さらにイエローカードを一度ももらっていない。今シーズンの記憶に残しておきたいディフェンダーの1人だ。

 もう1人は荒木隼人(広島)。アグレッシブで楽しいサッカーを披露した広島を後方から支えた。競り合いに強く、外国籍のフォワードとも対等に戦える。プレーは安定の域に入って、目立たないくらいになっているが、常に好パフォーマンスを継続している。

 普段、右サイドバックではプレーしないが、サイドでの活躍が顕著だった岩崎悠人(鳥栖)を右サイドバックの位置に。スピードに乗ったドリブルで仕掛けるシーンは何度見ても気持ちいい。

 その仕掛けに迷いがないので、見ている側の期待感が膨らむ。アグレッシブに仕掛け続けた岩崎の今シーズンのプレーも、しっかり記憶に残しておきたい。

 ボランチには野津田岳人(広島)。1人の選手が様々な経験を経て変化していくプロセスを見ることも、長くサッカーを見る楽しみのひとつ。野津田は脱皮、羽化を繰り返し、ゲームを仕切り、泥臭く献身的にプレーする力強い選手になった。広島の中盤に堂々君臨した野津田のプレーぶりに頼もしさを感じた。

 ボランチのもう1人は渡辺皓太(横浜)。動くことを止めず、常に攻守に関わる姿勢は見事。ただ繋ぐだけなら怖さはないが、攻撃的な姿勢があるので、プレーに怖さがある。

 守備にも強度があり、寄せも鋭い。攻撃的なF・マリノスにあって目立たないかもしれないが、貢献度は非常に高いものだった。


ゴールや勝利に対する強い思いを表現し続けた


 攻撃的な中盤の右にはマテウス・サヴィオ(柏)。技術の高さが際立っているにもかかわらず、「ドヤ!」的な表情もしないし、自己中心的なプレーもしない。組織の中で自分のプレーを最大限に活かす。

 そして、彼のところにボールが行くと何かが生まれる。現代サッカーの中盤の選手に必要な要素を持っているのがM・サヴィオ。素晴らしいパフォーマンスだった。

 左には満田誠(広島)。スピードに乗ったプレーは痛快で、シュートも素晴らしい。大卒ルーキーであることを忘れてしまうような堂々のパフォーマンス。

 年齢的にベストヤングプレーヤーには選ばれなかったが、最もインパクトを残した若い選手のうちの1人。29試合出場で9ゴールと数字を残したが、数字以上に満田のプレーは記憶に残った。

 トップ下には西村拓真(横浜)。もともとフォワードの選手だが、トップ下のポジションを与えられると、水を得た魚のようなプレーぶり。マグロ並みの推進力と運動量で前線にスピード感や迫力を生み出した。

 独特の感性の動き出しやシュートは相手の脅威に。F・マリノスの攻撃陣は多士済々。違いを生み出す外国籍選手、特長を持った日本人選手などタレントが多くいるなかでも、西村の存在感は際立っていた。

 トップは鈴木優磨(鹿島)。鹿島復帰1年目。前線での存在感は別格で、ゴールや勝利に対する強い思いをピッチで表現し続けた。

 鈴木のプレーには馬力を感じるが、それ以上に心の馬力を感じる。ゴールを奪いたい。チームを勝たせたい。クラブにタイトルをもたらせたい。思いの強さが心の馬力になり、迫力あるプレーに繋がっているように思えた。

 チームの調子もあり、ゴールという目に見える数字は前半戦に偏った印象があるので、ベストイレブンに選ばれることはなかったが、今シーズンの存在感は十分。今シーズンのMIP、最も印象的な選手は鈴木。獰猛なプレーぶりに心を揺さぶられました。

取材・文●平畠啓史




◆平畠啓史が選ぶ、J1年間“至極の11人”|鈴木優磨には心の馬力を感じた。西村拓真はマグロ並みの推進力と運動量(サッカーダイジェスト)





Ads by Google

日刊鹿島

過去の記事