日刊鹿島アントラーズニュース

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2016年5月4日水曜日

◆チームの中心軸。鹿島のサッカーは小笠原満男を見ていればわかる(Sportiva)


http://sportiva.shueisha.co.jp/clm/jfootball/2016/05/03/post_1123/

 いよいよリオデジャネイロ五輪開幕まで、あと3カ月ほどに迫った。4月には組み合わせも決まり、これからはメンバー選考の行方に注目が集まる。

 要するに、23歳以下の若い選手に目が向きがちだ。

 だが、今季のJ1を見ていると、ベテランが非常に元気だ。好調なチームを支える、彼らの充実ぶりが目につく。

 そんな選手のひとりが、鹿島アントラーズの小笠原満男である。

地味なプレーを繰り返しながらも、チームの重要な役割を担っている小笠原満男

 現在、J1ファーストステージで3位につける鹿島の持ち味は、高い位置からの果敢なディフェンス。中盤から前で積極的にプレスを仕掛け、ボールを奪って攻め、奪われてもまたすぐに高い位置から奪い返しにいく。そうした激しいプレーの連続が鹿島の強さの源だ。

 4月30日に行なわれたJ1ファーストステージ第9節の大宮アルディージャ戦後には、鹿島の石井正忠監督がこんなことを話している。

「立ち上がりから、自分たちの好守にわたってアグレッシブな形が出せた。前からプレッシャーをかけて相手ボールを奪う。奪ったあとはいろんな形でゴールに向かうというところは、90分間出せたと思う」

 指揮官が語る「前からのプレッシャー」の中心にいたのが、小笠原だった。キャプテンマークを左腕に巻く背番号40は、相手の攻撃の芽を摘むという点で抜群の冴えを見せた。

 攻撃から守備への切り替えで重要なのは、1本目のパスをいかに防ぐか、だ。1本目のパスをうまくフリーの選手に出されてしまうと、一気にカウンターにつなげられる危険性がある。裏を返すと、最初のパスを出させることなく囲い込んでしまえば、すぐに奪い返すことができる。

 そうした原則がある中、ボールを奪った大宮の選手がパスをつなごうとしても、すぐにプレスをかけにいく。あるいは、パスが出そうな選手に寄せていく。小笠原はそれらの対応の速さで群を抜いていた。

 しかも対応が速いだけでなく、狙いを定めたボールに対しては激しく体を寄せていく強さもあった。一見地味にも見えるこうした役割を、90分間集中力を切らすことなく、小笠原は忠実に果たし続けた。

 実際、小笠原のボール奪取からチャンスが生まれたシーンは何度もあった。あるいは、パスが出そうな選手のところへ小笠原が素早く寄せたために、相手選手がパスを出せなくなったシーンもあった。特に大宮の攻撃の中心であるMF家長昭博から何度もボールを奪い取ったことは、相手の戦意を削ぐという点でも効果的だった。

 また、メンタル的な部分でチームを支えられるのも、こうしたベテラン選手ならでは、だろう。

 大宮戦でも主審の判定にイライラを募らせていたMFカイオが、執拗に主審に対して文句を言う場面があった。そんなとき、22歳の血気盛んなブラジル人アタッカーに歩み寄り、なだめていたのは小笠原だった。もし小笠原の配慮がなければ、カイオには間違いなくイエローカードが出ていたはずだ。

 こうした行動も含め、試合の趨勢(すうせい)を決めていたのは、小笠原の「機を見るに敏」なプレーだったと言ってもいい。

 鹿島は20代前半の若い選手が多い。彼らは高い能力を備える一方で、経験豊富とは言い難い。それだけにひとつリズムが狂うと、全体のバランスを崩してしまう危険性をはらむ。

 裏を返せば、小笠原のような選手が中心軸となって定まってさえいれば、あとは精巧なコマのごとく、いつまでもチーム全体が高速で回り続けるということだ。鹿島が見せる「攻守にわたってアグレッシブな形」の中心にいるのが、小笠原であることは間違いない。

 大宮戦での鹿島は数多くのチャンスを生かせず、スコアレスドローに終わった。前節の柏レイソル戦(0-2)に続いて勝利を逃し、首位・浦和レッズとの勝ち点差を5に広げられた。

“鹿島ゴマ”はわずかに回転速度を緩めてしまっているのかもしれないが、しかし、決して中心軸はブレていない。背番号40の動きを追っていれば、鹿島がどんな戦い方をしようとしているのかが見えてくるとさえ言える。

 鹿島の強さの秘密を知りたければ、小笠原のプレーを見よ、ということだ。

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