日刊鹿島アントラーズニュース
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2016年12月24日土曜日
◆新時代の到来を感じさせた鹿島の健闘 南米クラブはプレーと運営面の改革が必須(Sportsnavi)
http://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201612230001-spnavi?p=1
セルヒオ・レビンスキー/Sergio Levinsky
南米王者のアトレティコ・ナシオナルが敗れる波乱
今年もクラブワールドカップ(W杯)が開幕する前の時点では、チャンピオンズリーグ(CL)を制したヨーロッパ王者のレアル・マドリー、コパ・リベルタドーレス覇者の南米代表アトレティコ・ナシオナルが当然のごとく決勝で対戦するものだと、誰もが考えていた。
1960年に前身のインターコンチネンタルカップが始まった時から、クラブ世界一の座はほぼ常に両大陸の代表によって争われてきた。
ヨーロッパ王者のレアル・マドリーがウルグアイのペニャロールとインターコンチネンタルカップで対戦した当時から、2005年に現行のクラブW杯に形が変わって現在に至るまで(05年はクラブ世界選手権と呼ばれていた)、クラブ世界一を決めるファイナルは計56回(75年、78年は大会が中止)行われてきた。そして南米と欧州のチャンピオン同士の対戦フォーマットだった時代を除くと、13回のうち9回はヨーロッパ王者と南米王者によって争われている。
ただ南米王者が過去10年で3度目も決勝進出を逃していることについては、偶然として片付けることはできない。今大会もコパ・リベルタドーレス優勝に続き、コパ・スダメリカーナでも決勝に進出していたアトレティコ・ナシオナルが開催国代表の鹿島アントラーズに準決勝で敗れる波乱があった。
10年大会にはコンゴ民主共和国のマゼンベがブラジルのインテルナシオナルを下し、13年大会ではモロッコのラジャ・カサブランカがやはりブラジルのアトレチコ・ミネイロを破り、決勝に勝ち上がった前例がある。だが、アジアのクラブが決勝に進出したのは今回が史上初のことだ。
レアル・マドリーと互角に渡り合った鹿島
とはいえ、日本のクラブの躍進、南米クラブの失態のいずれについても、偶然の産物ではないことを強調したい。
鹿島について言えば、まず準決勝で3点差をつけて快勝した相手が、16年を通して結果のみならず内容的にも南米大陸をリードしてきた強豪クラブであることだ。さらに決勝では世界最高レベルの戦力を有し、あらゆるコンペティションで優勝候補の筆頭に挙げられるレアル・マドリーを相手に、日本の選手たちが技術、戦術とも飛躍的に成長したことを証明してみせた。
鹿島のプレーは非常にレベルが高く、レアル・マドリーと互角に渡り合うほどだった。もちろん相手にゲームを支配された時間帯はあったし、鋭いカウンターにさらされもした。一方で、彼らも相手ゴールに何度も迫り、ゴールチャンスを作り出した。その結果、レアル・マドリーとコスタリカの守護神ケイラー・ナバスがゲームの主役になることなど、戦前には想像し得なかったことだ。
一時的ながらスコアをひっくり返す2ゴールを決めた柴崎岳も素晴らしかったが、ゴールキーパーの曽ヶ端準も鮮やかな好守を見せた。彼らの活躍はセルヒオ・ラモスやマルセロ、ルカ・モドリッチ、トニ・クロース、カリム・ベンゼマ、そして最多4ゴールを挙げ(うち3ゴールは決勝で決めた)大会MVPに選ばれたクリスティアーノ・ロナウドら、世界的スターたちと比べても遜色のないものだった。
レアル・マドリーは延長戦に入るまで自力の差を見せつけることができなかった。長時間のハードワークにより、世界中のあらゆるチームが多大な消耗を強いられる時間帯になってようやく、圧倒的な個の力を駆使して勝利を手にすることができたのだ。そこまでライバルを苦しめた鹿島の健闘は大きなサプライズであり、フットボール界の勢力図を塗り替える新時代の到来を感じさせるものだった。
大幅なメンバー入れ替えを強いられる南米勢
一方、南米側の視点から今大会を振り返ると、今後もクラブ世界一の座を争いたいのであれば、南米フットボール界の現状に対する広範な見直しが必須となる。プレー内容もそうだが、何より必要なのは運営面での改革だ。
かつてのインターコンチネンタルカップや初期のクラブW杯は、南米のクラブにとって最優先すべき大きな目標であり、タイトル獲得の意欲はヨーロッパのライバルを大きく上回るものだった。それが近年は過密化が進む試合日程や各クラブの経済的な状況により、そうもいかなくなってきている。
コパ・リベルタドーレスは1年の半ばに決勝を迎える。ヨーロッパではその直後に夏の移籍市場が始まり、選手の輸出国である南米各国では多数の優秀な選手が海を渡っていく。そのため南米王者のクラブはコパ・リベルタドーレス優勝時のチームを12月まで維持することが難しく、主力選手を引き抜かれた後に穴埋めの補強を行い、大幅にメンバーを入れ替えた状態でクラブW杯を迎えることになる。
対照的に、ヨーロッパ王者となるようなビッグクラブは、CL優勝時のチームをさらに強化して年末の大会を迎えることができる。その差はあまりにも大きく、04年ごろから目に見える形で表れ始め、今や南米王者は決勝に勝ち進むことすらできなくなってしまった。
実験的に導入されたビデオ判定が議論の的に
今大会では実験的に導入されたビデオ判定も議論の的となった。初の適用例となったのは、鹿島対アトレティコ・ナシオナルによる準決勝でハンガリー人のビクトル・カッサイ主審がビデオを確認した末、鹿島にPKを与えた判定だ。このケースはオルランド・ベリオのファウルを受けた西大伍がオフサイドポジションにいたとの指摘もあり、大いに問題視された。
その是非は別として、鹿島の先制点となったPKが確定するまでの手順は見直す必要がある。ワンプレーの判定にあれほど時間をかけていては、観客に混乱をもたらすばかりだ。それにビデオレフェリーの意見を主審がどこまで取り入れるべきかも、明確な規定を作る必要がある。今回のケースで言えば、ビデオレフェリーは西がファウルを受けたかどうかの判断しかせず、彼がオフサイドポジションにいたかどうかは考慮していなかった。彼がオフサイドであれば、PKを与えるファウルが生じる前にプレーが途切れていたのだから。
21世紀も17年目を迎える。他の競技では何年も前から人的ミスを減らすべく最新技術が活用されており、フットボールもテクノロジーの導入自体は歓迎すべきである。ただ世界で最も多くの競技者を抱えるこの競技においては、さまざまなバックグラウンドを考慮することも忘れてはならない。
微妙なプレーが生じるたび、時間をかけてビデオを確認するのは現実的に不可能だ。特に感情的なラテン気質の地域では、判定が確定するまでの空白の時間が長引けば、ろくなことは起こらないだろう。レフェリーはあらゆる形で圧力をかけられるに違いない。1つアイデアを挙げるとすれば、両チームのキャプテンが主審に同行し、共にリプレイ映像を確認することだ。
テクノロジーの導入は重要な進歩をもたらす可能性を秘めている。だが、今回のような初期段階のテストは、クラブW杯ほど世界的に大きな重要性を持たない、しかし未来につながる経験となるU−17の大会などで行われるべきだったのではないだろうか。
(翻訳:工藤拓)
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