今季、鹿島アントラーズからツエーゲン金沢に完全移籍したMF梅鉢貴秀は、持ち前のボール奪取力とリーダーシップを活かして開幕戦(愛媛FC戦)から先発フル出場を続けていたが、第8節・ジェフ千葉戦で負傷してしまい、チームを離脱した。第14節・松本山雅戦に途中出場し、一度は戦列復帰を果たすも決して万全ではなかった。その後、再び別調整を経てチームに合流。ここまで慎重に状態を整えてきた。
梅鉢はピッチに立つと率先してコーチングの声を響かせ、練習場の空気を変える。本人は「やかましいですからね」と笑うが、「コーチングで解決する問題は多い。求めていることは、伝えなければ伝わらないこともある。試合をやっていく中で、それぞれがこの場面はこう思っているんだなとか、コミュニケーション1つでもっと改善する可能性がある場面が多い。それは1人の選手が抱え続けるだけではダメ。そういったコミュニケーションを1つでも取っていけば、相互理解は深まっていく」という。練習中に限らず、クラブハウスへ引き上げる道すがらチームメイトと意見を交わすこともあれば、柳下監督のコーチングに対しても若干食い下がる形で自らの考えを示すこともある。コミュニケーションに妥協はない。
6月10日、金沢は北信越リーグ1部のサウルコス福井と練習試合を行った。梅鉢はボランチとして先発すると、90分間フル出場。既に全体練習には合流しているが、実戦は久しぶりだった。梅鉢は、0-2で良いところなく敗れた試合を「まず、全員が戦える状態でピッチに立たないといけない。ミスも多かったし、基本的なミスのところから自分たちの流れを失う場面も多かった。そういったことが出るということは、やっぱり戦うまでの姿勢に問題がある」と険しい顔で振り返ったが、これもまた梅鉢節。周囲を鼓舞し、ときに辛口も厭わない背番号33が帰ってきたのだ。
「僕自身、軽率なプレーもあった。自分の中の感覚のズレを戻さないといけない。大丈夫だという状態で守っていたけど、自分の体の感覚と試合の感覚のちょっとしたズレがあった」。ただ、この日は脚を気にする素振りもなく「ほとんど問題なかった。自分の体の感覚と頭の感覚は合ってきている」と、状態面に関して試運転の結果は良好。
6月16日には、第19節・栃木SC戦が控える。「監督に使ってもらえるように準備するだけ。出場するチャンスがあれば、新たなものをチームに与えられるような状態で臨みたい」。チームを引っ張る闘将、梅鉢貴秀。完全復活の日は近い。
文=野中拓也
【ライターコラムfrom金沢】迫る!闘将の完全復活…梅鉢貴秀が唱えるチームの課題「全員が戦える状態でピッチに」