[8.29 アジア大会準決勝 U-21日本1-0UAE ボゴール]
クロスバーを叩いたボールがゴールマウスに吸い込まれる。誰もが待ち望んでいた瞬間だった。ネットを揺らしたのは、またもやU-21代表FW上田綺世(法政大)だった。
出番が巡ってきたのは0-0の後半19分。FW旗手怜央(順大)に代わってピッチに送り込まれると、同33分に試合を決める一撃を叩き込む。左サイドのMF遠藤渓太(横浜FM)が送ったグラウンダーのクロスに反応するが、ボールは相手選手に一度はね返される。しかし、PA外ですぐさまMF渡辺皓太(東京V)が回収すると、上田の頭には「2つの選択肢」が浮かんだという。
「渡辺選手がカットインしたとき、彼が打つことを考えて、こぼれ球を狙っていた」というのが1つ目。そして、「目が合ってなかったので、正直パスが来るかどうか分からない中で、動き出して受けられるポジションをとっておこう」というのが2つ目の選択肢だった。そして、実際のプレーは後者となった。
渡辺から「大学レベルで出てくるパスじゃない」という鋭いパスが届けられると、「トラップが成功した時点で、決めてやろうというモードで『絶対に決める』と思っていた」。右足から放たれたボールはクロスバーを叩きながらも、ゴールネットを揺らして決勝点となるゴールが生まれる。前日の28日に20歳の誕生日を迎えており、「20歳になって最初の試合でゴールを決められて良かった」と素直に喜びを表した。
上田が窮地に立ったチームを救ったのは、これが初めてではない。後半31分からピッチに送り込まれた決勝トーナメント1回戦マレーシア戦では、後半44分にMF松本泰志(広島)のスルーパスからPA内に走り込むと相手選手のファウルを誘ってPKを獲得し、自ら蹴り込んでチームを準々決勝へと導いていた。
現FC東京FWリンスがG大阪、甲府在籍時に終盤での活躍が目立ったことから“仕上げのリンス”との異名を持つことになったが、この言葉にかけて、MF三好康児(札幌)や遠藤らが「ふざけてですけど(笑)、“仕上げの綺世”と言っていた」(遠藤)ことを笑みをこぼしながら明かす。「でも、それでしっかり結果を残している。何だかんだで点を取ってくれているので、本当に助けられている」(遠藤)と試合を決定付けるストライカーを称賛した。
今大会2度目となる途中出場での決勝弾。「持ってる?」と問われた上田は、「自分でもそう思っています」と白い歯を見せた。
(取材・文 折戸岳彦)
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◆勝利をもたらす“仕上げの綺世”…U-21代表FW上田「自分は持ってると思う」(ゲキサカ)