W杯ロシア大会(14日開幕)に出場するサッカー日本代表が2日午前、最終調整を行うオーストリアのインスブルックへ出発。ところが直前になって、日本協会で隠然たる勢力を誇る“鹿島閥”と西野ジャパンとのあつれきが浮上した。
西野朗監督(63)は5月31日にW杯最終メンバー23人を発表。壮行試合・ガーナ戦(同30日=日産ス)のために招集した26人から、MF三竿(鹿島)、井手口(レオネサ)、FW浅野(ハノーバー)の3人が落選した。
西野監督はこの3人に「サポートメンバーとしてW杯でもチームに帯同してほしい」と打診。井手口と浅野からは快諾を得たが、「三竿だけは本人の了解が得られなかった」というのだ。
同様のことは過去にもあった。2010年W杯南アフリカ大会でも、「サポートメンバーならW杯には行きたくない」と拒否した選手がいた。当時J1・C大阪に所属していた香川(現ドルトムント)である。しかし「W杯の雰囲気を味わう経験は決してマイナスにはならない」と日本協会とJリーグから説得され、最終的に帯同。裏方として岡田ジャパンのベスト16進出に携わった。
今年4月、ハリルホジッチ前監督が電撃解任されたことをうけて、それまで技術委員長としてハリル・ジャパンを支える立場だった西野監督が緊急登板。実は当時の経緯をめぐり、「技術委員長だった西野さんが監督になるのは筋が通らない」「もっと技術委員会で討議するべきだった」との批判の声が今も協会内にある。その中心となっているのが、J1鹿島の関係者だ。
三竿のサポートメンバー拒否は、はからずも西野ジャパンと鹿島閥の間に溝があることを明白にした格好。
4月に西野ジャパンがスタートした際、日本協会とJリーグは一致団結し「オールジャパン体制」でこの難局を乗り切る方針を示したが、早くもほころびがみえた。
「お守り? たくさんいただきましたが、ケンカしちゃうとアレなんで、少しだけ(ロシアに)持っていきます」と涼しい顔で旅立った西野監督だが、協力態勢のほころびが、今後の日本代表にどんな影を落とすことになるか。(夕刊フジ編集委員・久保武司)