日刊鹿島アントラーズニュース

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2020年7月29日水曜日

◆鹿島の「生え抜き」2人の執念。 ジーコイズムは次代に受け継がれる(Sportiva)






茨城県の金融史といばらき時評 [ 金沢忠夫 ]


 押し込まれながらも少ないチャンスをモノにして、先制点を奪った場面では”らしさ”が感じられたが、前半終了間際にセットプレーから立て続けに2失点。勝ち方を知るチームとは思えないもろさを露呈し、FC東京にあっさりと逆転を許してしまう。

“常勝軍団”の面影はどこへやら……。開幕から不調が続く鹿島アントラーズは、この日も何かがおかしかった。

 開幕前から予兆はあった。ザーゴ監督を招聘し、スタイル変更を求めるなかで、産みの苦しみを味わうことは当然考えられた。

 加えて今季の鹿島は、他チームから多くの即戦力を補強。戦力アップに期待が持てた一方で、チーム作りを滞らせる遠因になるのではと予想された。実力者であっても、フィットに時間がかかるケースは多々あるからだ。

 鹿島が常勝軍団であり続ける背景には、脈々と受け継がれてきた伝統があるだろう。ジーコが植えつけた勝者の哲学は、先輩の姿から学び取った後輩たちへと引き継がれていく。

 たとえば、秋田豊の後継者として岩政大樹が台頭し、その後は昌子源が継承した。柳沢敦、小笠原満男、中田浩二、本山雅志らも先達を乗り越えるために研鑽を積み、自身の立場を築いていった。

 内田篤人や大迫勇也、柴崎岳といった面々も、ジーコイズムの正統後継者だったと言えるだろう。若手がベテランを乗り越え、主軸としての自覚を備える。そのサイクルがあるからこそ、鹿島は強者で続けた。

 もっとも近年は、そのサイクルを築くことが難しくなっているのも事実。若手の台頭を待つ前に、主軸が海外へと移籍してしまう。内田をはじめ、大迫、柴崎、昌子、鈴木優磨、安部裕葵らが次々にチームを離れた。

 本来は下からの底上げを待ちたいところだろう。だが、その時間が足りないなかでチーム力を保つためにも、補強に力を入れるのは当然のこと。海外移籍が特別なことではなくなった時代、この流れはますます加速していくはずだ。

 外部からの血が増えれば、伝統は薄れかねない。ジーコイズムを知るものが少なくなったことを、鹿島の低迷と結びつけることは、あまりにも短絡的すぎるだろうか。

 FC東京戦のスタメン11人のうち、生え抜きはわずかにふたりだった。一方で新戦力は、外国籍選手も含めて4人を数えた。ビルドアップを重視するそのスタイルも、鹿島らしさは希薄に感じられた。

 試合はこれまでと同様に、立ち上がりから苦しんだ。前半からFC東京のプレスをもろに受け、思うようにボールを前に運べない。逆にFC東京のスピーディな攻撃を浴び、失点するのは時間の問題かと思われた。

 そんな苦しい状況を救ったのが、生え抜きの遠藤康だったのは、何かを象徴しているように感じられた。

 2トップの一角に入ったこのレフティは、試合当初こそ前にとどまっていたものの、ボールが出てこない状況を鑑みて、次第にフリーマンのように自在なポジション取り始める。遠藤がボールに触る機会が増えると、徐々に鹿島の攻撃に流れが生まれ、防戦一方の展開は徐々に解消されていった。

 先制点の場面も、この遠藤が起点となっている。在籍14年目を迎えたベテランアタッカーは、戦況を見極めたしたたかな振る舞いで、チームに流れを呼び込んだのだ。

 そして、1点ビハインドで迎えた後半に同点ゴールを奪ったのは、こちらも生え抜きの土居聖真だった。後半途中からピッチに立つと、遠藤のクロスをダイレクトボレーで合わせて、敗色ムードが漂うチームを救った。

「今日に限って言えば負けていたところもありますし、個人的にも結果がほしいとずっと思っていた。どんどんゴール前に顔を出せればと思っていたので、それが結果につながってよかったです」

 サイドハーフながら積極的に中央のエリアに侵入し、がむしゃらに結果を求め続けた。勝利を渇望するそのプレーに、ジーコイズムを叩き込まれた生え抜きの執念が感じられた。

 その後も攻勢を仕掛けた鹿島は、終了間際に遠藤があわやというループを放つなど、最後までFC東京を追い詰めた。結局、決定打は生まれず2−2の引き分けに終わり、再び最下位(清水と並んで17位タイ)に転落している。

 それでも、後半に見せたパフォーマンスは今後につながるものだった。FC東京の運動量が低下した隙を突き、一気呵成に相手ゴールに迫っていく。その鹿島らしい反攻を牽引したのが、ふたりの生え抜きだったことは見逃せないポイントだ。

 鹿島らしさとは何か。それは底を知らない勝利への渇望だろう。一昨季、内田を復帰させたのも、その血を絶やさないための一手だったに違いない。

 そして、次代を担う有望株の育成にも労力を惜しまない。昨季、前倒しで鹿島入りを果たした上田綺世をはじめ、高校サッカー界を沸かせた染野唯月、荒木遼太郎、松村優太の高卒ルーキートリオも、ジーコイズムの正統後継者となり得る人材だ。染野にいたってはすでに戦力のひとりに数えられている。

「自分自身、厳しい環境で揉まれながら成長していくタイプだと思っている。一番激しい競争が待っているところだと感じたので、鹿島を選びました」

 静岡学園高のエースとしてチームを日本一に導いた松村は、ジーコイズムを会得しようと、あえて厳しい環境を選んだと明かしている。新しい血は確実に流れ始めている。時間はかかるだろう。しかし、希望はある。


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