日刊鹿島アントラーズニュース

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2021年1月2日土曜日

◆“優勝候補”昌平、絶体絶命から奇跡の2ゴール 薄氷の勝利を呼んだ「最後は技術」の信念(FOOTBALLZONE)

    




残り11分で痛恨の2失点目、焦る時間帯から采配が的中


 第99回全国高校サッカー選手権大会は31日、1回戦の16試合が行われ、前回大会ベスト8で優勝候補の昌平(埼玉)は、土壇場で2-2に追いつき、PK戦の末に高川学園(山口)を下して3大会連続で初戦を突破した。

 来季Jリーグに4人を送り込む“スター軍団”にとって、薄氷を踏む思いのまさに綱渡りの勝利だった。

 前半7分、高川学園のDF奥野奨太が蹴った右FKを昌平の2年生GK西村遥己が捕球ではなく、パンチングを選択。これが大きなクリアにはならず、こぼれ球をFW中山桂吾に素早く拾われ先制点を蹴り込まれた。しかし個の力量とグループ力を考えれば、焦る時間帯ではない。

 J2アルビレックス新潟に加入する1トップのFW小見洋太が、3本の決定打を放って反撃に出る。同17分に右クロスを惜しいヘッド、同20分には逆襲から左ポストをかすめる一撃、同30分にも強烈なシュートをお見舞いしたが、相手GKの好守に阻まれた。

 昌平は埼玉県予選とは異なる配置をした。J1鹿島アントラーズに進む本来ボランチのMF小川優介を左の2列目に置き、右2列目のMF平原隆暉をボランチに起用。鹿島入りするトップ下のMF須藤直輝が軽やかなドリブルと機転を利かせた配球で攻撃の舵を取り、昌平は圧倒的にボールと試合を支配する。同39分に須藤、同アディショナルタイムにはJ3福島ユナイテッドに加入するMF柴圭汰が、いずれも決定的なシュートを放ちながらいくらか精度を欠き、ゴールを割れずに前半を折り返した。

 就任14年目の藤島崇之監督は「相手はうちの特長をよく研究し、良さを消されてしまった」と分析。高川学園は3バックと両ウイングバック、ボランチが連動した組織守備が完成され、守りのバランスは後半の終盤まで全く崩れなかった。

 後半29分、MF林晴己のパスからカウンターを浴び、MF清長和暉に痛恨の2点目を許した。

 前半の失点とは違い、もう焦り始め、策を打たねばならぬ時間帯だ。藤島監督は2点目を失うとすかさず1年生MF篠田翼を送り込む。同26分には兄のMF篠田大輝も投入していた。この采配も的中したが、須藤を本来の左2列目に移動した作戦も当たった。





仕掛けてFKを獲得した須藤が同点弾を演出、PK戦前に感極まって泣き崩れる


 後半アディショナルタイムの表示は3分だ。同40分に差しかかった時に敵のパスを奪い取った須藤がドリブルで侵入。「シュートするふりをして右に流した」と言う頭脳的なパスを受けた翼がゴール左隅に決めて1-2としたが、時計はすでに「44分」を回っていた。その時だ。

 須藤が左から豪胆に運び、ペナルティーエリア手前でファウルを受けてFKを獲得。疲労を感じさせないスピード豊かなドリブルで、当人も「ずっと課題だった縦突破からチャンスをつくれた」と自賛した。

 FKのキッカー須藤は御厨貴文主審から「これがラストプレー」と告げられていた。左から放ったボールに大輝が頭で合わせて起死回生の同点弾を流し込んだ。直後にタイムアップの笛が鳴ると、須藤は感極まって泣き崩れる。

 奇跡の同点劇からPK戦も9人ずつ蹴り合う死闘となったが、先行の高川学園の9人目が外し、昌平は小川が真ん中に沈めて決着をつけた。

 藤島監督に安堵の表情が浮かぶ。「最後は技術という信念でやってきましたが、それがゴールにつながったんだと思います」と卓越したテクニックが、逆転勝利を呼び込んだ要因とした。

 エースの小見も常々、指揮官と同じ話をしていた。

「監督からはいつも最後にものをいうのは技術だと言い聞かされてきた。日頃の練習で技術を向上させ、昌平は強くなりました」

 優勝候補が危うく初戦で姿を消す土壇場まで追い込まれたが、苦しい試合をものにした昌平はさらに強く、たくましくなって、新春2日に京都橘との2回戦を迎えることになる。

(河野正 / Tadashi Kawano)




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