日刊鹿島アントラーズニュース

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2018年8月5日日曜日

◆三竿健斗は感じている。勝たせるプレーとは 「臨機応変に対応すること」(Sportiva)



三竿健斗 Kento.Misao


遺伝子~鹿島アントラーズ 絶対勝利の哲学~(23)
三竿健斗 前編

◆土居聖真「ボールを持つのが 怖くなるほど、鹿島はミスに厳しかった」(Sportiva)
◆中田浩二「アントラーズの紅白戦は きつかった。試合がラクに感じた」(Sportiva)
◆中田浩二は考えた。「元選手が 経営サイドに身を置くことは重要だ」(Sportiva)
◆スタジアム近所の子供が守護神に。 曽ヶ端準とアントラーズの幸せな歩み(Sportiva)
◆曽ヶ端準「ヘタでも、チームを 勝たせられる選手なら使うでしょ?」(Sportiva)
◆移籍組の名良橋晃は「相手PKに ガックリしただけで雷を落とされた」(Sportiva)
◆名良橋晃がジョルジーニョから継ぎ、 内田篤人に渡した「2」への思い(Sportiva)
◆レオシルバは知っていた。「鹿島? ジーコがプレーしたクラブだろ」(Sportiva)
◆「鹿島アントラーズは、まさにブラジル」 と言い切るレオシルバの真意(Sportiva)
◆「ジーコの負けず嫌いはハンパなかった」。 本田泰人はその魂を継いだ(Sportiva)
◆「アントラーズの嫌われ役になる」 本田泰人はキャプテン就任で決めた(Sportiva)
◆ユースで裸の王様だった鈴木優磨が 「鼻をへし折られた宮崎キャンプ」(Sportiva)
◆鹿島・鈴木優磨のプロ意識。 いいプレーのため、私生活で幸運を集める(Sportiva)
◆岩政大樹の移籍先は「アントラーズと 対戦しないこと」を条件に考えた(Sportiva)
◆リーグ杯を負けた岩政大樹は妻の前で 号泣。「あのとき覚悟が決まった」(Sportiva)
◆塩釜FC時代の遠藤康は 「鹿島からオファーが来るとは思わなかった」(Sportiva)
◆鹿島一筋12年の遠藤康。 「小笠原満男の跡を継ぐイメージはないです」(Sportiva)
◆熊谷浩二は鹿島入団をすぐ後悔した。 「ここに来なければよかった」(Sportiva)
◆熊谷浩二は選手たちに伝えている。 ジーコスピリッツは人生にも必要だ(Sportiva)


 リーグ再開4試合負けなしで11位から7位まで順位を上げた鹿島アントラーズ。引き分けに終わったガンバ大阪戦から中3日で迎えた8月1日ホームでのFC東京戦。先発メンバーを大きく替えることなく挑んだ一戦は、13分に安西幸輝のゴールで先制したものの19分に同点に追いつかれ、77分にリンスのゴールで逆転負けを喫し、9位に後退してしまった。

「こっちの攻撃の流動性が少なかった。疲労度は間違いなく……ないわけじゃない。ボールを追い越して走れる人が今日はほとんどいなかった。相手のほうが出足とか切り替えが一歩速かったなという印象がある」と土居聖真が振り返る通り、相手を押し返す力がなかった。

 リンスの得点を演出した永井謙佑に突破を許した犬飼智也は、自身のミスだったとハッキリ口にした。

「最初ラッキーな形で先制して、すぐの失点も勿体ないですし、2失点目は自分のミスからだったので、悔しいです。相手のスピードが速いのはわかっていたので、シンプルに外へ出そうとしたんですけど……ミスですね」

 蹴りだしたはずのボールは、遠くへは飛ばなかったのだ。今季、清水エスパルスから鹿島へ加入。昌子源の負傷などで出場機会を得ながらも、なかなか勝ち試合に恵まれずにいた。しかし、ここ4試合負けなしで、確かな自信を手にしていたに違いない。しかし、このひとつのミスがもたらす結果は重い。

「責任は感じている。後ろの選手は1回のミスでああいう風になってしまう。90分通して集中し続けること、90分納得できるプレーをして、自分がしっかりやらないといけない。もう試合は終わってしまったので、今日の責任をしっかりと受け止めて、切り替えてやるしかない。自分はやり続けるしかないから。こういう試合のああいうミスのあとの姿勢とか、行動が大事だと思うので、反省をしたうえで切り変えて、次の練習から顔を上げてやりたいと思います」

 重さを実感しているからこそ、犬飼は強い口調で、自身を奮い立たせているようだった。

 植田直通が移籍し、昌子が負傷した。センターバックは25歳の犬飼と20歳の町田浩樹が務めているものの、ベンチには加入したばかりの韓国代表チョン・スンヒョンが座っている。ポジション争いを勝ち抜くうえでも出場機会を無駄にはできない。昌子が戻れば、ベンチ外の可能性だってあるのだ。

「チャンスであることには変わりないですし、そのなかでしっかり結果をださないと意味がない。しっかり勝たなくてはいけないし、今日の試合は本当に叩いておかなければいけない相手だったので、それが本当に悔しい」

 毎試合、課題を口にする町田だが、その言葉からは弱気を感じさせない。チャンスは同時に正念場でもある。経験不足や力の無さを嘆く暇はないし、それが言い訳にもならない。タフに立ち向かわなければ、チャンスを逃すことになってしまう。 

 若い選手の成長を促すために実戦経験は必要不可欠だ。しかし、だからといって、そのために勝利を逃すわけにもいかない。厳しいプレッシャーを自覚し、背負うからこそ、強くなれる。鹿島の選手はそうやって「鹿島の一員」になる。





 2017年シーズン途中に大岩剛監督が就任して以降、先発に定着した三竿健斗。勝利を重ねた昨シーズンと違い、今季リーグ戦ではすでに7敗を喫する苦しいシーズンとなっている(第19節終了時点)。ベスト8進出を果たしたACLとの連戦を戦う三竿の疲労度は試合を重ねるごとに増していく。それも肉体以上に「思考」の疲弊が大きいのか、そのプレーにダイナミックさが欠けているように映った。勝利から遠ざかることで、担うプレッシャーも大きくなる。そんな日々のなかで、三竿が強く痛感したのは、「勝ちたい」という想い以上に「勝たせる」選手になることの難しさと使命感だった。

――今季前半はリーグ戦とACLとの連戦を先発出場し続けました。肉体以上に頭が疲れていると話していましたが……。

「やっぱり頭が疲れていましたね。プレーの判断が悪くなりました。そして、勝てないことで、当然周囲からのプレッシャーも大きく感じたし、チーム全体が苦しい感じになるので、どうしてもプレーにも迷いが生まれる。とにかく苦しかったですね」

――勝てない現実を経験することで、過去、勝ち続けてきたアントラーズの歴史の重みを感じたのではないでしょうか?

「アントラーズの選手が受けるプレッシャーが大きいことは、このクラブに来る前から想像はしていたけれど、実際、それを感じながら戦って、そのうえで勝ち続けるというのは、本当にすごいなと思います。巧い選手というのはたくさんいると思います。でも、大事なのは、勝たせる選手になること。巧い選手がいても勝てないチームは勝てない。だけど、たとえば、突出した技術がなくても、勝たせる選手がいるチームが勝つんだということを最近強く感じます。それがボランチで言えば、(小笠原)満男さんだし、(柴崎)岳くんだったのかなと」




――小笠原選手から感じる、「勝たせる」ことへのこだわりというか、「勝たせるプレー」というのはどういうものなのでしょうか?

「正直言葉では言い表せないですね。こうすれば『勝たせられる』という答えがわかれば、簡単なんですけど(笑)。ただ、満男さんを見ていると、型にはめるんじゃなくて、相手や味方の状況を見ながら、臨機応変にプレーすることなんだろうと感じます。満男さんと話をしていても、『こうしたほうがいい』というよりも、『その考えを持ちながらも、こっちの方法もあるよ』というふうに言ってくれるんです。だから、満男さんはたくさんの選択肢、引き出しの中から、どうすべきかを感じ取るのが早くて、的確だからこそ、柔軟に対応できるんだなと思っています」

――そこは経験値もあるのかもしれませんね。小笠原選手は、いろいろと教えてくれるのでしょうか?

「そうですね。でも、具体的に教えてはくれない。相談すると『それもあるし、そればっかりにはならないで、使い分けよう』という感じです。満男さんは言葉ではあまり言わないですね。もちろん、必要なときに、必要なことを言ってくれるけれど、いろいろと気づかせてくれる。『あとは自分で考えろ』と。教わるというよりも、自分で考えて、見て学ばなくちゃいけない」

――たとえば、チームの結果が出ないときに、移籍した柴崎岳選手と比較されるような世間の声というのもあったと思います。もちろん、三竿選手と柴崎選手とでは、タイプが違うし、ストロングポイントも違うわけですが……。

「僕は岳くんのようなパスは出せないけれど、守備力には自信があります。選手それぞれにタイプがあるし、長所短所がある。僕には僕の良さがあると思っています。ただ、チームを勝たせられるかというところでの責任というのは、どんな選手でも担うべきものだから」

――「勝たせられるか」という部分で、結果が出ないと、どうすればよいのかを悩み考える。試合に出られる喜びと、プレッシャーのなかでどんなふうに前半戦の連戦を過ごしていたのでしょうか?

「課題を認識しながらも、切り変えることも大事だと思っていました。でも、今よくよく考えると、自分の良さを出せていなかったなと。負傷して、ACLの上海上港とのアウエイ戦と仙台戦と2試合休みました。それで、リフレッシュできたのか、その後の代表合宿で、インターセプトが自分の良さだと再認識しました。これができていなかったから、結果に繋がらなかったのかなと思えた。やっぱり、持っているものをすべて出し切らないと勝てない。このクラブの勝ちに対する重みを痛感しました。勝つのは簡単じゃない。それでも、鹿島では勝つことが当たり前のように求められている。そういう中で、当たり前ではない勝利を当たり前のように手にしてきた先輩たちは本当にすごいなと」

――OBも含めて、鹿島の選手たちは「勝たせる」という言葉をよく使います。勝つためにどうするかではなく「勝たせるためにどうするか」というのは、微妙に違いがあるように思うのですが……。

「自分のやりたいプレーよりも、チームの勝利に繋がるプレーを大事にしているチームなので、そういう発想になるのかなと思いますね」

――自分のやりたいプレーと、勝たせるプレーとの違いとは?

「僕のプレースタイルは、そんなに目立ったことはしないし、味方のためにボールを奪って、それをつなげるというプレーなので、それが自然とチームのためになるのかなとは思っていて、それほど意識はしていません。ただ、自分のプレーが良くなくても、チームが勝てればいいというメンタルに、もっともっとなればとは思います。自分がいいプレーをしないと、満足ができないところもあるんです。もやもやするというか、スッキリしないというか。でも、先輩たちは、そういうなかでも、チームが勝てればという風にみんな考えていると思いますから」

――W杯の中断期を経て、再開したリーグ戦ではよい戦いが続いていますが、キャンプで三竿健斗選手の「勝たせるためにプレー」というのが、見つかった部分はあるんでしょうか?

「天皇杯の町田戦では、僕はセンターサークル付近にポジションをとり、相手のフォワードを引き付けられたので、センターバックのところが空いて、そこから、サイドへパスを出してというのが、チームとしてできていました。僕自身は、もっとボールに触りたい、DFラインに下がったりして、ボールを引き出すプレーをしたいという想いもあるけれど、結果的にボールを触っていなくても、周りの選手を活かすために動けていた。そういう部分が『勝たせること』に繋がっているのかなと思っています。90分間のプレーのなかで、ボールを触る時間なんて本当にわずか。だから、ボールのないところでのプレーの質をもっと上げるべきだとも思っています。海外の選手はボールを受けるときの位置取りが巧いし、ボールのないところでのプレーの質が本当に高いですから」

(つづく)




三竿健斗は感じている。勝たせるプレーとは「臨機応変に対応すること」

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