日刊鹿島アントラーズニュース

Ads by Google

2018年11月6日火曜日

◆鹿島がACL制覇へ王手。強さを取り戻した 要因はSBの位置取りにあり(Sportiva)



レオ・シルバ Léo Silva


 アジアチャンピオンズリーグ(ACL)決勝第1戦。鹿島アントラーズはペルセポリス(イラン)に2-0で先勝。アジアチャンピオンの座に王手をかけた。

 ホーム&アウェー戦で、緒戦を2-0でモノにしたチームが優勝する可能性は、一般的にいえば75%程度。テヘランで行なわれるアウェー戦の厳しさを考えれば、その可能性は10%ほど低下するものの、第1戦の戦いの中身そのものに目を凝らすと、鹿島優勝の可能性は10%ほど上昇する。

 なにより終わり方がよかった。後半の途中から試合は完全に鹿島の流れになった。逆にペルセポリスはリズムを崩した。後半、チャンスらしいチャンスをつかめぬまま、彼らは終了のホイッスルを聞いた。

 セカンドレグは1週間後。間を置かずに行なわれることを考えれば、この流れは簡単にリセットされそうにない。鹿島はいいイメージのまま、セカンドレグに望めそうだ。

 立ち上がり、ペルセポリスはとても強そうに見えた。鹿島はそのひとりひとりの高いポテンシャルと体格のよさに圧倒された。

 開始早々、相手FWアリ・アリプールの胸トラップシュートを、鹿島DFチョン・スンヒョンが顔面に当てて跳ね返したシーンがあったが、これが決まっていたら試合はどうなっていたかはわからない。

 ペルセポリス側はこのシーンを、ハンドだと主審に猛列に抗議した。しかし映像を見る限り、当たった場所は明らかに顔。抗議するまでもないプレーに対して激しく抗議する姿に、真の強さをうかがうことはできなかった。

 結局、ペルセポリスにとっては、この試合でこれが一番のビッグプレーになった。精神的に淡泊というか、時間の経過とともにこらえ性がなくなっていった。

 鹿島がいいとき、たとえば2016年にJリーグを制し、クラブワールドカップ決勝に進んだ頃は、後半に強いイメージがあった。終盤になるほど力を発揮する、かつてのドイツ・ゲルマン魂にも似た独得の精神力を備えていた。前半を0-0で折り返せば、試合は鹿島のもの。そんなムードがあったが、この試合も、振り返れば、強かった頃の姿そのものに似ていた。

 ちょっと守備的に入りながら、徐々に攻撃的な方向に修正して得点を奪う。いい終わり方で勝利の瞬間を迎えるという、精神的に乱れることのない頭脳的なサッカーを最大の売りにしたが、この試合もまさにそういう感じで、後半になると、試合は徐々に鹿島ペースになっていった。

 試合後、前半の戦いを大岩剛監督は、顔をしかめながら「前半はよくなかった」と述懐した。

「ディフェンスラインが引いて下がってしまった。それにともないサイドバックの位置も下がり、ボランチまで最終ラインに吸収された。後ろに重たい戦いを強いられたが、後半はディフェンスラインを上げ、サイドバックに高い位置を取らせ、それによりサイドハーフがワイドに開けるようになった。中盤をコンパクトに保ち、そこで数的優位に立ちながらサイドを使うことができた」と述べた。

 転機となったのは後半3分のプレーだ。鹿島はコンパクトになった中盤でボールを巡る攻防を制すると、左サイドハーフの安部裕葵がパスを受けた。アジアU-19選手権を途中で抜け、数日前にインドネシアから帰国。この試合への出場にこぎつけた171cmの小柄な19歳が、巧みなステップワークで内に切れ込み、右サイドハーフの土居聖真にパスを預けると、チャンスは一気に拡大した。

 土居はそのさらに外を走る右サイドバック、西大伍の鼻先に縦パスを送る。鹿島らしい展開である。西はグラウンダーのマイナス気味のボールを折り返すと、そこに突っ込んだ安部はスルー。ボールはセルジーニョの足元に収まった。そのポストプレーを受けたレオ・シルバの右足シュートは、ゴールバーを越えノーゴールに終わったが、流れはこの一連のプレーから激変することになった。

 中盤でレオ・シルバと三竿健斗がボール奪取の中心として鋭い反応を見せれば、安部がドリブルでキレのいい動きを見せる。そして土居、西にボールが流れていくと、ペルセポリスはチーム全体として、やりにくそうな表情を浮かべた。

 先制点が生まれたのは、このプレーの10分後(後半13分)だった。

 直前に絡んだ選手も土居と西で、得点者はその前のプレーでシュートを外していたレオ・シルバだった。たとえば、この右サイドハーフ(土居)とサイドバック(西)の関係は、ペルセポリスにはない魅力である。ペルセポリスはひとりひとりのポテンシャルは高いが、連動性は低い。この差が試合を分けたポイントと言えるが、その背景として見逃せないのがサイドバックの位置取りだ。監督の指示が奏功した結果と言える。

 鹿島ペースは続く。後半24分、セルジーニョが決めた追加点では、三竿のプレーが効いていた。ゴール前で胸トラップ。シュートを放つかに見えたが、右前方のセルジーニョに、冷静にパスを流しアシストとした。

 ボールを奪う力もあるが、パス出しのセンスもある。それなりに上背もある。精神的にも安定している。まだ22歳ながら中盤でレオ・シルバと共にチームを支えるこの選手の成長は大きい。

 そしてセルジーニョ。これでACL5試合連続のゴールである。特段、技巧的ではなく、馬力があるわけでも、スピードがあるわけでもないが、終わってみれば試合を決めるプレーに深く関与する不思議なプレーヤーだ。ジーコの口利きで加入したと言われるが、鹿島の浮上と大きな関係がある。決定力不足という問題はこれで大きく改善された。

 攻撃でいうなら、鈴木優磨の成長も見逃せない。一見、無骨な選手ながら、毎年、着実に進歩している。プレーに粘りが生まれ、試合勘もよくなっている。日本代表に抜擢されてもおかしくないレベルにある。

 選手個人について話を進めれば、今季途中から加入したセンターバックのチョン・スンヒョンも、チーム力アップを語るときに外せない選手になる。その風貌と最終ラインからの高いフィード力から連想するのは、元バルセロナ&オランダ代表のロナルト・クーマンだ。

 セルジーニョ、チョン・スンヒョン、それにレオ・シルバ、さらに準決勝で大活躍したGKのクォン・スンテ。外国人選手がここにきて充実したプレーを繰り広げていることも見逃せない。

 テヘランで行なわれるセカンドレグに向けての唯一の心配は、チョン・スンヒョンとコンビを組む昌子源の調子が上がっていないことだ。ケガから復帰して間もないということで、試合勘が回復していない様子だ。真面目そうな選手であるだけに、よけい気がかりである。

 鹿島がアジアを制する確率は70%強。第1戦後半の内容が維持されれば、具体的には鹿島の両サイドバックが高い位置を取ることができれば、まず大丈夫だと思われるが。結果はいかに。




◆鹿島がACL制覇へ王手。強さを取り戻した 要因はSBの位置取りにあり(Sportiva)





Ads by Google

日刊鹿島

過去の記事