明治安田J1 第21節
敵地で4失点。鹿島、名古屋に惨敗。
満員の敵地で、鹿島が最下位相手の打ち合いに屈した。チケット完売のアウェイゲーム、豊田スタジアムでのJ1第21節。名古屋グランパスと激突した鹿島は、2度のビハインドを負う苦しい展開から2-2と追い付いたものの、残り10分で2失点。2-4と敗れ、今季8敗目を喫した。
1週間前、聖地は歓喜に包まれていた。後半アディショナルタイム、西が突き刺した会心のボレー。ゴールネットとともに、アントラーズレッドが揺れた。清水戦、1-0。苦しみ抜いた90分を乗り越え、3試合ぶりに3ポイントを掴み取った。ウォーミングアップで負傷したクォン スンテに代わって曽ケ端が急遽出場し、チョン スンヒョンがデビューを果たした一戦。ジーコTDの合流後、初めて迎えたホームゲームで勝利を収めた意味は計り知れない。
次なる戦いは6日後だ。連戦を突き進む鹿島にとって、中5日の準備期間を得るのは久しぶりのこと。そしてこの期間を終えれば、10月中旬まで中4日以下のペースで試合が続いていく。まずは心身のリフレッシュを図り、そしてクラブハウスで準備を進めていった。ジーコTDが鋭い眼差しを注ぐグラウンドで、切磋琢磨は熱を帯びていく。遠藤が清水戦で復帰を遂げ、山本も練習に合流。セルジーニョの選手登録も完了し、試合メンバー入りを懸けた争いもさらなる高みへと導かれていった。
そして試合前日には、鈴木が7月のJ1月間MVP、そして安西のドリブルシュートが月間ベストゴールに選出されるという、嬉しい知らせも届いた。「これからも、チームの勝利に貢献していきたい」。責任と自覚を胸に躍動を続ける若武者たちは声を揃え、次なる戦いを見据えていた。全ては、勝利のために――。「このクラブは勝つことで強くなってきた。それは未来も変わらない」。ジーコTDが刻んだ言葉、その魂を継承するために、一歩ずつ進んでいかなければならない。
セットプレーの連係を入念に確認した前日練習を終え、永木は「自分ができることを全部出したい」と決意を語った。そして指揮官は「総力戦ということは常々言っている。100%を出せる状態であること、それがまず大事」と、連戦を突き進む覚悟を述べていた。ここ2試合、1得点ずつに終わっている攻撃の活性化を促すうえでも、チーム全体が絶えず連動していかなければならない。遠藤は「ボールを触ることだけがサッカーではないので、ボールを受けない時でも周りが活きればいい」と、献身を誓ってクラブハウスを後にした。
中5日で迎える一戦、大岩監督が施した先発変更は2名だった。ボランチの一角に三竿健斗、そして前線に土居が復帰。その他、GKは曽ケ端、最終ラインは西、犬飼、スンヒョン、安西が並ぶ。ボランチは健斗とともにレオ シルバが先発し、ミドルゾーンを制圧すべくピッチに立つ。そして攻撃陣、2列目には永木と遠藤が並び、前線は土居とともに鈴木が虎視眈々とゴールを狙う。そしてベンチにはGKの川俣、内田、山本、町田、安部、特別指定選手の名古、山口が座る。
40度近い高温に見舞われた豊田に、アントラーズレッドが続々と足を運んでいく。1週間以上前にチケット完売が発表された敵地での一戦。ホームチームに数では及ばなくとも、ビジタースタンドの熱量は時間を追うごとに増していった。特別指定選手ながら、初のメンバー入りを果たした名古へのコールも響き渡る。新たな力とともに、連勝を目指す90分が始まる。
18時3分、キックオフのホイッスルが鳴り響いた。鹿島は立ち上がりから積極的に前線へ飛び出す姿勢を示し、ボールホルダーを追い越す動きを繰り返しながら守備網突破を狙っていく。3分には健斗がペナルティーエリア右手前からミドルシュート。5分には中盤左サイドでボールを持った鈴木がサイドチェンジを通し、遠藤を経由して西がボールを持つ。遅れて入ったスライディングで倒されてしまったものの、鋭いショートカウンターを繰り出してみせた。
10分を経過し、次第に名古屋がボールポゼッション率を高める展開となった。鹿島は前線から連動したプレスをかけ、永木が持ち前のボディコンタクトでカウンターの起点に。無尽蔵のスタミナで推進力であり続ける背番号6は今日も、惜しみない献身を示してみせた。15分には土居がペナルティーエリア手前まで進出し、こぼれ球を拾った鈴木が左足を一閃。強烈なシュートはしかし、枠の右へ逸れてしまった。
次第に鹿島が主導権を掴み、長短のパスで相手のマークを外しながらじわじわと敵陣へ押し込む時間が続いた。だが、決定機を作るには至らない。27分には自陣ペナルティーエリア手前でポストプレーを許し、プレスに戻ろうとした健斗が主審と交錯したことで一瞬、遅れてしまう。ボールを奪い切れずに打たれたミドルシュートは枠を捉えたが、右ポストを直撃。肝を冷やす場面だったが、事なきを得た。
粘り強く時計の針を進めていた鹿島。だが、この夜最初のスコアはホームチームのものだった。33分、ペナルティーエリア右奥へパスを通され、ゴール前での混戦を作られると、最後はジョーに押し込まれてしまった。0-1。暑く息苦しい夜、満員の敵地で鹿島はビハインドを負った。
反撃に転じる鹿島は、守備ブロックを固める名古屋に対して焦れることなくパスをつないで押し込んでいく。33分にヘディング、36分にはミドルシュートで遠藤が同点弾を狙うなど、少しずつ得点の予感を漂わせていた。だが、ファーストハーフにスコアが刻まれることはなかった。0-1。1点ビハインドでハーフタイムを迎えた。
アントラーズレッドへ向かって攻める後半、反撃への狼煙を上げたのは背番号8だった。ホイッスルから間もなくして敵陣左サイド深くまで突破し、左CKを獲得。このセットプレーは得点に結実しなかったが、ゴールネットを揺らしてみせたのは5分後だった。
50分、敵陣中央でいち早くプレスをかけた健斗がボールを奪い、鈴木に預ける。ペナルティーエリア左奥へのスルーパス、そこへ走り込んだのが土居だった。ファーストタッチで縦へと持ち出し、マークを剥がして左足を一閃。ニアサイドを射抜いてゴールネットを揺らした。1-1。後半立ち上がり、待望の同点弾だった。
しかし、1分も経たないうちに次のスコアを許してしまった。51分、ペナルティーエリア左側でポストプレーを許して起点を作られると、最後は金井に右足シュートを決められた。1-2。鹿島は再びビハインドを負った。
反撃するしかない。広大なスペースが生まれ、オープンな展開に推移する中で、鹿島は必死にゴールを目指した。57分には鈴木のスルーパスから遠藤が左足シュート。60分には安部がピッチへ送り出され、ゴールへの希望を託される。相手のセットプレーが連続した時間帯も耐えしのぎ、虎視眈々と同点弾を狙っていた。
70分。この日2度目の、そして最後の歓喜が訪れる。ペナルティーエリア右角でボールを持った安部が、右外を駆け上がった西へパス。突進した背番号22は、相手との交錯で倒される。ホイッスル、判定はPK。同点の絶好機を得ると、鈴木が冷静にゴール左隅へ蹴り込んだ。2-2。71分の同点弾で、鹿島が再び試合を振り出しに戻した。
2度のビハインドを追い付き、残りは20分。消耗戦の様相が色濃く反映されたピッチで、目指すものは逆転弾のみだった。だが、待ち受けていたのは屈辱の結末。82分、ペナルティーエリア内での混戦から曽ケ端が弾き出したボレーのこぼれ球を拾われ、金井に決められて2-3。そして後半アディショナルタイム、右サイドを破られてクロスを供給され、前田にゴールネットを揺らされた。2-4。今季2度目の4失点で、鹿島が惨敗を喫した。83分に投入された山口、そして86分からピッチに立ってJ1デビューを果たした名古の奮戦も、結実することはなかった。
次戦は4日後、15日の長崎戦だ。再び迎えるアウェイでの90分へ、チームは明日鹿嶋へ帰還する。現在地を見つめ、這い上がるしかない。
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【この試合のトピックス】
・J1での名古屋戦は2014年5月6日の第12節以来7試合ぶりの黒星となった。
・J1でのアウェイ名古屋戦は2013年7月31日の第18節以来4試合ぶりの黒星となった。
・土居が今季のリーグ戦4得点目を記録した。
・鈴木が今季のリーグ戦8得点目を記録。2016年の自己記録に並んだ。
・名古が公式戦初のベンチ入りを果たし、途中出場。J1デビューを果たした。特別指定選手として、公式戦出場は2013年の赤崎以来2人目。
【動画】DAZNハイライト
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監督コメント
[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
・しっかりビルドアップができているので、後半もこれを続けていこう。
・ボックスの近くでもっとスピードを上げてプレーしよう。
・後半45分、みんなで一つになって試合をひっくり返そう!
名古屋グランパス:風間 八宏
・声を掛け合って正しいポジションをとる。
・ゴール前は冷静にプレーする。
・後半も自分たちのサッカーしよう。
[試合後]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
我々が得点を取った後、すぐに失点をしたことが今日の全てだったと思う。最後まで積極的に出た結果が4失点だと思う。しっかりと振り返って、次の試合に活かしたいと思う。
Q.前節から中5日、攻撃の部分を確認したと思うが、改善は見られたか?
A.自分たちがボールを握っている時間は、ボールをよく動かしながら前へ出ていく力はあった。ただ、リスクマネージメントや相手のカウンターへの対応がしっかりとできていなかったために失点してしまったと分析している。しっかりと修正しなければいけないと思う。
名古屋グランパス:風間 八宏
4万3000名を超えるお客さんが入ってくださったのはすごいこと。選手への期待の大きさがあり、一緒に戦ってこの試合を作ってくれた全ての人に感謝したい。主審のジャッジはなかなか納得できるものではなかったが、最後まで戦って差をつけた。素晴らしい勝ち方だった。選手の一人ひとりが逞しくなったことを証明した試合だと思う。
選手コメント
[試合後]
【土居 聖真】
反撃のゴールになると思った。失点はDFだけのせいではない。前から制限できたところもあったと思う。90分を通して詰めが甘い試合だった。1つのミスが失点につながってしまう。それを全員が認識しないといけない。
【曽ケ端 準】
4失点しているし、反省するところはしっかりしないといけない。自分が相手のシュートを弾く位置も、もっとうまくできれば良かった。すぐに試合だけど、やり方を変えるわけではない。もっと注意深くプレーして、全員で修正ができればいい。
【永木 亮太】
全体的にチャンスは作れていたけど、失点をする時間帯だったり、取った後に取り返されてしまったりと、90分を通して締めるところで締められなかった。後手後手になってしまった。
【犬飼 智也】
得点後、すぐにピンチを招いたことを反省しないといけない。もっとボールを回してくるチームだと思ったけど、ジョー選手のところにボールを入れるサッカーをしてきた。自分たちが悪い奪われ方をして、やられてしまった。
【名古 新太郎】
これがプロの世界だと思う。チャンスをもらった中で結果を出せなかったのは自分の責任。次に切り替えてやっていくしかない。勝ち続けるしかないチームの一員である以上、そういう気持ちは強く持っていかないといけない。
◆2018明治安田生命J1リーグ 第21節(オフィシャル)