日刊鹿島アントラーズニュース

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2022年5月5日木曜日

◆鹿島アントラーズは負ける気がしない。「岩政大樹に任せる」と言った新指揮官のマネジメント、力強さを増すキーマンとは?【コラム】(フットボールチャンネル)






明治安田生命J1リーグ第11節、鹿島アントラーズ対ジュビロ磐田が3日に行われ、3-1で鹿島が勝利した。レネ・ヴァイラー新監督の下、前節で首位浮上を果たした鹿島は、この日も強力な攻撃陣が躍動。果たして、鹿島の好調は一過性のものか、それとも常勝軍団の復活か。上昇気流に乗っている要因はどこにあるのだろうか。(取材・文:元川悦子)


首位浮上を果たした鹿島アントラーズ


 川崎フロンターレなどAFCチャンピオンズリーグ(ACL)勢不在の間に首位浮上を果たした鹿島アントラーズ。2016年以来の国内タイトル奪還に向け、大型連休中の3連戦で体制固めをしておかなければいけない。

 4月29日のセレッソ大阪戦に続き、3日のホーム・ジュビロ磐田戦は是が非でも勝ち点3のほしい試合。遠藤保仁を筆頭に百戦錬磨の選手を擁するチームではあるが、今季J1復帰組に力の差を示す必要があった。

 この日の鹿島はセレッソ戦から1人だけスタメンを変更。前回の終盤にゴールしたアルトゥール・カイキが先発入りした。最終ラインは三竿健斗、関川郁真のセンターバック(CB)コンビが統率し、ボランチは樋口雄太、和泉竜司が縦関係に陣取る。そして今回も最前線は鈴木優磨、上田綺世というJ屈指の強力2トップが並んだ。

 彼らに対し、磐田は3-4-2-1の布陣で応戦。前からプレッシャーをかけながら、中央のボックスで確実に跳ね返す意識で挑んだ。が、鹿島の巧みなビルドアップにじわじわと押し込まれ、自陣に引かされてしまう。

 こうなると鹿島は余裕を持って攻撃の組み立てができるし、左右のサイドも効果的に使える。特に前半は松村優太・常本佳吾の右サイドからの崩しが有効で、敵陣深い位置まで何度も攻め込んだ。その流れで得た前半29分の右CKから待望の先制点を挙げる。キッカーは樋口。彼の蹴ったボールを打点の高いヘッドで決めたのがアルトゥール・カイキ。頼れる助っ人の2戦連続弾が生まれ、チームは大いに勢いに乗った。


ジュビロ磐田に致命傷を与えた鹿島アントラーズ


 焦る磐田に致命傷を与えたのが、6分後の2点目だった。中盤の樋口からボールを受けた鈴木が前線を斜めに走る上田に絶妙のスルーパスを供給。背後に飛び出した背番号18は伊藤槙人の前に身体を入れ、豪快に左足でネットに突き刺した。

「優磨君が寄ってきたのが見えたので、スペースを空ける意味でプルアウェイを始めて、彼が前を向いたタイミングで斜めにダイヤゴナルランをしようというイメージがあった。お互いの特徴が出たゴールだったと思います」と進境著しい点取り屋は自信をのぞかせる。

 これには磐田のベテラン・遠藤も「つねにゴールに向かってプレーするので、敵としては脅威になる選手。得点パターンも非常に多くてホントに厄介。前半の2失点が重くのしかかった」と神妙な面持ちで語ったほど。上田が磐田に甚大なダメージを与えたのは間違いないだろう。

 それでも、磐田としてはこのままアッサリと負けるわけにはいかない。伊藤彰監督は後半開始時にファビアン・ゴンザレスと大津祐樹を投入。前線を1トップから2トップへと変更し、攻撃を加速させた。その采配が奏功し、前半とは戦況が一変する。

 そして後半26分、遠藤の右ショートコーナーを途中出場の山本康裕が中に入れ、ファビアン・ゴンザレスがヘッド。首尾よく1点を返すことに成功した。

 鹿島にしてみれば、チーム全体に嫌な空気が漂ったことだろう。終盤に3失点した4月10日の横浜F・マリノス戦の悪夢が脳裏をよぎった選手もいたかもしれない。その停滞感を打破したのが、エース・上田だった。


上田綺世のストライカーらしいプレーとは?


 失点から7分後、アルトゥール・カイキからラストパスを後ろ向き受け、反転してDF伊藤を振り切る。ドリブルで持ち込み、鈴木雄斗もかわして豪快に左足を一閃。3点目を奪ったのだ。まさに「ザ・ストライカー」と言うべき個人技によるダメ押し点だった。

「前を向けたらミドルを狙っていこうという意識だった。シュートレンジの広さに関しては自分の武器だと思っていますし、25m以内なら振れる。あれだけペナの中で前を向けたら自信をあるんじゃないかなと。あの時間帯は後ろの選手たちも失点してピリピリしていたし、それを助けるのが前の仕事だと思います」と今季7ゴール目を奪った上田はしてやったりの表情を浮かべた。

 これで8点のピーター・ウタカ(京都)に続く得点ランキング2位に浮上。今季はJ1全11試合先発で、ケガによる欠場もない。好調をキープしているうえ、得点のバリエーションも確実に増えている。課題と言われた連続性のある守備、ボールを収める動きも改善が見られるだけに、このまま行けば、日本代表で大迫勇也を超える存在になることも不可能ではないだろう。

「上田君は経験を積んでいけば代表でも戦力になるような選手。対戦している時以外は応援してます」と日本代表歴代最多出場の152試合を誇る遠藤に言わしめた背番号18。彼自身も「そう言ってくれるのはありがたいですし、ゴールのバリエーション・種類はFWの価値に直結する。頭も右も左も抜け出しもドリブルもミドルも、いろんな形で取れることを武器にしていかないといけない」と高みを目指す意気込みを口にした。


新体制への移行がスムーズに進んだ理由


 結局、鹿島は3-1で試合をモノにしたが、絶対的エースが決めるべきところで決められるようになったのは大きい。鈴木優磨やアルトゥール・カイキなど他にも得点源はあるものの、上田という突き抜けた存在が新生・鹿島を力強くけん引しているのは紛れもない事実。ここからタイトル争いをしていくうえで、心強い要素となるだろう。

 鹿島は11戦終わって勝ち点35。ここまで川崎と横浜に苦杯を喫しているものの、大崩れしない安定感と縦に速くなった攻めが印象的だ。ご存じの通り、今季はレネ・ヴァイラー監督がコロナ禍の入国制限で3月まで合流できず、岩政大樹コーチがチーム作りを請け負い、新指揮官にバトンタッチしたが、その移行が想像以上にスムーズにできている。

「レネ監督は初期段階で『ウェブやビデオを見ても、実際に指導しないと自分のやりたいことは落とし込めない。岩政に任せる』とずっと言っていました。来日後も無理に変えようとするんじゃなくて、うまく行ってるところは手を加えず、段階を踏んで自分の色を出していった。それがスムーズに進んでいる要因。レネ監督の日本人へのリスペクトと柔軟性が鹿島にとってよかったですね」と前任の鈴木満氏から強化部門を引き継いだ吉岡宗重フットボールダイレクターも手ごたえを口にした。

 確かに今の鹿島は負ける気がしない。ACL組の状態にもよるが、ここで一気に勝ち点を重ねることができれば、タイトル奪回と常勝軍団復活は決して夢ではないはずだ。そのキーマンはやはり上田という最大の得点源に他ならない。彼には点取り屋として試合ごとに幅を広げ、スケールアップした姿を人々に見せつけてほしいものである。

(取材・文:元川悦子)





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