[7.28 東京五輪GL第3節 U-24日本 4-0 U-24フランス 横浜国際]
2試合連続の途中出場。その間、“ライバル”のFW林大地(鳥栖)が最前線で存在感を示していた。負けていられない――。フランス戦で今大会初めてスタメンに名を連ねたFW上田綺世(鹿島)は貪欲にゴールを目指した。
事前合宿では出遅れた。負傷を抱えての合流となり、別メニューでの調整が続く。黙々とランニングをこなし、グラウンドの脇でフィジカルトレーニングを行う。徐々にコンディションを上げていくと、五輪本大会には何とか間に合った。第1節南アフリカ戦、第2節メキシコ戦で途中出場でピッチに立つと、第3節フランス戦では先発を託された。
序盤はフィニッシュまで持ち込めない時間が続いた。しかし、前半20分にDF中山雄太(ズウォレ)から浮き球のパスを受けると、強引に左足ボレーに持ち込んだ。ここに、狙いがあった。
「ああいう前向きなプレー、貪欲なプレーが流れを変える。ああいうプレーを見せることでラインが下がったりすることがある」。そして、「あのシーンが伏線になったというのもある」と振り返ったのが先制点の場面だ。
前半27分、MF田中碧(川崎F)から縦パスを受けた久保のパスに反応すると、トラップで相手の逆をとってPA内へと侵入。右足の強烈なシュートが枠を捉えると、GKポール・ベルナルドニが弾いたボールを久保が蹴り込んで先制点が生まれた。
「僕の仕事は点を取ることだし、動き出しからゴールに迫ること。でも、それにプラスアルファというか、それを伏線として、2列目のタケ(久保建英)や(堂安)律とかテクニックのある選手が、スペースを得て、そこで輝けるのも僕の一つの武器。それを体現するためには僕がどん欲に狙い続ける必要があるし、そのこぼれをタケが決めただけ」
さらに前半34分には、久保のスルーパスから抜け出し、今度は左足のシュート。勢いのあるボールはベルナルドニに弾かれたものの、DF酒井宏樹(浦和)が蹴り込んでチーム2点目が生まれた。
枠に飛ばした強烈なシュートで、チームに勢いをもたらす2点を演出。しかし、自身の得点とはならなかったことで「色々なアイディアを絞り出せれば良かった。右足のシュートはチップキックを狙えたかもしれないし、左足も切り返したら決められていたかもしれない」と振り返り、「でも、結果的に得点につながればいい」と続けた。
負傷から復帰し、先発にも復帰。そして、十分な存在感も示した。決勝トーナメントに進出したチームにおいて、ストライカーの復調は大きなプラスとなる。「次の試合に、より感覚とモチベーションを持って臨めるように準備していきたい」と、中2日で行われる準々決勝ニュージーランド戦に照準を合わせて調整を進めていく。
(取材・文 折戸岳彦)
◆「僕の仕事は点を取ることだけど…」貪欲にゴール狙うFW上田綺世が張った“伏線”(ゲキサカ)