日刊鹿島アントラーズニュース

Ads by Google

2024年10月14日月曜日

◆ドイツで試行錯誤を続ける佐野海舟の現在地 鹿島から飛び込んだ“甘くない”ブンデスでの日々「まだまだ自分の力が足らない」(CoCoKARA)






「チームのトレーニングも毎日強度高くやっているので、だいぶそこで慣れた部分もあります。けど、練習と試合は違うのは当たり前だと思うので、自分が思っているより強度が高かったなとは思います」


全文はこちらから
◆ドイツで試行錯誤を続ける佐野海舟の現在地 鹿島から飛び込んだ“甘くない”ブンデスでの日々「まだまだ自分の力が足らない」(CoCoKARA)






 今夏に鹿島アントラーズからドイツの古豪マインツに移籍した佐野海舟がブンデスリーガデビューをして1か月半が経過する。鳴り物入りで加わった23歳だが、ここまでリーグ戦全6試合でスタメン出場を果たし、少しずつ順応している様子をうかがわせている。

 ウニオン・ベルリンとの開幕戦では持ち味のボール奪取やセカンドボールの回収が思うようにできずに苦戦。パスを受ける機会もあまりなく、試合の流れに絡めない時間帯が少なからずあった。

「今まで感じたことのないプレッシャーだったり、相手の強度だったりというのはすごい感じました。(プレー強度やインテンシティというのは)自分の持ち味でもありますし、ただその持ち味が今日あまり出せなかった。まだまだ自分の力が足らないなと思いますし、どんどん強くなるしかない」

 佐野は当時にそう振り返った。もっとも、Jリーグからブンデスリーガに渡り、すぐに馴染むとは首脳陣も思ってはいないだろう。環境や習慣、言語や食事も、サッカーのプレースタイルも違う中で順応するのは容易ではない。それなりに時間は必要となる。

「チームのトレーニングも毎日強度高くやっているので、だいぶそこで慣れた部分もあります。けど、練習と試合は違うのは当たり前だと思うので、自分が思っているより強度が高かったなとは思います」

 ウニオン戦後にそう語っていた佐野は、日々の練習をこなす中で順応度を少しずつ高めている。とはいえ、それがすぐ明確な変化になるほどブンデスの舞台は甘くない。

 その傾向が現れたのは、3節のブレーメン戦だった。

 1-1で迎えた60分に相手チームに一人の退場者が出た。残り時間は約30分。ホームゲームで数的有利となったマインツが俄然優位になったと誰もが思った。だが、そこから押しこむどころか逆に69分、不用意なボールロストからカウンターを許し、そのまま失点。終盤必死に押しこもうとするが、ゴールの気配もないまま1-2で敗戦した。

 マインツを率いるボー・ヘンリクソンは試合後の記者会見で、「数的有利後、ボールをもったときに、今日の10倍以上はいいプレーをしなければならなかった。カウンターに備えた守備も大事だ。我慢強くプレーすることを学ばないと」と指摘。自チームに苦言を呈していた。

 決勝点は相手のペナルティーエリア付近でマインツがボールロストをしたところが起点となったわけだが、その場面でボールの近くにいた佐野は判断が遅れた。プレスに行きつぶすべきか、ディレイして対応すべきか、はたまたパスコースを消すべきか。一瞬の悩みが足を少し止めてしまった。

 監督のコメントを聞いても、「ボールを奪われないことが一番だと思います」と佐野自身の振り返りを受けても、そこがまず問題だったのは間違いない。では次善策はどうだったのか?

「自分がボールの一番近くにいたので、もっと強くいってもよかったかなとは思いました。選択肢が何人も周りにいる状況でなかなか難しかった。ああいうときにはっきりいくのか、いかないのかの判断をうまくやれればよかった」


「課題は出ている。けどチームとして確実に積み上げてきているものはある」


 ただ、反省する中で、掴んだ手応えもある。実は1点を追っていた27分に生まれたマインツの同点ゴールは、佐野の飛び出しが起点となったものだった。

 対戦相手ごとにタスクは変わってくるが、攻撃への積極的な関与、そしてセカンドボールの回収と球際の鋭さは常に求められるポイントだ。ゆえに本人はこう語る。

「1点目の時みたいに2列目からどんどん飛び出していくこともやっていけば得点につながるのかなと思います。そうしたプレーを増やしていきながら、でも中盤のスペースをあけないことを意識しながら、バランスを持ってやっていきたいです」

 マインツは基本的に中盤センターに君臨する元ドイツ代表MFのナディム・アミリが司令塔として君臨している。チームメイトはとにかく彼を探し、ボールを預けるところから攻撃がスタートさせるケースが多い。

 類まれなゲームメイクセンスを持つアミリを経由すれば攻撃にリズムが生まれ、チャンスへつながるという点は大きな武器である一方で、相手チームの警戒はアミリに集中する。となれば、必然的に技巧派MFを経由しない形でチャンスを作る攻撃パターンの創出が必要となってくるだろう。

 佐野も新たな攻撃パターン創出への関わりの必要性を認めていた。

「そうですね。無理につけても(味方FWが)孤立している部分もあったと思うので、バランスを見ながら、前に行けるのか、横に広げるのか。でもゴールにつながるパスというのは出していかないとなとは思います」

 うまく試合に絡めていないとプレーに焦りが出てくることもある。そのなかで、確かな積み重ねを感じられているかは大事なポイントになる。佐野はその点を次のように肯定していた。

「課題は出ている。けどチームとして確実に積み上げてきているものはあると思います。こういう結果をチーム全体で受け止めてやるしかないと思います」

 マインツはブレーメン戦以降で、アウグスブルク戦(4節)は退場者を出しながら3-2と辛勝、ザンクトパウリ戦(6節)では3‐0と快勝。6節終了時でマインツは2勝2分2敗の10位。昨シーズン同時期は1分5敗と未勝利で最下位にいたことを考えると満足のいく位置につけている。

 そんないまだ発展途上にあるチームで成長を続ける佐野。鹿島からドイツに渡ったサムライは真摯に、そして謙虚に戦い続けていく。

[取材・文: 中野吉之伴 Text by Kichinosuke Nakano]

Ads by Google

日刊鹿島

過去の記事