第99回全国高校サッカー選手権は11日午後2時5分からさいたま市の埼玉スタジアムで決勝が行われ、2大会ぶり3度目の優勝が懸かる青森山田と、11大会ぶり2度目の頂点を狙う山梨学院が対戦する。青森山田はここまで4試合を戦い、15点のうち7点を、得意の“飛び道具”を起点に奪ってきた。18年にはリバプールがスローイン専門コーチと契約するなど、トップレベルでも注目は高まっている。
エアバトラーとして活躍した日本代表DFで、J3いわてグルージャ盛岡の秋田豊監督(50)は、決勝でもロングスローが1つのポイントになると断言した。【構成=奥山将志】
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青森山田は3回戦の帝京大可児戦で3点、準々決勝の堀越戦で2点、準決勝の矢板中央戦でも2点をスローインからの展開で奪ってきた。追われる立場ならではの「準備力」が背景にあると、秋田氏は説いた。
「青森山田と戦うと、相手はどうしても守備的に戦ってきます。そこをこじ開けるための戦術として、背が高く、フィジカルの強い選手を生かしたロングスローを得点パターンとして確立してきた印象です」
高い正確性には裏付けがあるとも続けた。
「チーム全体に、スローインの状況をつくりだすための戦い方が浸透しています。まずは右サイドのMF仙石のように、縦にドリブルを仕掛けられる選手を配置しています。それにより、クロスがあげられずにボールを奪われても、そこで一気にプレッシャーをかけて、相手がタッチに逃げるしかない状況をつくりだし、スローインの数を増やしています」
相手はロングスローの存在により、タッチラインに出しにくい状況となるが、青森山田は、その「先」も想定しているという。
「ロングスローを嫌がって、大事につなごうとしてきた時の対応もできています。好守の切り替えが速いので、1人目がいって、2人で挟みにいく。それを嫌がって、外に逃げさせると、そこでプレッシャーをかけて、また、スローイン…という流れです」
青森山田だけでなく、多くのチームがロングスローを多用し、今大会では大きな注目を集めている。
「まず、これほどロングスローが注目される背景として、近年、ポゼッションを重視することで、ヘディングの練習をおろそかにしていることがあると思っています。僕の考えとしては“上空にあるボールは誰のものでもない”です。ロングスローは守りにくいと言われますが、実際に、青森山田がロングスローから失点はしてない。根底にはヘディング技術の問題があるのです」
逆を言えば、山梨学院は、青森山田のロングスローを封じることが、勝利の可能性を上げることになる。
「直接の競り合いが難しければ、当たり前ですが、ボールに対してアタックすることと、こぼれ球への反応が大切です。ゴールから逆算したポジションを取りながら、相手が触るより前でインターセプトすることを意識していかないといけないと思います」
ロングスローが賛否両論を生んだ今大会。日本を代表するDFとして、指導者として、秋田氏は言葉に力を込めて締めくくった。
「“ずるい”と言う人もいるが、それは言い訳。ルールがあるんだから、胸をはってやればいい。サッカーはボールをつなぐことが目的ではないし、悪い試合でも勝たないといけない。昨季のJ3でも秋田がロングスローを効果的に使って優勝した。大昔からある戦術が、今もこうやって話題になることも、サッカーの面白さですし、両チームには、最高の決勝戦を見せてほしいですね」
◆賛否あるロングスロー 胸はってやればいい/秋田豊(ニッカン)