海外で戦うサムライたちの2017-18シーズンが始まる。彼らは新たな一年のスタートをどのような形で切るのか? チームにおける序列やシーズンの目標は? 識者たちが海外組の“現在地”を探る。
チーム内序列:中心選手
ノルマ:年間を通して主軸としてフル稼働する
目標:ブンデスリーガでの二桁得点&昨季と同程度のアシスト
文=遠藤孝輔
■新戦力コルドバとのコンビネーション成熟が鍵
7月31日のテストマッチ(対ボローニャ)で右足首の靭帯を損傷したケルンの大迫勇也は、2017-18シーズン最初の公式戦となるDFBポカール1回戦(対レーア)を欠場。8月20日に控えるボルシア・メンヒェングラードバッハとのブンデスリーガ開幕戦にも間に合いそうになく、ホームゲームの第2節ハンブルガーSV戦での復帰に照準を合わせる。
シーズン前の重要な準備期間に離脱を余儀なくされたとはいえ、ペーター・シュテーガー監督からの信頼は揺らがない。かねてから大迫の才能に惚れ込んでいるオーストリア人指揮官は、改めて「勇也は代えの利かないプレーヤーだ」と口にしている。コンディションさえ整えば、不動のレギュラーとして大きな期待を寄せられそうだ。
主戦場は昨シーズン同様にセカンドトップ、トップ下になるだろう。前線でしっかりとボールを収めてから、ラストパスやシュートに持ち込める大迫は、最後の30メートルでのアイデアに欠けるケルン攻撃陣に欠かせない存在だ。1本のロングパスやアーリークロスをゴールに結びつけていたストライカー、アントニー・モデストの退団(今夏に天津権健へレンタル)に伴い、ますます味方からボールを託される機会が増えるかもしれない。
そのモデストに代わる得点源となりそうなのは、今夏にマインツから加入したコロンビア人のジョン・コルドバで、前任者同様にパワーとスピードに長けるタイプだ。このストライカーとのコンビネーションを磨くことも、さらなる飛躍のために不可欠となる。互いの特徴をよく理解し、ピッチで阿吽の呼吸を見せていたモデストと同じように、理想的なパートナーシップを築けるか。得点力の低下が不安視されるチームにとっても、大迫とコルドバの連携構築は今シーズンの行方を左右する重要テーマの一つだ。
■過去10年のケルンで二桁得点を挙げたのは4人だけ
昨シーズン同様に崩しのタスクも求められる中で、大迫が狙うのはブンデスリーガでの二桁得点だ。アシスト(昨季は8)を減らさずに、ゴール数を増やすことに強いこだわりを見せる。それを達成するには何が必要か。本人が語るポイントは「ゴール前に入る機会を増やすこと」。チャンスメークの仕事をこなしながら、いかにフィニッシャーらしさを出していくか。その絶妙なバランスを見出すことが鍵になるだろう。
そもそもブンデスリーガで10ゴール以上を奪う難易度はどの程度か。16-17シーズンは15人が記録したが、PKなしで二桁の大台に乗せたのは12人。15-16シーズンは18人(PKなしが17人)、14-15シーズンは18人(PKなしが16人)で、1チームに達成者が1人いるかどうか。過去10シーズンのケルンでは、前述のモデスト、アンソニー・ウジャー、ルーカス・ポドルスキ、ミリボイェ・ノバコビッチしか二桁得点者になっていない。
日本人プレーヤーに目を向ければ、06-07シーズンのフランクフルトで高原直泰(11得点)、11-12シーズンのドルトムントで香川真司(13得点)、13-14から2シーズン連続で当時マインツの岡崎慎司(15得点→12得点)が達成している。高原はブンデスリーガ参戦5シーズン目、香川は同2シーズン目、岡崎は同4シーズン目の大台到達だった。大迫にとっては今季がドイツ5シーズン目、ブンデスリーガ1部は4シーズン目になる。
■自身初となるヨーロッパリーグでも輝きを放てるか
大迫自身は「まずはブンデスリーガ」と国内の戦いにプライオリティーを置いているが、自身初となるヨーロッパリーグでのパフォーマンスにもやはり注目だ。8月25日に控えるグループリーグのドローで、ケルンがアーセナルやミランのようなビッグクラブと同組になるようなら、われわれ日本人にとってはさらに目が離せなくなるだろう。
両チームの本拠地であるエミレーツ・スタジアムやサン・シーロで輝きを放った暁には、ドイツ国外の有力クラブからオファーが舞い込む可能性もグッと高まる。すでにバイエルンの世界的な守備者たちを脅かした実績を持つ大迫なら、舞台を欧州に移しても十分に実力を発揮できるのではないか。不安は蓄積疲労くらいだろう。
27歳と多くのフットボーラーが脂の乗り切る年齢になった大迫にとって、今季はケルンに収まる器の持ち主かが問われるシーズンになるかもしれない。本人が一つの目標にするドイツで優勝を争えるチームへの移籍を実現させるには、やはり「二桁得点+8アシスト前後」の目標達成が必要になるのではないか。