日刊鹿島アントラーズニュース

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2019年6月14日金曜日

◆サッカー昌子源をフランスで直撃「W杯の悔しさが海外移籍を押した」(日刊SPA!)



昌子源 Gen.Shoji


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 ’18年サッカーロシアW杯では全4試合中3試合にセンターバック(CB)としてフル出場するなど、2大会ぶりの16強入りを果たした日本代表の躍進に貢献した昌子源(26歳)。大会後はケガもあったが、11月に鹿島アントラーズに悲願のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)のタイトルをもたらすと、年明けには欧州5大リーグの一つ、フランス1部リーグのトゥールーズへ移籍した。

 ロシアW杯では「スタメン唯一の国内組」とも称されたが、晴れて海外組となった男は何を思っているのか。3月の代表ウィークでは、およそ8か月ぶりに復帰。森保ジャパンで新たな一歩を踏み出し、3年後のカタールW杯でも守備のリーダーとして期待される昌子を現地で直撃した。


海外移籍には全く興味がなかった。ただ、W杯の悔しさが自分を押した


 移籍から約5か月。昌子は1月19日、21節のニーム戦でフランス1部リーグにデビューすると、その後はリーグ16戦連続でCBとしてフル出場を続けている。フランスといえば、身体能力に優れたアフリカ系の選手が多くいることでも知られるが、どんな印象を持っているのだろうか。

「やっぱりアフリカンというか、身体能力の高さには毎日びっくりさせられています。鹿島時代は、CBでコンビを組んでいた植田(直道、現セルクル・ブルージュ/ベルギー)の身体能力はハンパないって思っていましたけど、アイツみたいのがゴロゴロいますから。そう考えると、逆に植田がすごかったのかなとか思いますけど……。

 日本人はふくらはぎの力で走ったり、ジャンプしたりしますけど、黒人選手のお尻はプリッとしていて、彼らはケツの力で走ったり跳んだりしているように思えるほど。ボールを持てばパスなど考えず、ドリブルで仕掛けてくるので、DFとしては大変です。体のぶつかり合いも激しいので、スペインやイングランドから来た選手すら、『これはサッカーじゃない。ラグビーだ!』なんて言ってますね(笑)」

 それでも、そうした異文化のサッカーに触れることは海を渡った理由の一つだった。移籍後、強豪リヨンやパリ・サンジェルマン(PSG)との対戦も経験。PSG戦では、昨年のロシアW杯でフランスを優勝に導いた弱冠20歳の快速アタッカー、ムバッペとのマッチアップも話題となった。









「ムバッペについては『人間じゃない』というふうに表現する人もいますが、そういう言い方もあながち間違ってないような気がします。だって人間は普通、スピードはゼロから10、20、30%と段階を踏んで上げていく感じだと思うんですが、彼はゼロから一気に80~100%に上げる。要するに加速がチーターのようなんです(苦笑)。僕がマッチアップしたときも、自分に近い位置にボールがあったのに、次の瞬間には彼のところにボールがあったのは衝撃的でした」





『オマエ、いい選手だな』って言ってもらえるようなプレーを見せたい


 リヨン戦は1-5と大敗。昌子自身、フランスの新星FWムサ・デンベレに振り切られ、ゴールを許した場面もあった。

「これまで積み上げてきた自信をすべて失うっていうか、1対1の局面でもあっさり崩されるなどメンタル的には相当こたえました。正直、5点目を取られたのが70分すぎで『まだ20分もあるのかよ』って思ってしまいましたし、アディショナルタイム表示が出たときにはウチのチーム全員が『アディショナルタイムはいらないから早く試合を終わらせてほしい』という雰囲気でした(苦笑)。

 ただ、J1にデビューした頃も、当時川崎Fにいた嘉人さん(大久保、現・磐田)に何度もチンチンにされて、『いつかぜってぇ止めてやる!』って反骨心を持ち続けたことで成長できましたし、次は絶対にデンベレを止めてやると思っています」

 Jリーグ時代は鹿島でJ1、天皇杯、リーグカップ、ACLと多くのタイトルに恵まれた昌子。だが、トゥールーズは1部在籍期間こそ長いものの、過去5年間を見ても20チーム中、9位、17位、17位、13位、18位と下位に低迷し、クラブ関係者やファンの望みは、まず残留。勝利への執念や野望という点で常勝クラブの鹿島とは大きく異なる。今季も34節を終えて、8勝14分け14敗の15位と沈む。無自覚でいれば、周りに流され、モチベーションを失いかねない。

「正直、ここに鹿島のような勝者のメンタリティはないですよ。リヨン戦も1-5とボコられたあと、笑っている選手もいましたし、なかなか勝てないし、点が入らないですから(苦笑)。まずは残留できれば御の字という空気ですし、メンタル的にキツい部分もあります。

 ただ、やっぱり試合をする以上は勝ちたい。だから、そこで『このクラブはダメだ』ってグチってもしょうがない。僕だけでも練習から戦う姿勢を見せていければ、チームも少しずつ変わっていくかもしれないじゃないですか」

 ロシアW杯直後にも海外移籍の噂はあった。もともと海外志向は強かったのだろうか。

「それまでも何度かオファーをもらったことはありましたが、全然興味がなかったんです。ただ、W杯を経験して悔しかったのもあるし、ちょっと環境を変えるのも大事かなと思って。正直、日本にいれば少しくらい調子が悪くても、それまでの評価でごまかせるっていうか、“丸められる”状況にもっていけたと思うんです。安定した地位も、お金も、言葉も日本に残ったほうがいいのは当たり前。フランス語は勉強しているとはいえ、やはり難しいし、いまだにユーロから円への換算だって数秒かかりますから(笑)。

 ただ、一度すべてをゼロにして、まったく違った環境のなか、どれだけできるか試してみたくなった。街を歩いていても僕のことなんて誰も知らない環境のなか、『オマエ、いい選手だな』って言ってもらえるようなプレーを見せたい、と思ったのがここに来ようと思ったきっかけです」


「あれを超える悔しさはない」“ロストフの14秒”の真実





 ロシアW杯決勝トーナメント1回戦のベルギー戦。日本代表は2点をリードしながら、終盤に同点にされると、アディショナルタイムに敵陣でのCKから見事なカウンターを食らい、2-3と逆転負け。初のベスト8進出を逃した。

 3点目の失点シーンは、開催地ロストフ・ナ・ドヌーと、ベルギーのゴールがわずか14秒で生まれたことで「ロストフの14秒」とも言われているが、その場面で相手選手を必死に追いかけたのが、ほかならぬ昌子だった。最後は必死のスライディングも実らずにMFシャドゥリにゴールを許した。失点後、ピッチに倒れ込んだ昌子が何度も芝を拳で叩きながら悔しがる姿が印象的だった。





「僕は、今でも鮮明に覚えています。前を走っていたMFデブライネが少しずつ遠くなる感じとか。映像を見たら、疲れ切っているから顎が上がっているんですよ(苦笑)。最後にシャドゥリが決めるところはスローモーションみたいですし、忘れられないですよね。今でもCKで相手GKにキャッチされるとあの場面が頭をよぎることがあります。あの悔しさを超えるものはないですね」

 たとえば、もう少しこうしていたらと思うこともあるのだろうか。

「完璧なカウンターでしたからね。ただ、GKが取ったときに、イエローカード覚悟でもボールをフィードするのを遅らせるようなプレーができなかったのかと思います。正直、GKがキャッチした瞬間に(後半は)終わると思いました。でも、相手はそうじゃなかった。あまりにもショックだったし、世界との差を痛感させられた14秒だったと思います」


W杯後には高熱に苦しんだ


 プレッシャーも大きかったことだろう。W杯後には40℃もの高熱に苦しんだ。

「クラブから3泊4日の休みをもらっていたのですが、それじゃ切り替えられないと1週間に延ばしてもらい、さあクラブに戻ろうと思ったら熱が出てしまって。きっと一般の男性が50年かけて受けるようなプレッシャーを1か月で一気に受けたというか、緊張の糸がプツッと切れてしまい、普段ひかない風邪をひいてしまったんだと思います」

 3月の代表ウィークではW杯以来の日本代表復帰を果たし、コロンビア(3月22日、0-1)戦ではフル出場。20歳の冨安健洋(シント=トロイデンVV/ベルギー)とCBでコンビを組んだことも注目されたが、他人と比較されることは好きではないという。





「日本人はすぐに人と人を比べたがるけど、それってあんまり意味がないと思うんです。もちろんトミ(冨安)とはコロンビア戦で一緒にプレーして刺激を受けましたし、リスペクトもしているけど、僕はもともと他人を気にするタイプじゃない。

 だいたい10代から海外でプレーしていること自体がすごいし、僕なんて26歳で海外に来てアタフタしているわけですから。麻也くん(吉田、サウサンプトン/イングランド)だって、プレミアリーグでもう何年もプレーしているなんて、ハンパない。

 ただ、『スゲェ』とは思うけど、気にしてもしょうがないじゃないですか。僕は2人とはタイプが違うし、CBは同じタイプより違ったタイプのほうが互いの長所を生かし、短所を補えるのでいいと思う。だから、誰かと一緒にプレーすることで刺激を受けるというよりも『何か盗めるものはないかな』って。いつもそんなことを考えてプレーしていますね」


来るコパ・アメリカに胸を踊らせるも……


 シーズン後には、20年ぶりに日本代表が出場するコパ・アメリカ(6月14日~7月7日、ブラジル)が控えるが、あくまで招待参加であり、日本サッカー協会に強制招集権はなく、選手の参加にはクラブの許可が必要になる。

「グループリーグからウルグアイ、チリ、エクアドルとガチでできるなんてそうはない機会。それを考えると選手としては行きたい気持ちが強いですが、最後はクラブの判断ですから。もし行ければ楽しみなので、しっかりクラブとは話をしたいと思います」
(※取材後コパ・アメリカのメンバーが発表され、昌子源選手はメンバーには入っていない)

 初めての海外生活。言葉や文化の違いに戸惑うことも多い。

「そういえば、車を運転中に2週間で2度も追突されたんです。そのときはたまたま通訳の方が同乗していたので事後処理に問題はなかったですが、もし一人で乗っていたらと思うと言葉の問題もあるし怖いですよね。それと、フランスなら料理に期待したいところなのに、トゥールーズはイマイチで、ガッカリしています(笑)」

 フランス語は週に1~2回、クラブで習っており、移動中の車内でフランス語のCDを聴くなどして鋭意勉強中だという。





「もちろん、込み入った話は通訳の方に助けてもらっています。あとは、フランスでは何か聞かれても『Ça va(サヴァ≒元気、大丈夫の意。語尾が上がれば、その疑問形になる)』って言っておけばいいと言われているので、それでなんとか凌いでいますね(笑)」

 今後の抱負を聞けば、目標を細かく立てるほうではないが、W杯以降は自らの“引退”に思いを巡らせることがあるとも明かす。

「まあ、今後どこか他のリーグに行きたいと思うかもしれないし、ずっと試合に出ていても何かあれば日本に帰りたいと思うかもしれない。すべては自分次第。今はっきりしているのは、来季もトゥールーズでプレーするってことくらいですかね。

 ただ、去年は満男さん(小笠原、現鹿島アカデミー・アドバイザー)が引退するのを見て、ちょっと先のことを考えちゃったりするようになりました。満男さんって勝負にこだわるし、負けず嫌いなところもあるし、たぶん対戦相手からは嫌われていた選手だと思うんです。それでも、引退するってなったら敵サポーターからも『お疲れさま』と言われるほど、リスペクトされていた。なかには、誰にも気づかれず引退する選手もいます。

 だから、引退するときには満男さんみたいにみんなから『引退しちゃうの?』『まだ、できるでしょ』って思われる選手になっていたいですね。それがいつになるかはわからないけど、最後はすべての日本のサッカーファンに『お疲れさま』と言ってもらって引退できるようなサッカー選手になりたいと思いますね」

 3年後に“ロストフの14秒”の映像が流れ、コメントを求められるのは絶対に嫌だと言った。

「俺はカタールに向いています。代表の悔しさは代表でしか晴らせないですから」

 昌子は静かに爪を研いでいる。

取材・文・撮影/栗原正夫
― 昌子 源、フランスにて吠える! ―


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