日刊鹿島アントラーズニュース

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2019年7月30日火曜日

◆上田綺世、コパで「戦犯」と呼ばれた男の逆襲。アントラーズで始まる【コパ・アメリカに挑んだ若きサムライの今(5)】(フットボールチャンネル)



上田綺世 Ayase.Ueda


◆◆サッカーダイジェスト / 2019年7月25日号


ブラジル代表の優勝で幕を閉じたコパ・アメリカ2019(南米選手権)。東京五輪世代の選手中心に挑んだ日本代表は、グループリーグを2分1敗で終え、ベスト8入りを逃している。それでも、若い選手たちにとっては収穫の多い大会となったに違いない。そんな彼らはコパ・アメリカというビッグトーナメントを経て、現在は所属クラブでどのような時を過ごしているのか。第5回は鹿島アントラーズのFW上田綺世。(取材・文:元川悦子)


法政大サッカー部を退部。プロの世界へ

「コパ・アメリカ(ブラジル)に行く1・2週間前に僕の中で決めていて、それを(法政大学の長山一也)監督に伝えたのは、ブラジル出発の日。監督室に行って話をしました。今後プロになり、海外へ行ったりというキャリアを積むためには、早く鹿島に入ってプレーすることが大事だと感じた。それでこのタイミングでの決断になりました」

 法政大サッカー部を3年の途中で退部し、8月から鹿島アントラーズの一員として本格的にプロキャリアをスタートさせることになった20歳のFW上田綺世。26日の記者会見で前倒し入団を決めた理由をこう語った。

 森保一監督率いる東京五輪代表チームの立ち上げとなった2017年12月のM−150カップで大学1年ながら抜擢され、2018年アジア大会などでもコンスタントに活躍してきた彼は「このまま大学で安穏としていてはダメだ」という焦燥感を日に日に強めていった。2021年から鹿島入りが決まった今年2月の時点で、一度は「このタイミングで大学を辞めてプロになった方がいいのではないか」と考えたが、「まだ法政で全てをやりきったわけではない」という思いもあって、もう半年間続けることにしたという。

 しかしながら、6月にA代表の一員としてコパ・アメリカ2019(南米選手権)に参戦することになって、プロ入りに対する気持ちはより一層、強まった。7月のユニバーシアードにも出場すれば大学サッカー界、法政大にも最大限貢献できる。そういったタイミングも考えて、ここでの決断に至ったようだ。

 この流れは、同じく大学途中にプロ入りした長友佑都、武藤嘉紀、室屋成らに続く形。上田も先輩たちが歩んだエリート街道を驀進することになるのかもしれない。





不完全燃焼となったコパ・アメリカ


 未来を嘱望される点取り屋にとってコパ参戦が重要な節目になったのは紛れもない事実だろう。彼は初戦・チリ戦にスタメンに名を連ねたのを皮切りに、ウルグアイ戦とエクアドル戦でジョーカーとして投入されるなど全3試合に出場。チリ戦では4度の決定機を決められず、エクアドル戦でも惜しいチャンスを逃し、世界の高い壁を痛感することになった。

「上田さえ決めていたら、日本は1次リーグを突破してブラジルと準々決勝を戦えていた可能性が高かった」という声も出たほど。ある意味、「コパ敗退の戦犯」と揶揄されるような苦い経験をしたのである。

「第3者の意見はもちろんあるし、それがプロフェッショナル。僕はあの環境で唯一、プロじゃない存在ではありましたけど、日本代表っていうプロ集団の中の1人と見られていたのは間違いない。活躍できなかったらいろいろ言われるのは当たり前だと思います。僕を見てくれている人がいる中で活躍できなかった自分がただ情けなかった。そういう思いはあります。

 あの大会で何が足りなかったかというのは明確には分からないです。大舞台で決められなかった理由がハッキリしているのなら、そこにトライするだけで僕の選手生命は終わっちゃう。それじゃあ、面白くないですよね。局面局面で何ができるかというのは結局、自分が持っている経験値が大きいと思うんです。未知の環境や雰囲気、質の中で何を出せるかはやっぱり経験によるところが大事だし、高いレベルで積み重ねていく必要があるなとコパでも感じました。

 大学でやっている時は余裕があるし、判断もしやすいですけど、その選択肢が限られるくらいの環境に身を置きたいと思った。それもプロ入りを決断した1つではありました」と上田は不完全燃焼に終わったコパに対する複雑な胸中をのぞかせた。


鹿島で始まる逆襲


 ただ、本人が言うように、より高いレベルに身を投じなければ、ああいう大舞台で確実に点を取れるFWに飛躍するのは難しい。それはA代表で活躍する誰もが認めるところだろう。一緒にコパ・アメリカで戦った川島永嗣や岡崎慎司、柴崎岳にしても、Jリーグや欧州で数々の修羅場をくぐってきた。その領域に達するためにも、常勝軍団・鹿島でレギュラーをつかみ、ゴールを量産し、いち早く海外へ行くこと。それを果たせれば、東京五輪やA代表定着といった大きなテーマに自ら手が届くはずだ。

「海外移籍した(安部裕葵=バルセロナや前田大然=マリティモら)同世代の仲間のことは刺激になりますけど、僕はまだそこの土俵に立てていない。でも負けてるとは思ってないし、彼らにも勝てる部分はあると感じてる。そこを出していくためにもプロの実績、経験を積みたい。間違いなくコパに出て海外でやりたいって気持ちは強くなった。僕は代表が全てだとは決して思ってないし、東京五輪に出ることが目標でもない。自分は自分のキャリアを積みながら、最終的に彼らを追い越せるような存在になれたらいいかなと思ってます。

 将来的には5大リーグに行ければいいですけど、僕の理想はどの環境、どの状況でも点の取れるFWになること。出場時間も環境も国もチームメートも関係なく点を取れる、そういう存在になれればいいと思っているので。スペインだったり、ドイツだったり、主要国で活躍したいって思いはありますけど、どこでも活躍できるのがいいFW。僕はコパだろうが、大学の練習試合だろうが決めたいって気持ちはいつも同じ。そうなれるように努力していきます」

 飽くなき向上心を前面に押し出している上田。さしあたって乗り越えなければならないのは、鹿島というハードルの高いクラブでのFW争いに勝ち抜くことだ。

 鈴木優磨がシント=トロイデンへ移籍したとはいっても、最前線にはセルジ―ニョや伊藤翔、土居聖真や金森健志らがいて、森保監督から信頼を寄せられる上田といえども、ポジションが保証されているわけではない。鈴木満強化本部長は「31日の浦和レッズ戦から戦力になってほしい」と期待を寄せたが、彼のプロデビューは果たしていつになるのか。期待通りの結果を残せるのか。そこは大いに気になる。

「プレースタイル的に大迫勇也に最も近いFW」とも目される万能型だけに順調に伸びて行けば、森保ジャパンの救世主になってくれることも考えられる。コパの挫折を糧に泥臭く這い上がる上田の逆襲が楽しみだ。

(取材・文:元川悦子)

【了】


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