日刊鹿島アントラーズニュース

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2024年12月14日土曜日

◆シーズンを通じて“何かが足りなかった”2024年の鹿島。鬼木達新監督に託された再建のポイントは?(サッカーダイジェスト)






 通常なら4位や5位のチームの監督がこれほどコロコロ変わったりはしない。鹿島というのは、それだけ勝利への重圧の強い集団ということ。鬼木監督もそれを理解したうえで、オファーを受けたはずだ。

 ただ、鬼木監督に常勝軍団復活への過度な期待を寄せすぎるのもいいとは言えない。まずは新指揮官が腰を据えてマネジメントできるような環境作りを進めていくのが第一だ。そういう意味で、中田FDら強化部に託されるものは少なくない。


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◆シーズンを通じて“何かが足りなかった”2024年の鹿島。鬼木達新監督に託された再建のポイントは?(サッカーダイジェスト)








いち早く2025年以降に舵を切ったということなのだろう


 ヴィッセル神戸の連覇で幕を閉じた2024年のJ1。今季こそ2016年以来の王者奪還・常勝軍団復活を目ざした鹿島アントラーズだったが、最終的には5位でフィニッシュ。アジア・チャンピオンズリーグ圏内にも手が届かなかった。

 ルヴァンカップは3回戦で敗退、天皇杯はベスト8止まりとカップ戦も逃し、これで8年間、国内タイトル無冠という現実が重くのしかかっている。

 ご存じの通り、今季の鹿島はFC町田ゼルビアなど国内複数クラブで指揮を執ったランコ・ポポヴィッチ監督率いる新体制でスタートした。昌子源(町田)が移籍し、荒木遼太郎がFC東京へレンタルで赴くなど、2023年のメンバーが複数人、外へ出たにもかかわらず、補強が少ない状況だっただけに、開幕前から懸念される要素はあった。しかもキャプテンの柴崎岳がキャンプで負傷。長期離脱する事態に陥り、暗雲が立ち込めた。

 そのなかでポポヴィッチ監督はFWの知念慶をボランチにコンバートし、その知念が開幕の名古屋グランパス戦から対人の強さを発揮し、佐野海舟(現マインツ)とともに中盤に安定感をもたらした。

 さらに大卒ルーキーの右サイドバック濃野公人が開幕スタメンを奪取。彼の得点能力を活かす攻撃パターンも構築できた。新戦力のチャヴリッチも予想以上の働きを見せた。こうした成果もあって、名古屋戦の3-0から好発進し、5月には6戦無敗と破竹の勢いを披露。前半戦の折り返しだった6月22日の浦和レッズ戦の段階では、町田に続く2位につけていた。

 当時の吉岡宗重FDも「今季前半は首位ターンしたいと考えていたが、2位というのは今後の伸びしろを含めてまずまず。監督が変わり、新体制で始まったチームとしては悪くない位置にいると考えています」と前向きに発言。「特に攻撃面は改善している。鈴木優磨以外のところから点を取れるようにしてほしいと監督にお願いしていたが、2人目・3人目の動きを出しつつ、組織的にゴールできるようになってきた」とも語り、その時点の総得点34という数字を高く評価していた。

 しかしながら、6月のガンバ大阪、神戸との上位対決で勝ち切れず、後半戦の展開に不安がよぎった。そのタイミングで佐野がチームを離れ、同じ7月にチャヴリッチが負傷離脱。夏の中断が明けた8月以降は、濃野の右サイド攻撃を相手が徹底対策してきたことで、思うように得点が取れなくなった。

 指揮官の固定メンバー起用も災いし、8月11日のジュビロ磐田戦から6戦未勝利というまさかの事態に直面。9月には天皇杯も落とし、最終的にクラブは10月5日のアルビレックス新潟戦直後に、ポポヴィッチ監督と吉岡FDの更迭という大ナタを振るう決断を下した。

 そこから残り6戦は中後雅喜監督が暫定的に指揮。パリ五輪が終わったばかりのOB羽田憲司コーチも指導スタッフに加わった。強化トップも今年から強化に携わったばかりの中田浩二がFDに就任し、陣頭指揮を執った。

 まだJ1タイトルの可能性が残ったこの時期の大幅な体制変更は見る者に驚きを与えたが、鹿島としては「いち早く2025年以降に舵を切った」ということなのだろう。

 そこからはポポヴィッチ体制で構想外のような扱いをされていた津久井佳祐や舩橋佑ら若手も使われるようになり、前向きな機運が生まれた。新体制初陣だった10月19日のアビスパ福岡戦では、師岡柊生をトップに据え、鈴木を左サイドに回すといった新たなチャレンジにも打って出た。

 これはあまり機能せず、推進力が出なかったが、続く11月1日の川崎フロンターレ戦で鈴木・師岡の2トップにトライしたところ攻撃が大きく活性化。濃野の負傷離脱を受けて三竿健斗が右SBで新境地を開拓するなど収穫もあった。


鹿島には鹿島の戦い方がある




 最後までその流れが続けば良かったが、終盤の重要局面となった名古屋・京都サンガF.C.との2試合で連続ドロー。この時点でJ1タイトルもACLも難しくなった。結局、中後体制の6戦は無敗で乗り切ったものの、鹿島はシーズンを通して「何かが足りない」という印象は拭えなかった。

 その1つは、鈴木依存の攻撃から完全に脱することができなかった点だろう。昨季14点、今季15点と彼が傑出した得点能力を誇るFWだというのは誰もが認めるところだが、もう1人くらい二桁ゴールを取れる人材が必要なのは確か。

 前半戦はチャヴリッチが結果を残し、終盤になって師岡が大きな成長を遂げたものの、決定力という部分ではまだまだ十分とは言えない。そこは2025年に向けての大きなポイントになってきそうだ。

 植田直通・関川郁万の両センターバック頼みの守備陣にも課題があった。安西幸輝を含めて最終ラインの3人はほぼ休みなく稼働。それが夏場以降の下降線につながったと見る向きもある。

 CBの補強に関しては、夏に吉岡FDも「必要だ」と話していて、実際に取りに行ったが、話がまとまらなかったのだろう。欧州から戻ってきた三竿をCB併用で使えるという算段もあったはずだが、それも思うようにはいかなかった。そこの補強も来季に向けてはマスト。目下、中田FDらが奔走しているに違いない。

 12月12日には、クラブOBで川崎時代に7冠を獲得した名将・鬼木達監督の就任が正式発表された。羽田コーチと佐藤洋平GKコーチはチームを離れたが、中後監督がコーチに復帰し、他の鹿島OBもスタッフ入りすると見られている。

 そういったなか、鬼木監督がいきなり鹿島を大躍進させようと思うなら、やはりそれ相応の戦力が整わなければ難しい。まずは補強の動向を慎重に見ていくべきだ。

 そのうえで気になるのは、新指揮官が志向するサッカースタイル。鹿島は川崎とはベースの異なるチーム。同じようにパスをつないで敵を凌駕していく形をすぐに実践しようとしても、スムーズに行くとは言い切れない。

 中長期的にはその方向性を目ざすのは間違っていないが、やはり鹿島には鹿島の戦い方がある。それを念頭に置きつつ、新たなチームを構築していくべきだ。

 鹿島の指揮官というのは、常に勝利と内容の狭間で苦悩してきた。タイトルが取れなければ首を挿げ替えられるのも常。それが2020年以降の5年間に6人もの監督が采配を振るうという目まぐるしい展開につながった。

 通常なら4位や5位のチームの監督がこれほどコロコロ変わったりはしない。鹿島というのは、それだけ勝利への重圧の強い集団ということ。鬼木監督もそれを理解したうえで、オファーを受けたはずだ。

 ただ、鬼木監督に常勝軍団復活への過度な期待を寄せすぎるのもいいとは言えない。まずは新指揮官が腰を据えてマネジメントできるような環境作りを進めていくのが第一だ。そういう意味で、中田FDら強化部に託されるものは少なくない。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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