首位の鹿島、2位の川崎と唯一対戦を残している浦和
J1優勝争いのキャスティングボードを握るのは、昨季にわずかのところで優勝を逃したクラブになりそうだ。浦和レッズの日本代表DF槙野智章は「変に、どこかに感謝されないように」と、その日程を意識している。
現在首位の鹿島アントラーズは勝ち点67、2位の川崎フロンターレは同63を持っている。すでに優勝はこの2チームに絞られて、リーグ戦残り3試合となっているが、唯一この両チームとの対戦を残しているのが浦和だ。
浦和は今季、シーズン途中でミハイロ・ペトロヴィッチ監督との契約を解除して堀孝史コーチを監督に昇格させて戦っている。リーグでは7位と苦しい状況にあり、昨季に年間勝ち点1位を取ったチームは早々に優勝争いから脱落した。しかし、ここにきて浦和が優勝争いのカギを握っている。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝に浦和が進出していることもまた、状況の複雑さに拍車をかけている。
浦和はACLの決勝の第1戦を11月18日に敵地サウジアラビア、第2戦を25日にホーム・埼玉スタジアムで戦う。しかし、この両日はともにJ1の開催日であり、本来であればその日程で浦和と対戦するはずだった鹿島と川崎の両者は、浦和に付き合う形で日程変更を余儀なくされているのだ。
鹿島、ホーム浦和戦は大の苦手カード
まず、鹿島は11月5日に前倒しする形で浦和と対戦予定。前週のリーグ戦から1週間という感覚に変化はなく、日程に大きな影響はない。しかし、先に試合結果が出ることで、川崎にとって大きなモチベーションにも、あるいは大きなプレッシャーにも変わる可能性を秘めている。
鹿島にとっては心強いはずのホームでの浦和戦だが、これが近年では大の苦手カードになっている。カシマスタジアムでの浦和戦では2010年のリーグ開幕戦で勝利して以来、昨季のJリーグチャンピオンシップ決勝戦も含めて7戦2分5敗と相性は悪い。鹿島はこの浦和戦で勝利すれば、11月18日に川崎がガンバ大阪に敗れた場合に優勝が決定するものの、目の前に立ちはだかるのは、近年の成績を見ればこれ以上のない難敵だ。
また、川崎は11月25日に予定されていた試合が29日に変更されることになった。純粋に12月2日の最終節まで中2日という過密日程になり、最後の最後にラストスパートが必要な2試合を厳しい日程で戦うことになる。
浦和がACL決勝の直後で精神的にも肉体的にもピークを越えた瞬間に対戦することは悪くないが、逆転優勝を狙う立場で最終節までの踏ん張りが必要な状況では痛しかゆしだ。
川崎、トラウマの残るスタジアムで浦和戦
さらに、川崎は浦和との対戦がアウェーゲームとなる。ACL準々決勝でトータルスコア4-1からの大逆転を許したトラウマの残るスタジアムであり、その埼スタでの直近10試合は3勝2分5敗と決して分は良くない。逆転優勝に向けた大きな関門になると言えそうだ。
浦和の日本代表DF槙野智章は、優勝争いを繰り広げる2チームとの対戦を残している状況を受け、「変に、どこかに感謝されないようにしたい」と話した。今季は悲願のリーグタイトル奪還を果たせなかった浦和だが、その戦いぶりが鹿島と川崎の優勝争いに大きな影響を与えるのは間違いのないところだ。
【了】
轡田哲朗●文 text by Tetsuro Kutsuwada
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images
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