
日刊鹿島アントラーズニュース
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2018年2月6日火曜日
◆鹿島で躍動する内田篤人。コンディションは良好、「背番号2」が早くも示す存在感(フットボールチャンネル)

約7年半ぶりに鹿島アントラーズへ復帰した内田篤人(前ウニオン・ベルリン)が、開幕へ向けてしっかりと居場所を築きあげている。敵地で3日に行われた、J2水戸ホーリーホックとのプレシーズンマッチで右サイドバックして先発。移籍後では最長となる81分間のプレーのなかで、キャプテンのMF小笠原満男とのホットラインを蘇らせただけでなく、途中出場の安西幸輝を背後から上手くフォロー。「使われる側」と「使う側」の両方で、まばゆい輝きを放ちつつある。(取材・文:藤江直人)
猛然とスプリントを開始した背番号2
「最終ラインの裏ではなくて、相手のキーパーのところまで斜め前に入っていくので、そこを見ていてください」
同じ茨城県内にホームタウンを置く、水戸ホーリーホックとプレシーズンマッチで対峙する恒例のいばらきサッカーフェスティバル。敵地ケーズデンキスタジアム水戸で3日に開催された第13回大会のハイライトのひとつが、37分に飛び出したビッグプレーだった。
ハーフウェイラインからちょっとだけ敵陣に入った右サイドで、小笠原がボールを受けて前を向いた瞬間だった。右タッチライン際にポジションを取っていた内田が、猛然とスプリントを駆け始める。
試合前の言葉通りに縦ではなく斜め前へ、右角付近からペナルティーエリア内へ侵入するルートをたどりながらどんどん加速していく。そこへ寸分の狂いもなく、約30メートルはあった小笠原からの縦パスが入ってきた。
「試合前からずっと言っていたことなんですけど、ああやってボールが出てくるのはやっぱりすごいと思いますね」
トラップしながらさらに前へ抜け出した時点で、相手ゴールとキーパー松井謙弥の姿がはっきりと見えた。マークを受け渡すのか。あるいは、そのまま追走するのか。一瞬で生まれたアントラーズのチャンスに、ホーリーホックの守備陣が混乱をきたす。
最終的には対面にいた左サイドバック、田向泰輝が必死にアントラーズの「2番」を追った。間に合わないと察したのか。最後は背後から、一か八かのスライディングタックルを仕掛ける。
ペナルティーエリア内で激しく倒されたものの、主審のホイッスルは鳴らない。起きあがりざまに思わず苦笑いを浮かべた内田だったが、小笠原と久しぶりに開通させた“ホットライン”に感じた決して小さくはない手応えは、試合後に残した短い言葉のなかに凝縮されていた。
「まあ、(小笠原)満男さんとは(前にも)一緒にやっているからね」
「これからもっとよくなると思う」

ブンデスリーガ1部の古豪シャルケ04へ旅立ったのが2010年7月。当時のフィールドプレーヤーで、2018シーズンに臨むいま現在もプレーしているのは小笠原と、あとは親しみを込めて「ヤス」と呼んでいるMF遠藤康しかいない。
その遠藤が、あわやPK獲得かと思われたビッグプレーの直前に内田の右前方にポジションを取っていた。しかも、巧みに内側へスライドして相手の関心を引きつけながら、内田が前へ駆け抜けるスペースを作り出していた。
小笠原と同じく、旧知の間柄に育まれた“あうんの呼吸”のなせる業なのか。再び苦笑いを浮かべながら、内田は意外な言葉を返してきた。
「ぶっちゃけ、僕はヤスとは一緒にやっていないんですよ。仲がいいからやっているように思われるけど。だから僕とヤスとか、右の前の選手との関係がもっとよくなれば、僕もその選手ももっとボールをもらえるようになるので」
同じ1988年生まれでも内田は3月27日の早生まれで、11日後の4月7日に産声をあげた遠藤は一学年後輩になる。ルーキーイヤーの2006シーズンから活躍した内田と、5年目の2011シーズンから台頭した遠藤は同じピッチ上でほとんど共演を果たしていなかった。
もっとも、性格はお互いに熟知し合っているからこそ、時間が積み重ねられるごとにコンビネーションも熟成される。自身の経験を踏まえながら、内田は毅然とした表情で前を見すえた。
「僕がシャルケに入ったときも、最初は何ヶ月かかかったから。そこは時間がかかる。しょうがない。後半にはレオ(・シルバ)からも何本かあった。あとちょっと届かないんだけど、あれが届くようになれば裏にも抜けられる。まだまだだけど、だからこそこれからもっとよくなると思う」
才能豊かな後輩たちの姿に感じた頼もしさ
昨シーズンにアルビレックス新潟から加入し、中盤の底で必要不可欠な存在となっているレオ・シルバだけではない。鹿島アントラーズユースから昇格して4年目の21歳で、スーパーサブからレギュラーの一角を狙うFW鈴木優磨との可能性も感じさせた。
1‐1で迎えた63分。直前にFWペドロ・ジュニオールに代わって投入されていた鈴木が、敵陣の中央でボールを受ける。数人の相手に囲まれながらもボールをキープしている間に、内田はスルスルとポジションを上げていった。
その姿を視界の片隅にとらえていたのだろう。相手を引きつけたうえで、鈴木が絶妙の横パスを右サイドへ通す。そのまま駆けあがった内田は、ペナルティーエリアに入ったところで左へ急旋回。シュートコースが空いたのを見極めたうえで、左足を一閃した。
ゴール右隅を狙った一撃はやや当たり損ねたこともあって、後半開始から出場していたキーパーの本間幸司に横っ飛びでキャッチされてしまった。それでもシュートに至る過程が、未知の選手たちと知り合えている手応えが内田の表情を綻ばせる。
「アイツ(鈴木は)ボールも要求するけど、いいポイントというのもやっぱりわかっているからね」
69分からは遠藤に代わって、東京ヴェルディから完全移籍で加入した安西幸輝が投入された。登録はディフェンダーで、内田と同じ右サイドバックを本職とする22歳は、攻撃的なセンスを買われて右サイドの攻撃的なポジションでも試されている。
ジュニアからヴェルディひと筋で育ってきた安西は、いつしか目標とする右サイドバックとして内田の存在を掲げるようになった。はからずも憧れの存在と、同じ時間を共有できるようになった1月の宮崎キャンプ。安西は勇気を出して内田に尋ねた。
「海外でどのように守備をしていたのかが聞きたかった。外国人の動かし方ってすごく難しいと思うんですけど、すごく上手くやっていたので。そのときに右サイドで篤人さんが後ろにいるときには、僕の背中で相手のパスコースを消しながらディフェンスをしてほしいと言われました」
事前に意思の疎通がしっかりと図られていたこともあって、右サイドで縦の関係を築きあげたホーリーホック戦の69分以降も混乱をきたすことはなかった。迷いや不安がなかったからこそ、安西の攻撃力がより輝きを放つ。
79分には3‐3の同点に追いつくボレーを決めたのが安西ならば、86分のDF山本脩斗の決勝ゴールをアシストしたのも、内田がベンチへ下がった後は右サイドバックに回っていた安西だった。
自らとの交代でピッチに入り、攻撃にアクセントを加えた2年目のMF安部裕葵を含めて、才能豊かな後輩たちの躍動する姿に内田も頼もしさを感じている。
「アイツ(安西)は前のポジションでもいけるからね。(安部)裕葵を含めて、ボールをもってから相手に突っかけられる。2人とも小さいけど、右も左もできるのですごく面白いんじゃないですか」
「デュエルっていま流行っているんでしょう」

安部との交代でベンチに下がったのは81分だった。宮崎キャンプ中に行われたJFLのデゲバジャーロ宮崎、J2の徳島ヴォルティスとの練習試合を超えて、アントラーズに復帰後では最長となるプレー時間をマークした。試合前から自身を鼓舞するサポーターのチャントも耳に入った。
「久しぶりにお客さんが入ったなかでやると、練習やキャンプで45分間やるのとはやっぱり違うからね。こういう寒いなかで足を運んでもらって、ユニフォームを着て応援してもらえるのは、サッカー選手として嬉しいこと。今シーズンはもっと勝って、喜びを分かち合いたいですね。
プレー時間は特に気にしていなかったけど、6人まで代えられるので、試合前は『いけるところまでやろう』という話はしていました。90分間あればどこかでごまかせる時間も生まれてくるので、90分間もたせようと思えばもたせられる、という感じですかね」
小笠原とのコンビネーションを蘇らせ、遠藤や鈴木とも意思の疎通が図られつつあることを示した81分間。もちろん「使われる」だけではない。背後から安西を「使った」手応えを含めて、すべてが順調に進んでいるからこそ言葉も弾む。
「何かデュエル、デュエルっていま流行っているんでしょう、って感じですよね。デュエルしたって書きたいんでしょう、って感じだけど、別に昔からやっていることだから」
誰もが気にしていて、内田本人をして「まったく問題ない」と言わしめている右ひざの古傷。それに関する質問を先読みするかのように、帰りのバスに乗り込む際には、日本代表を率いるヴァイッド・ハリルホジッチ監督が日本サッカー界に広めた、「デュエル」を駆使しながら報道陣の笑いを誘った。
上海申花(中国)をカシマサッカースタジアムに迎える、14日のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループリーグ初戦へ。そして、敵地で清水エスパルスと対戦する25日のJ1開幕戦へ。7年半もの時空を超えて、愛してやまないアントラーズのなかに内田はしっかりと居場所を築きつつある。
(取材・文:藤江直人)
【了】
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