◆明治安田生命J1リーグ▽第18節 名古屋1―1鹿島(26日・豊田スタジアム)
1―0で迎えた前半終了間際。鹿島のレネ・バイラー監督はテクニカルエリアの最前線に立ち、手のひらを下に向け、腕を上下させた。DFラインで回していたボールを、そのまま保持するように指示したのだった。元々、試合中のアクションが少ない監督。それよりも目を引いたのは内容だ。素早く前線へというサッカーを掲げてきた中で、送ったメッセージは真逆の「急ぐな」だった。
試合後、MF仲間隼斗は「どういうサッカーでも厳しい時期になってきている。試合前から、後ろで受ける時間を作ろうと話していた」と明かした。26日はナイターにも関わらず気温は28度を超え、湿気もあった。さらに天皇杯・大宮戦から中3日のアウェー戦。限りある体力を考慮し、最終ラインで回す時間、戻す選択が多かった。気温40度を超えるエジプトでの指揮経験から、問題視していなかったバイラー監督も日本の暑さに直面し、対応していくことを決めた。
データにも表れる。名古屋戦のチーム全体の走行量は109・85キロ。今季の1試合平均115・34キロを下回った。同じく平均201本のスプリントは164本。この時期は下がる傾向にあるが、「意図」が加わって顕著になった。仲間は「ただ後ろで時間を作っている訳ではない。前を見つつ、ボールを動かしている。動き出すタイミングを作っている。そういうことは(チームで)共有できたと思う」と縦への精度を高め、不必要な消耗を防ぐ意図があることを明かした。
消耗を意識し、交代枠もフルに使ったが、最後は重くなる。まだ6月。今後は、さらに気温は上がる。理想のサッカーを貫くか。現実的なサッカーを選ぶか。バイラー監督はタイトルを求められる鹿島指揮官の責任において、現実路線で夏を乗り切ろうとしている。(鹿島担当・内田知宏)
◆【番記者の視点】スプリント減に見る鹿島の現実的選択で夏を乗り切れるか(報知)