日刊鹿島アントラーズニュース

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2024年2月12日月曜日

◆「濃野公人は鹿島アントラーズで大きく飛躍できる」大津高校時代の恩師が明かす素顔「内田篤人さんのような…」【コラム】(フットボールチャンネル)






 Jリーグプレシーズンマッチ『いばらきサッカーフェスティバル』が10日に行われ、鹿島アントラーズは1-0で水戸ホーリーホックを下した。ランコ・ポポヴィッチ監督を招聘して再出発を図る鹿島は、この試合で変化を見せている。中でも、大卒ルーキーの濃野公人は期待を抱かせるパフォーマンスを披露した。(取材・文:元川悦子)


鹿島アントラーズの再出発


 鹿島アントラーズは再出発を図るべく、かつて大分トリニータを皮切りに、FC町田ゼルビア、FC東京、セレッソ大阪とJリーグ4クラブを指揮したランコ・ポポヴィッチ監督を招聘した。昌子源や荒木遼太郎が抜け、外国人選手も揃って入れ替わるなど大きな変革があったため、今季の動向を懸念する声も少ない。

 先月の宮崎キャンプ中には、今季から10番を背負う柴崎岳、エースFW鈴木優磨の両看板選手が揃って負傷。若きDFの柱・関川郁真もケガに見舞われただけに、今季初のお披露目試合となった2月10日のいばらぎサッカーフェスティバル・水戸ホーリーホック戦のメンバー構成が注目されていた。

 指揮官が送り出したのは非常にフレッシュなメンバーだった。まず前線に新加入FWアレクサンダル・チャヴリッチとベテラン・土居聖真を抜擢。ボランチにはこれまで長くFWをやっていた知念慶をコンバートし、樋口雄太と組ませる形を採った。さらに最終ラインも、プロ2年目の津久井佳祐をセンターバック(CB)に据え、右サイドバック(SB)に関西学院大から加入した1年目の濃野公人を起用しており、新顔たちのパフォーマンスが注目された。

 この日の鹿島は序盤からいいリズムでボールをつなぎ、主導権を握った。中盤の知念も大きな展開やパス出しを披露。チームに新たなエッセンスをもたらした。


「ブラボー」「なんで?」明確なポポヴィッチ監督の要求


「基本的には、ボールを動かしながら相手のラインを1歩突破したら、すぐゴールに最短距離で向かうプレーを監督から求められます。縦パスとか、強いパスを付けて、ズレても前から選んでいれば『ブラボー』だし、せっかく前に運んだのにやめたら『なんで?』と言われる。縦パスが入った時の動き出しが意識されてきた感覚はあります」と知念も語っていたが、縦へアグレッシブに攻めていくポポヴィッチ監督のスタイルが根付きつつある印象を見る者に与えたのは事実だ。

 前向きなトライを繰り返した結果、手に入れたのが21分の先制点だ。左サイドでチャヴリッチがボールを奪取。ドリブルで中央まで持ち運び、右から上がってきた藤井智也に展開。藤井がタメを作りながら、ペナルティエリア内に少し遅れて飛び込んできた樋口にラストパスを送り、背番号14がダイレクトボレーで右足を一閃。見事なゴールを奪ったのだ。

 前半の鹿島はこのシーンのみならず、複数の得点機を作った。新戦力・チャヴリッチがコンディション万全でない中、速さや打開力を示し、新たなFWの軸になれそうな予感を漂わせたのは、1つの朗報と言えるだろう。

 そして、右SBの濃野も新人とは思えないほど積極的な攻撃参加を見せ、存在感をアピールした。彼は右で縦に並ぶ藤井智也と近い距離感を取り、お互いがお互いを生かそうという強い意識が感じられた。そこにボランチの知念や樋口、土居も絡んで連動性ある攻撃を何度か構築していたのだ。濃野本人も前向きに次のように振り返った。


恩師が明かす濃野公人の良さ「突き進めるのが長所」


「前半は智也君と結構、いい関係性でゴール前まで持っていくシーンが何度かあったんで、それは練習の成果かなと思います」

 濃野はサガン鳥栖U-15、大津高校、関西学院大学を経て今季から鹿島の一員になった選手。高校時代はFWや左サイドハーフを主戦場にしていたが、大学3年から現在の右SBにコンバートされており、経験はまだ2年のみだ。

 ただ、プロ入り後に右SBに抜擢され日本代表まで上り詰めた毎熊晟矢のような例もあるだけに、彼もまだまだ伸びしろがある。そういう意味でも大きな期待がかかるのだ。

「彼はもともと攻撃的なプレーヤー。SBというポジションでも自分が入っていける時間とスペースが前にあるかどうかをつねに考え、突き進めるのが長所。勝ちにこだわる強気の性格、自己探求心の旺盛さもあるので、鹿島で大きく飛躍できるだけの器があると思います」と大津の恩師・平岡和徳総監督も太鼓判を押していた。そのあたりをポポヴィッチ監督も高く評価し、開幕スタメン候補と位置づけているのだろう。

 鹿島の右SBと言えば、日本代表としてワールドカップに出場した名良橋晃、内田篤人、日本代表経験のある西大伍など数々の名選手が名を連ねる。濃野もその系譜を継いでいける可能性があるのではないかと目されている。


「内田篤人のような…」濃野公人の強みと課題


「『内田篤人さんのような選手』とかよくメディアの方に言っていただくんですけど、自分としてはまだまだ足りないことだらけ。まだ比べられるような存在ではないと思います。でもそういう人たちに追いついて、追い越していきたいですし、自分の良さを上乗せできるような選手になりたいと思っています。

 鹿島を代表する選手、日本を代表する選手になっていくためにも、守備の部分で絶対に行かせない、割らせないっていうところを意識的にやっていかないといけない。攻撃面でも最後のクロスをしっかり合わせるだとか、アシスト、ゴールに繋げるっていう部分にこだわることが大事。それをやらないと、いくら伸びしろがあったとしても伸びていかないなと思うんで、しっかりいろんなことを勉強しながら成長していきたいですね」

 大卒新人らしく、自分自身の課題を明確に言葉で表現できるところも魅力だ。今回は足がつってしまい、71分に須貝英大との交代を強いられたが、90分間高い強度で走り続けるだけのフィジカルも養っていかなければいけない。そのあたりを徹底的に追求していくことが、濃野に求められる重要命題だろう。

 鹿島は後半になって選手が入れ替わってからペースダウンし、攻撃圧力がやや低下したこともあって、追加点を奪えず、1-0のまま終了した。前半はかなりいい内容だったため、複数得点がほしかったところだが、それを奪えなかったのは今後の課題と言っていい。

 それでも柴崎不在の穴を前半ボランチでプレーした知念や後半から出てきた佐野海舟が埋め、鈴木優磨欠場のFW陣もチャヴリッチと土居でやり繰りできそうなメドが立ったことは収穫だ。若い濃野、津久井らも自信や手ごたえを得たはずだ。

 そういった面々が2月23日の開幕・名古屋グランパス戦までにどう成熟度を引き上げていくのか。ポポヴィッチ体制の鹿島がどのような戦いを見せるのか。2週間後のシーズン開幕が非常に楽しみになってきた。

(取材・文:元川悦子)









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