日刊鹿島アントラーズニュース

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2015年12月30日水曜日

◇明日開幕の高校サッカー 注目の逸材4人(THE PAGE)


http://thepage.jp/detail/20151228-00000002-wordleafs

 新春の風物詩のひとつ、全国高校サッカー選手権が30日から首都圏を舞台に開催される。5年後に迫った東京五輪の主役を担う、1997年1月1日以降に生まれた未来の日の丸候補生たちが集うヒノキ舞台。1月11日の決勝戦(埼玉スタジアム)を目指し、熱き戦いに挑む4人の有望株をピックアップする。

■星キョーワァン
[DF/栃木・矢板中央高3年/184cm、77kg]

 サッカーを始めたのは、中学生になってから友人に誘われたのがきっかけだった。それまでは1ヶ月ほど陸上を、あとはカードゲームに夢中なごく普通の小学生だった。
まさに荒削りの星がCBの基本を本格的に学んだのは、地元の強豪校・矢板中央に入学してから。それでも空中戦における無類の強さ、スピード、長いリーチを含めた身体能力の高さを存分に生かし、星キョーワァンは大会屈指の存在に成長した。

 コンゴ人の父と日本人の母との間に東京都内で生まれ、栃木県で育った。キョーワァンは父の母国で「賢い」を表す言葉だ。

「顔はサニブラウンに似ていると言われますけど、いまはオコエといじられています」
 屈託なく笑う18歳は、2015年のスポーツ界に大旋風を巻き起こした2人に続けとばかりに、「自分も結果を残して、ハーフブームに乗りたい」と2回戦で敗退した前回大会の雪辱を期している。

 鹿島アントラーズなどJクラブの練習に参加して、「ヘディングではある程度戦えた」とさらに自信を深めた。自慢の空中戦に挑むときには、「うおぁぁぁ!」と星の低く、太い大声が常に会場に響く。
 アントラーズと日本代表で最終ラインを支え続けた秋田豊が、空中戦で競り合うときに「どうだっ!」と叫びながら、心身両面で相手を圧倒していた光景を思い出さずにはいられない。

 鉄人と呼ばれたレジェンドに通じるメンタルの強さを見込まれ、キャプテンとして臨む最後の冬。中学時代からの盟友で、同じくコンゴを父方のルーツにもつ187cmの長身ストライカー、森本ヒマンと攻守の柱が躍動すれば、ベスト4に進出した2009年度を超える旋風を巻き起こしそうだ。

■神谷優太
[MF/青森・青森山田高3年/178cm、69kg]

 異色の経歴から、メンタルの強さが伝わってくる。山形県で生まれ育った神谷は、小学生のときにテレビ越しに見た東京ヴェルディジュニアのテクニックの高さに一目惚れし、卒業とともに母親と上京。東京ヴェルディのジュニアユースの門を叩いた。

 3年次にU‐16日本代表に選出された神谷は、狭き門を突破してユースに昇格。2013年には東京都国体選抜を優勝に導くなど、トップチーム昇格へ向けて順調に成長していた。しかし、今年1月に突然退団を決意。青森山田へ転入する。

 同じくテレビで毎年のように見てきた、全国選手権への憧憬の念が頭をもたげたのか。神谷自身は「もっと大きく成長したかった」と振り返るが、黒田剛監督の厳しい指導のもと、中高一貫の強豪校の厚い壁に高校2年生の終盤から食い込むには、想像を絶する困難を伴ったはずだ。

 迎えた最初で最後の冬。神谷が託された背番号10にはヴェルディ伝統の多彩なテクニックと、わずか10ヶ月あまりの間に一番下からはい上がってきた努力の跡、その過程でチームメイトたちから勝ち取った信頼感が凝縮されている。

 卒業後には湘南ベルマーレ入りが内定。ミドルシュートに加えてラストパスのセンス、ドリブルでの突破力、正確なFKと得点につながるすべての要素を搭載する司令塔は、憧れの柴崎岳が背負ったエースナンバーに、先輩もなし遂げられなかった優勝という彩りを添えるつもりだ。

■一美和成
[FW/熊本・大津高校3年/183cm、77kg]

 素質を見込まれてポジションをコンバートされる選手は少なくない。高校2年の夏にCBからFWへ転向した大津の一美和成も、その一人だ。
 もっとも、不慣れなポジションというハンデを克服し、今年4月にJ2のロアッソ熊本でJFA・Jリーグ特別指定選手として登録。さらには卒業後のガンバ大阪入りを内定させた右肩上がりの軌跡を見るだけで、計り知れないほど大きなポテンシャルを秘めていることがわかる。
 
 長身を生かし、やや不利な体勢からでも空中戦で強引にシュートにもっていく姿勢がガンバからは評価された。加えて、中学時代は週末にクラブチームのエスペランサ熊本でプレーする一方で、平日にはJFAアカデミー熊本宇城に通って「ボールを止めて、蹴る」の基本をしっかり学んだ。
 いわば「剛」と「柔」を恵まれた体に搭載するストライカーは、中学時代から務めてきたセンターバックの経験を振り返りながら不敵に笑う。

 「相手ディフェンダーが何をされたら嫌なのかが、よくわかりますから」
 帝京で高校日本一に輝いた経歴をもち、生まれ故郷の熊本で1993年に大津の監督に就任。県内屈指の強豪に育て上げた平岡和徳監督は、一美を「変態系FW」と呼んではばからない。ここぞという場面で規格外のプレーを見せる荒削りのエースへの、最大級の褒め言葉といっていいだろう。
 熊本県の常連となった大津の最高位は、2008年度のベスト8。同じくガンバへの入団を内定させているキャプテンのDF野田裕喜とともに、チームの歴史を変える戦いに挑む。

■川中健太
[FW/和歌山・初芝橋本高3年/170cm、56kg]

 小柄な体に群を抜くスピードと多彩なテクニックを搭載し、3年連続出場を果たした初芝橋本の攻撃をけん引する川中は、卒業後の進路をたずねた友人からのツイートにこんな返信を残している。
「大学いかないです!来年の1月からオーストリアのSVホルンってゆうチームにいきます」

 オーストリア3部リーグに所属するSVホルンは、日本代表FW本田圭佑のマネジメント事務所である『HONDA ESTILO』が経営権をもつクラブ。いわば本田が実質的なオーナーであり、今年6月と12月には日本国内でトライアウトを実施している。

 川中が友人へツイートを返したのが9月。さらに「本田のとこちゃうの?」と聞かれた川中は、「そーです!」と返している。

 6月のトライアウトは書類選考、日本国内でのトライアウトを経て、7月には本田立会いのもとで現地オーストリアでの選考と3段階にわかれて実施。その結果として、コンサドーレ札幌のFW榊翔太の完全移籍が発表されている。
 川中も国内選考に参加していて、選考には漏れたものの、その後に状況が変わったのか。ホルン側からはまだ何も発表されていない。謎に満ちた進路を含めて、注目される選手権となりそうだ。

 (文責・藤江直人/スポーツライター)

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