日刊鹿島アントラーズニュース

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2017年1月4日水曜日

◆天皇杯決勝で小笠原が示した、 鹿島に受け継がれる「常勝の精神」(Sportiva)


 元旦に行なわれた天皇杯決勝で川崎フロンターレを2−1で下したあと、鹿島アントラーズの選手たちから、さすがに、弱音がこぼれた。



「休みたいですね、しんどいです」(昌子源)。「早く休みたい」(西大伍)。「すごく休みたいです。身体がキツイ」(鈴木優磨)。この1ヵ月強の間で彼らが漏らした初めての弱音だったかもしれないが、それも無理のないことだった。

 なにせ鹿島は、11月23日から1月1日までの40日間で以下の10試合を、それもすべてが心身ともに擦り切れるような決戦を戦い抜いてきたのだから。

 11月23日 チャンピオンシップ準決勝 対川崎フロンターレ ○1-0
 11月29日 チャンピオンシップ決勝・第1戦 対浦和レッズ ●0-1
 12月3日 チャンピオンシップ決勝・第2戦 対浦和レッズ ○2-1
 12月8日 クラブワールドカップ1回戦 対オークランド・シティー ○2-1
 12月11日 クラブワールドカップ2回戦 対マメロディ・サンダウンズ ○2-0
 12月14日 クラブワールドカップ準決勝 対アトレティコ・ナシオナル ○3-0
 12月18日 クラブワールドカップ決勝 対レアル・マドリード ●2-4
 12月24日 天皇杯準々決勝 対サンフレッチェ広島 ○1-0
 12月29日 天皇杯準決勝 対横浜F・マリノス ○2-0
 1月1日 天皇杯決勝 対川崎フロンターレ ○2-1

 Jリーグチャンピオンシップ準決勝から始まった「黄金の40日間」のラストゲームは、奇しくも始まりと同じ相手との決戦になった。

 初タイトル獲得への執念を燃やし、チャンピオンシップ準決勝のリベンジを誓う川崎は、鹿島にとってある意味、クラブワールドカップ決勝で戦ったレアル・マドリードより難しい相手だったかもしれない。

 試合は延長戦までもつれ込んだが、それでも鹿島の選手たちは悲鳴をあげる身体にムチを打って勝ち切った。2ゴールはいずれもコーナーキックとその流れから。120分間を通してみれば、押し込まれる時間帯のほうが多かったかもしれない。しかし、耐えるべきところでしっかりと耐え、カウンターやセットプレーから勝機を手繰り寄せたのは、この40日間の集大成であり、それこそが鹿島の本質だった。

 この試合のハイライトのひとつが前半18分に小笠原満男が激昂したシーンだろう。ファウルで倒されたあと、中村憲剛にボールをぶつけられた小笠原が怒って詰め寄ろうとして、両チームの選手たちが仲裁に入った。

 だが、小笠原はいたって冷静だった。ゾクッとしたのは、そのシーンを振り返った小笠原の言葉を聞いた瞬間だ。

「それもパフォーマンスのひとつで、本当に怒っていたわけじゃなかった。そういう細かいところにこだわるのは、なんというか、流れを引き寄せるじゃないけど『戦うんだぞ』っていう大事なことだと思う」

 その直後に西と登里享平が接触して揉めたシーンで、クイックリスタートしようとしたのも「あえて」仕掛けていたという。

「(相手が)審判に文句を言っている間に早くリスタートするのも駆け引きのひとつ。そういう駆け引きは、このチームで学んできた」

 いかに勝機を手繰り寄せ、勝つ可能性を少しでも高めるか――。ジーコやジョルジーニョから本田泰人や秋田豊らが学び、それを小笠原も盗んできたに違いない。
 
 くだんのシーンを振り返って、強化の最高責任者である鈴木満常務取締役強化部長が目を細めるようにして語った。

「今日、満男がちょっとエキサイトする場面があったけど、意識してやっているから。やっぱり駆け引きで、あそこで向こうが怯んだというか、駆け引きで勝っている。なんとなくフワッとした中で、ああいうことがあると集中力が増すし、そういうことを計算してやれる満男はやっぱり凄いと今日は思った」

 相手を怯ませた一方で、味方を引き締めたキャプテンの駆け引きが、永木亮太や昌子源、植田直通の目にはしっかりと焼き付いたはずだ。こうした振る舞いは言葉で伝えるものでなく、後輩が先輩の背中を見て学び、受け継いでいくものだろう。

 3週間ほど前のことだ。浦和レッズとのチャンピオンシップを戦い終え、クラブワールドカップを戦うために移動した横浜で、小笠原は「途切らせないことの重要性」についてこのように語っていた。

「タイトルを積み重ねるから強くなれるわけで、これからどんどん勝っていければ、ものすごく強いチームになる。かつて三冠を獲ったり、リーグ三連覇もしたけど、このチームはそういうサイクルで強くなってきた。今も、そこに向かう第一歩を踏み出せたわけで、このあと勝てなくなったら、また一から振り出しになるし、そういう経験を積んだ選手も少なくなってしまう。タイトルを取り続けることで大事なものが繋がっていくから、大事なのはここから。これで満足して勝てなくなったら、何の意味もない」

 その点で、天皇杯を制して手に入れた19個目のタイトルの価値は、18個目のタイトルとなったチャンピオンシップで得た自信を、より確かなものにしてすぐに二歩目を踏み出せたことにある。

 鹿島が無冠に終わったのは、若返りを図った13年、14年シーズンの2年間だけ。15年シーズンにナビスコカップで優勝し、16年シーズンでチャンピオンシップと天皇杯を勝ち取り、クラブワールドカップで決勝に進んだ今、遠藤や西、柴崎岳は風格を漂わせ、昌子や土居聖真、植田は立派な主軸となっている。

 この先のチーム作りについても余念がない。主軸のひとり、欧州移籍の噂が絶えない柴崎について、鈴木強化部長が言及する。

「オファーはまだ来ていないし、いつ来るか分からないけど、覚悟はしているし対策も立てている」

 16シーズンに柴崎が務めたボランチにはレオ・シルバを、左サイドハーフには金森健志を獲得。さらに、層の薄いFWにはペドロ・ジュニオールを、左サイドバックには三竿雄斗を補強し、計画的に各ポジションの選手層のバランスを整えている。

 その背景には、危機感もある。

「この1か月はいいサッカーをして、タイトルも2つ取ってすごく伸びている。だけど、冷静に分析すれば、セカンドステージ(11位)もルヴァンカップ(グループリーグ敗退)でもあんな結果になって、ひとつサイクルが乱れると、まだ崩れてしまうチーム。この4年間の勝ち点をみると59、60、59、59と、『60』の壁を打ち破れないでいるから、競争をもっと激しくするような補強をして、うまくいけば勝てるではなく、力で勝てるチームを目指してやっていきたい」

 J1は来る17年シーズン、賞金と均等配分金の増加に加え、強化配分金が新設されるため、優勝チームが手にできる総額は最大で21億5000万円となり、16年シーズンの4倍以上の額になる。「それが入ればまた投資ができて、良いサイクルになる。だから16年以上に17年が大事になる」と、鈴木強化部長は力を込めた。20個目のタイトルどころか、3年後、5年後の「一強」に向けて鹿島は突き進んでいる。

 このままでは、どんどん引き離されてしまいますよ、いいんですか――。

 そんな言葉を、J1のライバルクラブの監督や選手ではなく、フロントの方々に伝えたい。もっとも、二十数年の積み重ねが今の鹿島を作り上げているわけで、追いつくのは簡単なことではないのだが。

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jleague_other/2016/01/03/___split_43/index.php

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