日刊鹿島アントラーズニュース
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2017年6月10日土曜日
◆露呈した“CB問題”…日本代表はイラク戦で昌子源を先発させるべきか?(Goal)
シリア戦における昌子のパフォーマンスは散々なものだった。しかし、森重はいない。槙野、三浦では“急造”になる。限られた選択肢の中で、ハリルホジッチ監督はイラク戦で昌子をチョイスすべきなのか?
2017年6月7日は、日本代表に新たなセンターバックコンビが誕生する日になる——はずだった。キリンチャレンジカップのシリア戦。仮想イラクと位置付けられたテストマッチで、センターバックで先発出場したのはキャプテンを務める吉田麻也と、これが代表3試合目となる昌子源だった。
昨年12月のクラブ・ワールドカップでレアル・マドリーとの決勝で見せた1対1の強さ。鹿島での風格すら漂わせるリーダーシップ。昌子であれば、しばらく“無風状態”だった日本代表のセンターバック争いに割って入れるのではないか。そんな期待は大きかった。
昌子が最後に日本代表としてピッチに立ったのは約1年前、16年6月3日のことだ。キリンカップのブルガリア戦。6-2とスコアが大きく開いた後半39分、吉田に代わって出場した。その試合後のミックスゾーンで、昌子がこんな話をしていたのを強烈に覚えている。
「麻也さんと森重さんからしたら、今の俺は“眼中”に入っていないと思う。そんなのは2人にとっても面白くないし、日本代表にとっても良くない。もっと刺激を与えられるようにならないと」
ここ数年、日本代表におけるセンターバックは吉田と森重真人(FC東京)のコンビが不動だった。昌子はコンスタントに代表には入っていたものの、ライバルと呼ぶには経験でも技量でも大きな開きがあった。しかし、この1年でその立場は大きく変わった。
だが、昌子のシリア戦のパフォーマンスは散々なものだった。ロングボール1本で簡単に入れ替わられ、クリアが中途半端になってピンチを招き、後半にはヘディングでかぶるという決定的なミスをし、失点に絡んでしまった。
「自分自身も最初の入りは堅かったかなって思いましたね」
いつもなら当たり前にできていることができない。それが焦りを生み、またミスにつながる。負のスパイラルにはまってしまっていた。
「普段Jリーグでパッと顏を上げても、敵が遠いから、落ち着いてパスを出せたりするけど。パッと上げたら、『わっ近い』って。でも、よく見たら近くなかったりして。自分でもアガっているのかなって」
なぜ昌子は“本来の実力”を発揮できなかったのか?
センターバックのミスは個人だけの責任ではない
昌子の出来を論じる前に、センターバックというポジションの性質を整理しておくことが必要だろう。
どれほど個の力が強かったとしても、センターバックが1人で守ることは不可能だ。特に4バックではセンターバック2人の連携が重要になる。だが、吉田と昌子がコンビを組むのはこれが初めて。しかも今回は海外組とJリーグ組が合流するタイミングが異なり、Jリーグ組は試合の2日前に合流していた。2人が連携面を合わせる時間が十分になかったわけだ。
さらに、昌子にとって難しかったのは鹿島とのシステムの違いだ。鹿島では4-4-2でボランチが2人いるが、シリア戦ではアンカーに山口蛍を置いた4-3-3だった。ボランチの枚数が2枚か1枚かによってセンターバックのプレーは変わる。
「蛍くんが行くと、どうしてもスペースが空いてしまうので、そこに僕が行くのか、麻也くんが行くのかとか、そういうところがちょっと難しかったかなぁって思いますね」
1ボランチでポイントになるのは、“ボランチ脇”にできるスペースに入ってきた相手を誰がつかまえるのか。インサイドハーフが下がるのか、あるいはセンターバックが前に出ていくのか。
センターバックが前に出た場合、最終ラインにスペースができるので、もう1人がカバーする。前半は吉田と昌子がお互いの癖がつかめず、チャレンジ&カバーのタイミングが遅れる場面が見られた。
「1対1になれば、そこは自分自身がいつもやっていることをやればいいのかなぁって思っていたんですけど、どうしても連携のところで危ないところはあったのかなと」
「自分はかなり声を出すタイプ」と言うように、昌子はコーチングが得意なセンターバックだ。味方の選手を動かし、自分が守りやすいように誘導し、ボールを奪い取る。だが、自分のやり方を伝える時間も、理解してもらう時間も足りなかった。
日本代表はそれぞれのチームでのやり方を、短期間ですり合わせなければいけない。ただセンターバックというポジションは、ある程度の時間が必要なのも確かだ。
イラク戦では昌子を先発させるべきか?
昌子は「予選じゃなくて良かった」と本音を漏らしたが、シリア戦はあくまでもテストマッチだ。イージーミスをしようが、失点に絡もうが、重要なのは本番のイラク戦で良いプレーができるかどうかだ。むしろ、テストマッチで多くの課題が出たことはプラスに捉えてもいい。
「だんだん落ち着いてできるようになったし、相手の特長をつかんで、1対1でも対応できてきたと思うし。少し危ないシーンのあとに、麻也くんと『ここはこうしてほしかった』『俺はこうしたかった』という話もできたいし。イランへ行ったら、時間も少しあるので、少しずつ。深めていけたらなって」
今回、ハリルホジッチ監督は森重を呼ばなかった。つまり、昌子がダメだったからといって、イラク戦で”いつもの“吉田&森重のコンビに戻すことはできない。
昌子の他には槙野智章、三浦玄太というセンターバックも招集されているが、イラク戦にぶっつけ本番で臨んでもうまくいくという保証はない。何よりも、1試合のパフォーマンスで昌子を諦めてしまっては、シリア戦の90分間が無駄になってしまう。
センターバックというのは失敗を積み重ねる中で良くなっていくポジションだ。今ではキャプテンマークを着けるようになった吉田も、何度もミスを繰り返してきた。
「まあ、切り替えるしかないので。巻き戻しできるなら、したいけど、できないものはしかたないので、この結果をしっかり受けとめて。いろんな人もこうやって上り詰めている。センターバックなんてみんなそうだと思うし、今まで失点に絡んだことがないセンターバックなんて絶対におらんと思う。大きな大会、大きな試合になればなるほど、失点したときの重さがまたあると思うし。こういう経験も出た人しかできないから。痛い思いをして強くなる」
涙の数だけ強くなれる——。
そんなフレーズが昔のヒット曲にあったが、これをセンターバックに当てはめればこうなるだろう。
ミスの数だけ強くなれる——。
失敗を成長につなげられることは、鹿島での昌子を見ていれば明らかだ。アウェーのイラク戦。何よりも結果が求められるからこそ、この男の成長力に賭けてみるべきだろう。
文=北健一郎
露呈した“CB問題”…日本代表はイラク戦で昌子源を先発させるべきか?
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