W杯本大会まで、残された時間はわずかだ。サバイバルレースも最終局面を迎えており、生き残るには23日のマリ戦と27日のウクライナ戦でのアピールは不可欠な要素だと言える。そして、約半年ぶりに日本代表に復帰したMF柴崎岳も、指揮官が求めるものを表現しながら、自身の持ち味を発揮していこうとしている。
今季からリーガ・エスパニョーラを戦うヘタフェに加入。10番を託されて開幕スタメンを飾ると、4試合連続先発出場を果たし、第4節バルセロナ戦では鮮やかなボレーでリーガ初得点を記録した。しかし同試合で負傷すると、約3か月の離脱を余儀なくされ、昨年11月に欧州遠征を行った日本代表への招集も叶わなかった。負傷から復帰後は先発出場もあれば、途中出場もあり、ここ4試合は連続してベンチスタートと苦しい時期を迎えている。
開幕直後にピッチに立ち続け、得点を奪ったものの、本人は「そこまで良いスタートを切ったとは思っていない」ようで、「なかなか難しいシーズンになっている印象がある」とここまでのシーズンを振り返る。しかし、厳しい中でも「徐々に自分の中で克服しているものもある」と手応えを得ている部分もあるようだ。
「それは急にできるものではないものもあるので、まだまだ成長中の部分もある。でも、現時点でできていることを、試合でも発揮できればいい」
異国の地で自身を成長させる男は、約半年ぶりに日本代表に復帰して、サバイバルレースに参戦する。「この場所に来れて『これから』だと思っているし、マリ戦とウクライナ戦が非常に重要になると認識している」。今回の2連戦の結果が大事だと理解しているが、「監督はチームのことを考えているし、自分のやりたいサッカーや理想とするチームにするために、どの選手を入れようかという部分だと思う。だから、監督の求められていることをしっかりと表現したい」と、ただやみくもに個人のアピールに走るわけではない。
「監督の言っていることを、どれだけ実行できるかがカギになる。メンバーに残るには、そういう部分を重点的にやる必要があると思う」
しかし、それはバヒド・ハリルホジッチ監督の指示を「鵜呑みにするという意味ではない」と話し、「自分の特長をプラスアルファで出しながら結果として残したい」と自身の特長を出すことも大事だと考えている。「強度の高い守備」「シンプルにゴールを奪う」というベースとなる部分の質や精度を高めつつ、試合状況に応じてボールを保持するなど「使い分けを個人的にしていきたい」とピッチに立った際のイメージを膨らませている。
「どのポジションでも競争があるので、その競争から抜け出せるように個人としてもしっかりやっていきたい」と限られた出場機会の中で、競争から抜け出す“一手”を打とうと万全の準備を進める。
(取材・文 折戸岳彦)
指揮官の指示を「鵜呑みするという意味でなく…」 柴崎岳が考える、競争から抜け出す“一手”