日刊鹿島アントラーズニュース

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2018年8月5日日曜日

◆鹿島TD就任のジーコから熱い メッセージ。「第ニの故郷へ帰る理由」(Sportiva)



ジーコ Zico

 今、私は非常にあわただしい日を過ごしている。しかし、それはうれしい忙しさだ。なぜなら私は再び日本に行くからだ。この8月から、私は愛する鹿島アントラーズのテクニカルディレクターに就任する。

 鹿島に帰ることを決断した理由は、ごくシンプルなものだ。今が、第二の故郷へ帰るその”時”だと感じたからだ。

 W杯が終わり、多くの国やクラブチームから、さまざまなオファーが寄せられたが、そのどれにも私はあまり興味がわかなかった。スポーツチャンネルで解説を務め、自分の番組を発信し、さまざまな講演会やイベント出演のリクエストも多い。ブラジルでの落ち着いた生活に、私は十分満足をしていた。

 しかし、そこに鹿島からのサプライズともいえるオファーが届いた。この知らせを聞いたとき、正直、私の心臓は高鳴った。それまで何者も動かせなかった私の気持ちが、大きく動いた瞬間だった。

 私がかつていた時代と比べて、鹿島では多くのことが変わったという。この先、どのような方針で進んでいくかは非常に重要だ。そこで、彼らは私に連絡を取ってきた。ぜひ私に力を貸してほしいと言ってきたのだ。そのためにはできるだけチームの近くにいて、ともに進んでいく道を探ってほしいとも頼まれた。

 私とアントラーズのスタッフは、これ以上ないほどのミーティングを重ね、私自身も日本へ行き、実際に自分の目でチームの状況も見た。また、鹿島が私の人生のなかでどんな存在であるかを考え、近しい友人やスタッフなどと相談したすえ、日本に行くことを決断した。鹿島にとって重要な時期、クラブの未来を決める大事な役割……それが私を納得させたのだ。

 ジーコと鹿島が再びともに歩むことを、私は誇りに思う。この大役に私を抜擢してくれたチームには心より感謝している。よりプロフェッショナルで、より現代的な鹿島の未来を作っていけたら、と思う。何より日本のすばらしいサッカーファンのために。

 今後の予定としては、8月いっぱいは日本に留まり、チームの様子をじっくり見たいと思う。チームの近くにいて課題点を見つけ、テクニカル面を最優先で研究したいと思っている。選手ひとりひとりをよく知り、どうしたら彼らの能力を最大限に引き出せるか、利用できるかも考えたい。そのためには多少の時間が必要だろう。

 今のアントラーズで私が一番気にかかっているのは、チームのブラジル人選手たちだ。とにかくケガが多く、そのため彼らが持てる力を存分にチームのために使えないでいる。この点は絶対に改善すべきだ。鹿島の外国人選手は最大限のフィジカルとテクニックでチームに貢献しなくてはならない。

 ペドロ・ジュニオールはレンタル移籍(中国2部の武漢卓爾)したので、私はある優秀な選手を獲得するようチームに進言した。サントスからのレンタル移籍で、アメリカFCでプレーしていたセルジーニョだ。彼はすでに鹿島入りが決定している。しかし、レオ・シルバもレアンドロも膝を負傷していて、いつピッチに復帰できるか不明だ。

 私には、ブラジルだけでなく多くの優秀な外国人選手とコネクションがある。これは今後アントラーズにとって、もうひとつの大きなアドバンテージとなるはずである。監督の仕事ぶりも分析しなければいけないが、大岩剛監督は優秀な監督であると私は信じている。

 私が何よりもやりたいことは、選手やコーチ、すべてのスタッフに至るまで、鹿島のユニホームを着るとはどういうことかを理解させることだ。アントラーズは常に勝利し、戦い続けるチームだ。このユニホームに袖を通す者はその伝統を守り、最後まで勝利を目指す義務がある。チームの誇りを守る義務がある。

 その他にも私がやらねばならない仕事は多くあるだろうが、最初の1カ月はこのことを徹底したいと思う。

 2018年の終わりまでには、少なくとも連続して30日滞在することが3回は必要だろう。ただ、まだブラジルに残してきている仕事も多くあるので、それもこなさなくてはならない。その後、すべてうまくいき、チーム側も望めば、2019年はまるまる1シーズン、日本に滞在したいと思っている。

 今、アントラーズのスタッフにはブラジル人はたったひとり、フィジオセラピストのロドリゴしかいない。できることなら日本人スタッフとともにブラジル人スタッフも起用し、チームを成長させていきたい。

 ブラジルにいる間も、私はいつも日本を恋しく思っていた。日本食が食べたくなったときには、リオのお気に入りの日本食レストランに行って、その味を忘れないようにしていた。しかし、なにより私が郷愁を感じていたのは、日本の人々だ。私には多くの日本の友人がいる。それも真の友人と呼べる人々だ。鹿島で共にプレーした選手たち、クラブや代表でともに仕事をした人たち。そのうちの何人かは監督になっており、彼らと対戦するのも非常に楽しみだ。

 友人、礼儀正しく温かな人々、熱いが統制の取れたサポーター……何もかもが懐かしい。安全で他人をリスペクトする日本は本当に暮らしやすい国で、行くたびに私は喜びを感じる。だが、今回はその喜びがさらに大きい。私はただの旅行者ではなく、日本で暮らし、日本のために仕事をし、よりこの国に深く関わるために日本に行くからだ。

 日本は私の人生で大きな部分を占めている。私からもう日本を取り去ることはできない。日本の人々はいつも私を愛してくれ、私に敬意を払ってくれる。それに応えるため、私は常にベストを尽くしてきたし、今後も尽くすことを約束する。

 日本サッカーは多くの問題を乗り越え、ロシアW杯ではすばらしいパフォーマンスを見せてくれた。その最高の経験を活かし、今は大きな前進を遂げることのできるときだと私は思う。

 現在、日本のトップレベルの選手たちはヨーロッパのクラブでプレーしているが、Jリーグにもいい選手は数多く存在するはずだ。強く、優秀で、若くてやる気に満ちた選手たち。日本の次世代を担う選手たち。彼らを知ることができるのは非常にうれしいことだ。アンドレス・イニエスタやフェルナンド・トーレスなどの世界のトップクラスのプレーに触れることで、彼らはより成長していくことだろう。

 すばらしかったW杯と、戻ってきた世界のビッグネーム。日本サッカーは新たな活性の時代に入ったように思う。だからこそ、私も鹿島に戻ってきた。サッカーが盛り上がれば、Jリーグにもスポンサーが戻ってくる。そうすれば日本サッカーはさらに強く、面白いものとなっていくだろう。

 人生においても、サッカーと同じように”時”というものがある。日本はここ10年、いろいろな災害に苦しめられてきた。スポーツもそれと無関係ではいられなかっただろう。しかし、日本人は本当に強い。地震や津波から立ち直ったように、スポーツも立ち直りつつある。なかでもサッカーは、その復興のシンボルにふさわしいものだと思う。

 今がその”時”だ。日本の人々はサッカーを愛している。代表チームは強く、Jリーグの組織も最高だ。日本サッカーにとって、今はとてもポジティブなときであり、未来はとても明るい。そして、そんな新たな日本サッカーの発展に、また私も携われることを誇りに思う。

 日本で仕事をするのは、新たな始まりではない。何年も前にやり残していた仕事をまた続ける、そんな気持ちでいる。サポーターのみなさんもそんな私に力を貸してほしい。なにより愛する鹿島をより大きくするために。

 8月末にはACLの準々決勝、アレシャンドレ・パトを擁する天津権健戦がある。何がなんでも勝ち抜き、鹿島に唯一足りないタイトルを手にしたいと思う。私が何らかの幸運をチームに与えられることを心から願っている。




鹿島TD就任のジーコから熱いメッセージ。「第ニの故郷へ帰る理由」

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