チョン スンヒョン(写真)が鹿島に加わったのはわずか4ヶ月前の7月24日のことである。わずかな時間であると感じさせないほど、韓国人CBはあっという間に鹿島に馴染んでしまった。
188cmの威圧感ある体躯とは正反対の人懐っこい笑顔とふんわりした雰囲気で、たちまちチームの一員に。もちろんクォン スンテや内田篤人、小笠原満男などの配慮によって、鹿島に受け入れる体制が整っていたこともあるだろうが、「日本人みたいだから話しやすい」(安西幸輝)という持ち前の性格がなければ、ここまで早く鹿島に溶け込むことは難しかったはずだ。
パフォーマンスという点でも確かな結果を残している。シーズン途中の移籍はただでさえ難しいと思われるが、スンヒョンに期待されたのは植田直通の後を引き継ぐこと。どんな選手でも簡単ではなかったはずだが、プレイヤーとしても遜色ないパフォーマンスを見せる。初先発した20節の清水エスパルス戦では卓越したヘディング技術で西大伍の決勝点をアシスト。ただ弾くだけでなく味方につなげてしまう競り合いの強さに、同じくヘディングのうまい鈴木優磨をして「本当にうまい人じゃないとできない」と言わしめた。
AFCチャンピオンズリーグでは母国のクラブである水原三星に対して気迫のこもったプレーを連発。決勝でもペルセポリスに1点も与えない力強い守備を見せ、クラブ初のアジア制覇に大いに貢献した。
そのスンヒョンが鹿島に来る前に在籍していたサガン鳥栖との対戦を迎える。鹿島としては来季のACL出場権を賭けた大切な試合であり、鳥栖にとってもJ1残留がかかった負けられない試合だが、目の前の試合に勝つことに集中する。
「前のチームとの試合だけど、勝利のためにがんばります。それがプロですから」
古巣との対戦にやりづらさはないという。
「優しい気持ち?それは絶対にないです。それはプロじゃない」
ピッチに立てば、一人のプロサッカー選手として鹿島の勝利に全力を注ぐ。
文:田中滋(鹿島担当)
明治安田生命J1リーグ 第34節
12月1日(土)14:00KO カシマ
鹿島アントラーズ vs サガン鳥栖
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